合資会社ガラクタス 黒明立暉さん ~ ゲストハウスから児島のジーンズストリートの新たな楽しみかたを伝えていく(若手が紡ぐ倉敷仕事物語 Vol.3)
国産ジーンズの聖地ともいわれる児島ならではの観光スポットといえば、ジーンズストリート。地元のジーンズメーカーを始め、セレクトショップやコーヒースタンドなど、個性豊かなお店が並ぶ観光名所です。
2023年、ジーンズストリートに、デニムがコンセプトのツーリストラウンジ「デニムロッジ」がオープンしました。さらに2025年には、ジーンズストリート初となる宿泊施設「デニムロッジ・ネスト」も同施設でスタート。児島出身のスタッフが、地元ならではの視点でジーンズストリートの楽しみかたを提案してくれる、新たな交流の拠点地となりました。
この施設を運営しているのは、合資会社ガラクタス(以下、「ガラクタス」と記載)です。
「『楽しい』のご提案カンパニー」を合言葉に、さまざまな分野のプロデュースやブランディングをおこなっている児島の企業です。ガラクタスでは、まちづくりへの想いを持つ若手社員が活躍しています。
ガラクタスの若手社員、黒明立暉(くろみょう たつき)さんを紹介します。
合資会社ガラクタスについて
合資会社ガラクタスは、IT・デザインの企画制作会社として2001年に設立されました。
社名に含まれる「ガラクタ」は、いわゆる「意味のないもの」を指します。そこに魂を吹き込んで、誰かにこよなく愛される新しい存在の「ガラクタたち」を創り出す。そのような願いを込めて「ガラクタス」という社名が付けられました。
ガラクタスでは、ITとデザインを掛け合わせた提案力を生かして、各業界のシステム効率化や新規事業の支援など、お客さんの目的に合わせたプロデュースをおこなっています。
現在はおもに以下の事業を展開しています。
・IT・デザイン
事業やサービスのIT支援/企画・デザイン制作からシステム構築までのトータルディレクション
・アパレル
アパレル製品の企画デザイン・製造販売
・フードラボラトリー
食品開発・OEMサービス/商品化支援/食品製造過程における業務のデジタル化
・リノベーション・不動産
不動産紹介/リノベーション企画/法人・個人向けの移住アドバイス
「ワークフィールドはどこへも属さない」という信念のもと、携わる分野も幅広く、さまざまな業界から相談や依頼が届くそうです。
また、ガラクタスはバラエティに富んだ自社コンテンツも魅力です。以下の自社コンテンツから得たノウハウを、顧客のプロジェクトにも生かしています。
・ミンショク・minshoku
食を通して日常を豊かにするライフスタイルマガジン&プラットフォーム
・8 by Setoiro
地域の食材を使ったメニューが並ぶ、瀬戸内がコンセプトのスープバル
・Tシャツ・シーオージェーピー
熟練のプリントマスターによるハイクオリティなオリジナルTシャツ作成サービス
・デニムロッジ&デニムロッジ・ネスト
デニムがコンセプトのツーリストラウンジ&ジーンズストリート唯一の宿泊施設
このなかでも、若手社員の黒明さんが中心となって運営している「デニムロッジ」を紹介します。
ジーンズストリートのツーリストラウンジ「デニムロッジ」
「デニムロッジ」は、2023年にオープンしたジーンズストリートの観光客向けのツーリストラウンジ(時間制休憩所)です。
デニムをコンセプトにしたツーリストラウンジは世界初だそうで、施設内はデニム生地を使った小物で彩られていました。地元のジーンズメーカーのパンフレットなども置かれており、アパレルが好きな人にとってはたまらない空間が広がっています。
デニムロッジを利用するお客さんのなかには、休憩をしながら「どのジーンズを買おうか」と作戦会議を始める人もいるそうです。
2025年3月には、同施設にジーンズストリート初の宿泊施設となる「デニムロッジ・ネスト」もオープンしました。ジーンズストリートに泊まれる唯一のゲストハウスとして、海外からもお客さんが訪れています。
ただ買い物を楽しむだけでなく、新たなジーンズストリートの楽しみかたにも出会える、唯一無二のコミュニティスペースです。
「デニムロッジ」の運営からクリエイティブまで担う黒明立暉さん
