養殖5季目・釜石はまゆりサクラマス 水揚げ開始 試食会も「サイズ上々、脂のり良し」
釜石市で養殖サクラマスの水揚げが始まった。今季初の水揚げとなった6月30日は、釜石湾に設置したいけすから体長約50~60センチ、重さ2~2.5キロほどに育った約23トンが同市魚河岸の市魚市場に入荷した。2020年に試験養殖が始まり、22年に地元の水産会社・泉澤水産(泉澤宏代表取締役)が事業化。5季目の今年は7月中旬ごろまでの予定で、昨季比40%増しの240トンが見込まれる。
秋サケの不漁が続く三陸沿岸では、その穴を埋めようとサーモン養殖が広がっている。ギンザケやトラウトサーモンが多いが、釜石では「ママス」の名で親しまれるサクラマスに着目。養殖事業を手がける同社は市や岩手大などの協力を得て「釜石はまゆりサクラマス」としてブランド化に取り組んでいる。
“初もの”を積み込んだ漁船は午前5時ごろ魚市場に入港。同社の社員16人が水揚げや選別作業に当たった。作業の効率化に向け、今季から魚を重量ごとに自動選別する機械を導入。サイズをそろえ、ばらつきなく出荷できる体制につなげている。この日は、1キロ当たり950円ほどで取引。主に地元加工場を経て県内外のスーパーやすし店に流通する。
今季は、水温などを考慮しながら15回の水揚げを予定。同社によると、餌やりなどのノウハウが定着し、魚の大きさが安定。種苗に占める生産量の割合「歩留まり」もこれまでの5割から7割ほどになっているという。また、環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)を取得しており、水産物の付加価値を高める取り組みにも力を入れる。
30日は試食会も開かれ、関係者らが刺し身や塩焼きで味を確かめた。泉澤代表取締役は「脂のりが良く、期待通りの出来に仕上がった」とアピール。将来的に年間300トンを目指すとし、「地元に魚を安定供給するのが我々の仕事。地元での消費を多くし、加工品づくりにつながる形が望ましい。日本固有の種として全国に売り出すため、販路の幅も拡大したい」と意気込む。
ブランド化に向けたプロモーション活動も産学官一体で進める。地元の味としての定着やファンづくりを狙いに、市内飲食店でサクラマスを味わえるフェアを開催したり、学校給食でも提供したり。他の養殖サーモンとの差別化を図り、希少性を生かし認知度向上や商品開発などを続けていく。