精神障害者保健福祉手帳でも鉄道運賃が割引に!保護者も対象?JR、私鉄、地下鉄…適用条件一覧表も【2025年最新】
監修:渡部伸
行政書士/親なきあと相談室主宰/社会保険労務士
2025年4月から鉄道割引制度はどのように変更された?変更点や条件を解説
以前は鉄道運賃の割引は主に身体障害と知的障害(知的発達症)のある方が対象でしたが、2025年4月より精神障害のある方にも拡充されました。割引を受けるには精神障害者保健福祉手帳を取得する必要があるため、順番に紹介していきます。
精神障害者保健福祉手帳とは、発達障害を含む精神障害のある方が対象の障害者手帳のことで、障害の程度により1級から3級までの区分に分かれています。
障害者手帳には精神障害者保健福祉手帳以外にも、身体障害のある方が対象の身体障害者手帳と知的障害(知的発達症)のある方が対象の療育手帳があります。療育手帳は自治体によって名称が異なる場合があり、愛の手帳や愛護手帳という名称で呼ばれることもあります。
発達障害のある方は精神障害者保健福祉手帳が対象となるほか、知的障害(知的発達症)を伴う場合には療育手帳も対象となります。
障害者手帳は一定の障害があることを証明する公的な手帳で、取得することで税金の控除や施設利用料の割引などを受けることができます。手帳の種類や障害の程度の違いにより受けることができる割引などは異なることがあります。
2025年4月からJR各社をはじめとした各鉄道会社で、精神障害者保健福祉手帳を持つ方への鉄道運賃の割引制度が拡充されました。
それまでも鉄道会社独自に割引を行っている場合がありましたが、今回はJR各社や主な私鉄などでほぼ同じ内容で実施されることとなりました。
また、この割引は新幹線を利用する際にも適用されます。新幹線の利用には普通乗車券と特急券が必要となり、そのうち普通乗車券が割引になるためです。ただ、障害の程度や片道の距離などにより違いがありますので、詳しいことは次で説明します。
割引が実施されているのは以下の各鉄道会社です。
JR各社
・JR北海道
・JR東日本
・JR東海
・JR西日本
・JR四国
・JR九州
主な私鉄(2025年以前から実施している場合あり)
・東武鉄道
・西武鉄道
・京王電鉄
・小田急電鉄
・東急電鉄
・相模鉄道
・京浜急行電鉄
・京成電鉄
・名古屋鉄道
・近畿日本鉄道
・阪急電鉄
・阪神電気鉄道
・南海電気鉄道
・京阪電気鉄道
・西日本鉄道
主な地下鉄(2025年以前から実施している場合あり)
・東京メトロ
・都営地下鉄
・横浜市営地下鉄
・名古屋市営地下鉄
・大阪メトロ
・福岡市地下鉄
・札幌市営地下鉄
・仙台市地下鉄
・京都市営地下鉄
精神障害者保健福祉手帳での鉄道運賃の割引は条件を満たせば、保護者にも適用されます。ここでは、割引対象者の基準について具体的に紹介していきます。
割引は一律ではなく、障害の程度や本人の年齢などの基準によって変わってきます。障害の程度により「第1種」と「第2種」という区分があり、第1種の場合は本人の年齢関係なく、第2種の場合は本人が12歳未満の場合に介護者にも割引が適用されます。
割引適用の条件は以下となります。
第1種
・単独乗車:片道100キロを超える場合に5割の割引
・介護者同伴:本人と介護者1名に対し5割の割引(小児定期乗車券を除く普通乗車券、回数乗車券、普通急行券、定期乗車券)
第2種
・単独乗車:片道100キロを超える場合に5割の割引
・介護者同伴:12歳未満の本人と介護者1名に対し5割の割引(小児定期乗車券を除く定期乗車券)
第1種と第2種の基準は以下のようになっています。
第1種:精神障害者保健福祉手帳1級
第2種:精神障害者保健福祉手帳2級または3級
割引を受けるには、第1種第2種の区分が精神障害者保健福祉手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄」に記載されている必要があります。2025年4月以降に発行された手帳にはあらかじめ記載がありますが、それ以前の手帳で記載がない場合は、自治体の障害福祉窓口でシールの貼り付けなどの対応をしてもらう必要があります。
なお、鉄道会社によっては顔写真がない手帳では割引を受けることができない場合があります。その場合は再発行手続きが必要となりますので、障害福祉窓口にご相談ください。
割引が適用されるJR・私鉄・地下鉄など鉄道会社一覧
Suica、PASMO、ICOCAなどのICカードがさらに便利に!
障害のある方を対象としたICカード乗車券である「障がい者用Suica」「障がい者用PASMO」も2025年4月から精神障害者保健福祉手帳が対象に加わりました。対象となるのは区分が第1種の方とその介護者です。第2種の方は対象外で、小児と大人の区別もありません。
本人用と介護者用がセットになっており、「同時かつ同一行程で乗車される場合」に限り使用可能です。ただ、片道100キロを超える場合は、本人用のみで使用できる場合があります。購入の際は障害者手帳を呈示し、本人用と介護者用を同時に購入する必要があります。なお、ICカードには1年間という有効期限があり、更新するには再度障害者手帳の呈示が必要です。
JR西日本で使われている「ICOKA」では、現在のところ精神障害者保健福祉手帳を持っている方は対象外となっています。ただ、身体障害者手帳または療育手帳を持っている方を対象とした「ICOCAのスルッとKANSAI 特別割引用ICカード」があります。こちらも第1種に区分される方が対象で、基本的に本人と介護者が一緒に利用する必要があります。
ICカードの対応は各鉄道会社で違いがあります。今後対象が拡大される可能性もありますので、公式サイトなどで情報を確認しておくといいでしょう。
その他精神障害者保健福祉手帳で受けられる割引一覧
鉄道運賃以外にも精神障害者保健福祉手帳で受けられる割引はたくさんあります。主なものを紹介します。
鉄道以外の交通機関の割引は以下となります。
飛行機
タクシー
路線バス
高速バス
そのほかの割引
・駐車場の利用料
・文化施設(水族館、動物園、美術館、博物館など)の利用料
・レジャー施設、スポーツ施設、公園の利用料
・テーマパーク等の入園料
・携帯電話、通信サービスの料金
・所得税や相続税など税金の控除
・金融機関での貯蓄の利子への非課税(マル優)
・NHK放送受信料や電話番号案内(104番)の減免(※電話番号案内は2026年3月31日をもってサービス終了となります)
ここで紹介したのは精神障害者保健福祉手帳に関する割引きなどです。障害者手帳の種類や等級により内容が異なる場合があります。
また、自治体独自に割引などのサービスを行っている場合がありますので、お住いの自治体の公式サイトや障害福祉窓口でご確認ください。
精神障害者保健福祉手帳で受けることができる制度を知って活用していこう
2025年4月より精神障害者保健福祉手帳での鉄道運賃の割引が拡充されました。長い間身体障害者手帳と療育手帳のみが対象だったので、大きな転換点といえるでしょう。また、鉄道運賃以外にも割引や減免などの制度があります。医療や療育などにかかる費用の助けとなるため、どのような制度があるか知って活用していくといいでしょう。
また、今後も精神障害者保健福祉手帳を持っている方への割引などは拡大していくことが考えられます。お住いの自治体や利用するサービスの公式サイトなどで情報を集めておくといいでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。