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高3自閉症息子が「勉強ハイ」で12時間没頭!?「受験のための勉強はしたくない」と言っていたけれど…

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高3自閉症息子が「勉強ハイ」で12時間没頭!?「受験のための勉強はしたくない」と言っていたけれど…

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

本物のハカセになりたい!息子の勉強法

うちの息子、タケル(現在24歳)にはASD(自閉スペクトラム症)があり、その特性ゆえなのか、小さい頃から「覚えること」が大好きです。幼稚園に通っている頃から、鳥や虫の名前やその生態などをテレビなどで覚えては長尺で披露し、大人たちを驚かせていました。

生き物の知識は好きなことだったので覚えたのだと思いますが、やがて漢字を大量に覚えたり、芸人さんのネタや名前の由来を100個も暗記したりもするようになりました。特にその芸人さんのファンというわけではなく、ただ「覚える」という行為そのものが楽しいという感じで、何かテーマを決めてそれに没頭するという「遊び」をしていたみたいです。

そんなタケルも高校生になると、本当に生き物ハカセを目指して大学受験をすることになりました。好きな科目は何もしなくてもできるけど、そうでもない科目はほったらかしだったタケル。「受験のための勉強はしたくない」という哲学を持っていましたが、そうも言っていられなくなり3年生から重い腰を上げて受験対策を始めました。

息子の勉強法は、教科書や用語集を読んでどんどん覚え込むというもの。受験勉強でも以前と全く同じようなノリです。息子にとって覚えることは遊びの延長のようなものらしく、一日何時間もニヤニヤしながら教科書や教育系動画を見ていました。

高3になると様子がおかしくなってきた……

しかし、3年生の夏頃から、息子の様子が少しおかしくなってきました。

学校帰りに山道を通るのですが、彼は「そのルートなら危なくないから」と言って歩きながら単語帳を読んでいました。でもその単語帳には、2,700語も載っていたりするのです。

普通ならそういう本は「10分割して読もう」「一日3ページだけ読もう」などと思うところですが、タケルはすべてを読み終えたくて、ぐるぐると山道を歩き続け、ついに日が落ちて「暗くて読めなくなったから」と帰って来るのでした。

勉強ハイ?突然走り出す息子

また、家にいるときも「走ってくる」と言って突然外出することがありました。私はてっきり気分転換に散歩がてら自販機で飲み物でも買って飲んだり、友だちと電話でもしたりしているのだろうと思って放っておいたのですが、あとで話を聞くと、本当に1〜2時間も走り続けていたそうです。

私が「どうしてそんなことをしているの?」と聞いても、彼自身もよく分からない様子で、「なんだか楽しくて」とツヤツヤした笑顔で答えるのでした。

そんな日々が続き、3年の秋になった頃、文法やリーディングなどの英検のためのテスト勉強が始まりました。英単語だけは喜々として覚えていたタケルでしたが、英検対策は彼にとってあまり楽しくない勉強だったようです。そのせいか、夏のような勉強ハイの状態は次第に治まりました

今では、息子も「あの時はちょっとおかしかったね」と振り返っています。ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、興味があることにはとことん没頭する一方で、そうでないことには全く関心を持たないことがよくあります。息子の場合は、受験期の周囲が勉強していることを奨励する空気の中で「覚える」ということに夢中になりすぎたのかもしれません。

執筆/寺島ヒロ

(監修:森先生より)
寺島ヒロさん、お子さんの勉強法についての体験談をありがとうございます。タケル君は、「興味のあることはとことん極める」タイプなのですね。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉に表れるように、人は自分の興味があるものについては勉強も苦にならないものですが、発達障害の傾向のある方は本当に疲れを知らないかのように没頭してしまうことがあります。なんにしても受験勉強などで必要な勉強と興味の方向がマッチすると良い結果に結び付きやすいのです。お子さんの興味がどんなところにあるのかをよく見てあげて、好きなことを応援してあげるようにしましょう。そうすると、お子さんの学習への意欲が高まって、そのうちに苦手なものにも手を伸ばせるようになるのです。ただし、没頭しすぎて自分でも気づかぬうちにエネルギー切れを起こしてしまうと大変なので、あまりに集中して休憩を忘れていたら、「もう夜だし休んだら?」と声をかけてみるといいかもしれません。
これからもタケル君が自分の好きなことを追求していけるよう、応援しております。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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