デニムロッジの運営管理をおこなうのは、黒明立暉(くろみょう たつき)さん。2000年生まれ、埼玉出身の倉敷・児島育ちです。ガラクタスのなかでももっとも若い社員です。
黒明さんの仕事内容について
黒明さんのおもな仕事は二つあります。
一つ目は、デニムロッジの運営管理です。
利用者の対応や、備品管理・シフト作成などの事務作業をはじめ、施設のブランディングや集客マーケティングなど、デニムロッジをPRするための企画も黒明さんが担当しています。
黒明さんは、デニムロッジに立ち上げ段階から関わっており、「デニムロッジ」の名付け親でもありました。メーカーが数多く並ぶジーンズストリートで、アパレルとは異なる切り口で、この地域の魅力を発信しようとしています。
二つ目は、Webサイトの制作。
入社前からCG制作などのものづくりに興味があり、独学で学んでいたという黒明さん。本格的にデザインを始めたのは、ガラクタスに入社してからでした。
入社3年目を迎えた2025年現在、黒明さんは8つのWebサイトを制作しています。「デニムロッジ・ネスト」の予約サイトも、黒明さんがデザインを手がけました。
最初は手探りなことも多かったそうですが、「デザインは知識と技術でカバーできるし、理屈で説明できることが多いので面白いです」と話してくれました。
ガラクタスとの出会い
前職は、都内で工業系の仕事をしていたという黒明さん。
2023年、長年暮らしていた児島にUターンで戻ることになり、児島で転職先を探している途中、知人からガラクタスを紹介されました。
当時、趣味の範囲でCGやデザインなどのクリエイティブに触れていたこと。
そして、職種や業界に縛られず、幅広い分野にチャレンジできそうな環境に惹かれて、ガラクタスへの入社を決めました。
最初の数か月間は、試用期間としてアルバイトで働き、後に正社員として入社しました。社員になった日の最初の仕事は、なんと補助金申請の審査会で、デニムロッジのプレゼンテーションをおこなったそうです。
「初日から大きな仕事で緊張しませんでしたか?」と尋ねると、「試用期間中からデニムロッジのプロジェクトに関わっていたので、焦ることなく無事に終えることができました」と笑顔で話してくれました。
黒明さんから見たガラクタスの魅力とは?
黒明さんが考えるガラクタスの魅力は、上下関係を気にせずに、若手でも挑戦しやすい環境であること。
少数精鋭の企業だからこそ、社員同士が話しやすい雰囲気があり、若手でも自主性を尊重してもらえる機会が多いそうです。
たとえば、自社で展開しているスープバル「8 by setoiro(エイト バイ セトイロ)」では、自家製ベーグルを提供しています。そのベーグルも、20代の若手社員がみずから考案したものでした。
黒明さん曰く、挑戦を後押しされるだけではなく、きちんとフォローもしてもらえます。ガラクタスには得意分野や専門分野を持つ社員が多く在籍しているため、そうした人たちからサポートを受けられることも心強いそうです。
また、ガラクタスの特長でもあるワークフィールドにとらわれない事業展開は、「提案力のバリエーションが身に付く」と話します。
業界の垣根を越えて、さまざまな視点から提案できることは、サービスを受ける側はもちろん、社員にとっても魅力のひとつなのです。
ガラクタスに入社して、2025年で入社3年目を迎えた黒明さん。児島を代表する観光地で働く楽しさや、児島・味野エリアの魅力について話を聞きました。
黒明立暉さんにインタビュー
合資会社ガラクタスで働く若手社員、黒明立暉(くろみょう たつき)さんに話を聞きました。
入社3年目の仕事のやりがい
──今の仕事でやりがいを感じられるのはどのようなところですか?
黒明(敬称略)──
まずデニムロッジでのやりがいは、観光客のかたと交流することで、直接的に地域貢献している実感が得られるところです。
観光案内所を兼ねた休憩所やゲストハウスは、これまでのジーンズストリートにはなかった存在です。
地元のスタッフだからこそおすすめできる景観スポットや、地元のおいしい飲食店などをお伝えできるので、それが観光の満足度につながっていたら良いなと思います。
ただ買い物をするだけでなく、ぜひ食や体験などでもジーンズストリートを楽しんでもらいたいです。
──デザインの業務も多いと思いますが、そちらのやりがいはいかがですか?
