加藤シゲアキ「自分自身の物語を紡いだ感じがしました」~パルコ・プロデュース2025『カタシロ~Relive vol.2~』が開幕
2025年8月2日(土)東京・PARCO劇場にて、パルコ・プロデュース2025『カタシロ~Relive vol.2~』が開幕した。
『カタシロ』は、演出家・脚本家・YouTuberでもあるディズム氏によるTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)の名作シナリオ。2020年の誕生以来、シナリオは約4万冊販売され、YouTubeでのプレイ動画は総再生数500万回を超える大人気TRPG。昨年2024年12月末、パルコのゲーム専門チームPARCO GAMES と舞台作品を制作するPARCO 劇場のチームがタッグを組み、この『カタシロ』を「リアルタイムに有観客で舞台上でプレイする」という新たなシリーズ「カタシロ~Relive~」が誕生した。
『カタシロ』は台本なしで物語が展開していくプレイヤー間の会話が見どころで、一度観ると他の人のプレイも観たくなる魅力がある。本公演会期中の2025年8月6日(水)には、シナリオ誕生5周年を迎える「カタシロ」は、オンライン上の配信からはじまり、舞台版の無観客生配信や映画も制作され、映画版『カタシロ Replica』の限定上映チケットは10分で完売。今年3月の池袋PARCOでのポップアップイベントには、10日間で約2300人が来場するなど大きな注目を集めている。
『カタシロ』の特徴は「一度内容を知ってしまうと、患者役としては出演できない」ということ。今回の患者役の出演者たちもシナリオの全貌を知らないまま舞台に臨む。なお、一度限りの物語が劇場という空間でリアルタイムに生み出されるため、『Relive』(リリーブ)シリーズは事後の映像配信は一切ない。
プレイヤーとなる患者役には、今回も各界から豪華なゲストが集結。もう一人の患者役には、昨年に引き続き『カタシロ』経験者の声優・ライバーたちを迎え、『カタシロ』の世界に深みを持たせる。出演者の組み合わせによって全く違う展開になるため、全部の公演が観たくなるのが『カタシロ~Relive~』だ。
そして、今回も全公演、本編の終了後にアフタートークを開催。東京の初日公演の患者役はアーティスト、俳優、作家とマルチに活躍する加藤シゲアキ。クリエイターとしての側面も輝いている加藤が、もう一人の患者役堰代ミコ、医者役で本作の作者・演出家でもあるディズムとともに『カタシロ』体験を終えた直後の心境や感想、シナリオについての思いを語った。
加藤シゲアキ コメント
(台本もなく作品の全容を知らないで臨むので)役として演じるものなのか、ほぼ本人として自然体でやるものなのか解らなかったのですが、ディズムさんからも「自然体でやるのがいいと思いますよ」と言われたので、肩の荷が下りて、もう身を委ねるだけだと思いました。
対話しながらも考えなければならないし、選択を迫られたときには、かなり逡巡しました。全貌が解らないまま話していたことを最後に突きつけられて、自己矛盾の中でどう決断していくのか、とてもいい経験をしました。それまでは、没入していてラフな感じで質問に対して回答していましたが、最後だけ自分の言葉で語らなくてはならなくて、逆にお芝居っぽいというか、フィクションの中でエモーショナルにぶつけられたので、その瞬間がとても楽しかったです。「カタシロ」はとても人間性が出ますね。いろんな気持ちにもなるし、本当に面白かったです。こういうときにこういう風に言うんだな俺って思ったし、自分の芝居と本当の自分、フィクションとドキュメンタリーがとても重なるので、自分自身の物語を紡いだ感じがしました。ネット上で始まったと聞いていますが、舞台ならではの面白さがあるし、強烈ですね。最後の決断をするときに作家人格も少し出てきて、「どっちが面白いかな」、「主人公は楽じゃない方を引き受けるかな」と考えていました。小説を当事者のつもりで書いていましたが、やはり他者で、初めて自分で主人公を体験した気もしました。
ディズム コメント
加藤さんが、とても楽しんでいらっしゃったように思いました。もっと話したくて、最後に普段はしないような質問をしてしまいましたが、加藤さんの答えに、思っていた以上の現実を突きつけられて、絶句して、思わず正気に戻ってしまいました。開始直後から、加藤さんの答えには、社会全体とか、人間ってそうじゃないよねというような俯瞰した大きな視点を感じていました。ぜひ、次回は加藤さんに医者役をやってほしいですし、できると思いました。
僕もお芝居は大好きですし、台本があり稽古して洗練されたものというのは、当然それでしか見られない良さがあると思っているのですが、本音でしゃべるという即興性があるからこそ、「カタシロ」ではその人なりの真実がみえてくると思っています。それでしか得られない誠の言葉というものが、皆さんに届いているといいなと思います。医者が変われば、あるいはもう一人の患者役が変われば、そして患者役が変われば全く別の物語になり得るので、ぜひ見比べてほしいと思います。