黒明──
やはり一番のやりがいは、感謝の言葉をいただく瞬間ですね。
クライアントさんの業界や分野がさまざまなので、毎回新しいことを学べるのが楽しいです。視野も広げられますし、新たに挑戦できる機会も多いですし、問題解決力のノウハウが身に付いてきている気がします。
クライアントさんの「こうしてほしい」というご依頼に対して、僕がプラスαで提案した内容を喜んでいただけたときはうれしいです。
──入社されて3年目。仕事で苦労したことはありますか。
黒明──
実はあんまりまだ苦労した記憶がなくて、すべて楽しんで取り組んでいます。何事も成長のチャンスだと捉えてしまうんです。
もし何か困ったことがあればすぐに頼りやすい環境ですし、そういう意味でも安心して働けています。
ただ、入社当日にプレゼンするのは、人によっては苦労したことなのかもしれません……自分がポジティブで良かったです!
──社内・社員同士の雰囲気について教えてください。
黒明──
親しみやすいといいますか、自分が思ったことを上下関係なくちゃんと伝えやすい雰囲気があると思います。
それもあってか、僕のような若手でも「これをやってみたいです」と上の人に言いやすいんです。しかも、若手が始めた取り組みに対してちゃんとフォローもしてもらえますし、際限なく挑戦できる環境で働けているなと思います。
地元への愛を感じられる児島の人々
──黒明さんが想う児島・味野の魅力について教えてください
黒明──
味野のあたりは良い意味で変化のある街だと思います。
ジーンズストリートがある観光地だからこそかもしれませんが、新しい施設やお店ができたり、マンションができて人が増えたりと、時代の流れで変化していくようすが見ていて面白いですし、飽きない街です。
あとは、愛郷心(あいきょうしん)のある人が多いのも魅力ですね。
現在のジーンズストリートがある場所には昔、味野商店街がありました。その商店街が栄えていた時代を知っている人たちは、「当時の活気を復活させたいよね」とよく話しています。ジーンズストリートに関わっているかたは特にその想いが強くて、地元愛を感じています。
──そのような地域でどのように頑張っていきたいですか?目標があれば教えてください。
黒明──
ゲストハウスの運営を通して、今よりもさらにジーンズストリートを盛り上げていきたいです。
ホテルがいくつもあるような全国的に有名な観光地で宿泊施設を運営するのと、ジーンズストリートでゲストハウスを運営するのとでは、まったく違う課題や難しさがあると思っています。
具体的にどうやって盛り上げるのか……というのは、正直まだ思いついていません。ただ、まちづくりに正解はないので、楽しんで取り組んでいきたいと思います。
楽しさとやりがいのある仕事の見つけかたとは
──同世代の若手に向けて、メッセージをお願いします。
黒明──
インターネットやSNSなどが身近にある世の中で、周りと自分を比較して落ち込んでしまう人も多いと思います。ですが、あまり周りにとらわれずに、自分の軸になるものを見つけてほしいです。
自分が好きなことと、社会が求めていること。そこが重なる部分を見つけられたら、仕事にも楽しさややりがいを見出せるのではないでしょうか。
また、僕は今児島のまちづくりに携わっているので、いつかまちづくりに興味を持つ人も増えたら良いなと思っています。
今すぐに関わらなくても、20代、30代でインプットしてきた経験を、40代、50代になってからまちづくりに生かす……そのような選択肢が、多くの人のなかに生まれたらうれしいです。
おわりに
ジーンズストリートには、誇りやプライドを持つ人たちが多く集まっている印象がありましたが、黒明さんが取材で言っていた「愛郷心」という言葉が非常にしっくりきました。
まちづくりには「地元を盛り上げたい」という気持ちが必要不可欠だと感じます。
ガラクタスの魅力でもある多種多様な提案力とノウハウを生かして、今後どのように地域を盛り上げていくのか、注目していきたいです。
ジーンズストリートを訪れた際は、ぜひデニムロッジにも足を運んでみてください。今まで出会えなかった地域の新たな魅力を教えてもらえるかもしれません。
黒明さん、そしてデニムロッジの今後の活躍を応援しています。