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願いを胸に行う「お百度参り」を体験!神楽坂・宗柏寺では花まつりも盛大に

さんたつ

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同じ寺社に100回参拝して心願成就を祈る「お百度参り」。今回は、開門中いつでもお百度参りが行える新宿区榎町の宗柏寺(そうはくじ)にて、住職の伊藤順正(いとうじゅんしょう)さんに教えていただきながら体験しました!

一樹山 宗柏寺(いちきさん そうはくじ)

最澄の手による釈迦如来像

神楽坂と早稲田の間に立つ日蓮宗のお寺、宗柏寺。大きな門の前には「傳教大師御真作 お釈迦さま霊場」の文字が見えます。

宗柏寺を開創した日意上人(にちいしょうにん)の書。

宗柏寺は、日意上人という江戸時代のお坊さんが両親の菩提を弔うために開いたお寺です。一樹山(いちきさん)宗柏寺の名は日意上人の父・尾形宗柏の名前と、母の法号「一樹院法興日順」にちなみます。

日意上人は、『紅白梅図屏風』などで知られる画家、尾形光琳のおじに当たる人物なのだとか。さらに、日意上人のお母さんは陶芸や書などで幅広く活躍した本阿弥光悦のお姉さんという、錚々(そうそう)たるお家柄です。

尾形家に代々伝わるのが、桓武天皇の命により伝教大師最澄(でんぎょうだいしさいちょう)が彫刻したという釈迦如来像。織田信長が比叡山を焼き討ちした際、一人の学僧の手により難を逃れ、尾形家に安置されていたのだそう。尾形家の人々が崇敬していたこの像は「矢来のお釈迦様」と呼ばれ、日蓮宗に限らず多くの庶民から篤い信仰を集めているといいます。

お釈迦さまの誕生日「花まつり」も盛大に

(写真提供=宗柏寺)。

「矢来のお釈迦様」は、毎月1・8・15・28日にご開帳されていますが、江戸時代には毎年3月21日から4月21日までが開帳日だったそう。現在の宗柏寺の境内は春になると桜色に染まりますが、当時の人々も春の喜びの中ご開帳を楽しんでいたのではないでしょうか。

伊藤さん : 宗柏寺は空襲で焼けているので、現在のお堂はそれ以降に建ったものなんです。釈迦堂が昭和25年に落慶して、その頃に戦争から無事に帰られた方が桜を植えてくださったと聞いています。今年(2025年)で戦後80年になるので、桜もずいぶん古木になってきましたね。

毎年、桜の花と入れ替わるようにして「花まつり」が開かれます。お釈迦さまの誕生日を祝い、4月8日に開かれる行事です。境内にはお釈迦さまの誕生時の姿をかたどった「誕生仏」に甘茶をかけて祝う花御堂(はなみどう)が置かれます。

(写真提供=宗柏寺)。
(写真提供=宗柏寺)。

お坊さんと山車に乗せられた白い象の列の後ろに、華やかな衣装に身を包んだお子さんたちが並び、早大通りを回って戻ってきます。境内では健やかな成長を願う法要が行われ、境内の大きな釜で煮出された甘茶が振る舞われます。「お子さんに限らず、毎年この甘茶を楽しみにされている方がいるんです」と伊藤さん。

プチ修行のような「お百度参り」

こうしたお祭りに比べると、「お百度参り」はとてもシンプル。その名の通り、1つのお寺や神社に100回お参りするというものです。100日間続けてお参りすることも、1日に100回お参りすることも「お百度参り」と呼ぶのだとか。

伊藤さん : お百度参りの他にも「千度参り」があったり、お百度参りを7日間とか21日間続けたりすることもあります。いろいろなやり方がありますが、基本は「たくさんお参りしましょう」ということなんですね。昔は、お百度を踏む人で境内に渋滞ができるぐらい、多くの方がお百度を踏んでいたと聞いております。今もお百度石が残っている神社仏閣は多いですが、なかなか実際に踏まれるところは少ないかもしれませんね。

今回お百度参りを体験してみたところ、想像以上にダイナミックなお参りの方法だと感じ、とても驚きました。友達を誘って、またお参りしたい! そんな気持ちです。以下、お百度参り体験を詳しくレポートします。

まずは山門の奥に立つ釈迦堂に上がり、お釈迦さまにお参りします。お寺に許可を得る必要はなく、開門中は自由にお百度参りをしてよいそうです。

厨子(ずし)の中には「矢来のお釈迦様」が。座布団の手前あたりまで進み、手を合わせます。

釈迦堂内で、線香やろうそくを購入することができます。

お百度石の奥の香炉に、線香をお供えします。釈迦堂内のろうそく立て、もしくは山門に入って左手の建物内で火を点けることができます。

続いて、手水舎(ちょうずや)で両手を清めます。

手水舎の右側の「お百度房(おひゃくどぶさ)」を手に取ります。

このお百度房をお供に、お百度参りのスタートです。果たして無事に100回お参りすることができるのでしょうか……?

お百度房を手に合掌し、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」とお題目を唱えながら釈迦堂に向かいます。

釈迦堂の階段の下まで来たら、合掌しながら頭を下げてお参りします。そして、お百度房の紐を1本手の外に引き出します。

今度は山門に向かってお題目を唱えながら歩きます。

お百度石の前に戻り、再び釈迦堂へ。これを100回繰り返します。

お百度房のおかげで、忘れずに回数を数えることができます。でもときには「あれ、いま紐を忘れたかも……?」となることも。そんなときは次のお参りで紐を引き出すことにしました。

10回ほどお参りすると、一歩進むごとに「なむ」「みょー」「ほー」「れん」「げー」「きょー」と唱えていることに気づきました。自分なりのお参りペースがつかめたようです。それに伴い、お題目を唱えることに対する照れのような気持ちが減っていきました。

20回、30回と回を重ねると、小さな自信のような気持ちが湧いてきました。他の参詣者の姿が見えてもあまり気にならず、山登りのような気持ちで楽しくお参りを続けることができました。

ところが、房が半分ほどに減ったあたりから、なぜか何回お参りしても房が減らないような感覚に襲われました。「まだこんなにある!」「あと何回お参りすればいいんだろう…」という邪念が……。

その気持ちを振り払うように、お参りを続けます。うっすらと体が汗ばんできました。お百度房が徐々に手を離れていき、ついに数本を残すのみに。大げさかもしれませんが「これからは自分1人で歩んでいくのか……!」という気持ちになりました。

そしてついに、最後の1回を迎えます。今まで以上に心をこめて合掌しました。

体はポカポカ、心はすっきり。まるで温泉に浸かったあとのような清々しい余韻に驚きました! お百度房が、苦労を共にした友のようにいとおしく感じられます。ゆっくりお参りしていたら、1時間ほどの時が流れていました。

無事満願を果たした感想を、伊藤さんにお伝えしました!

──「南無妙法蓮華経」と唱えたことがあまりなかったのですが、回を重ねるごとに親しみが湧いてきて、外国語のような存在が自分の言葉になったような感じがしました。昔からいろんな人が同じように悩んだり、苦しんだりしてきたんだなと感じて、それだけでちょっと救われたりするような気持ちにもなりました。

そうですよね。いろんな方がこうして何百年も前からお堂やお経を通してお願い事をしていたんだなと思いますね。私たちもそのバトンを受けて、落とさないようにと思っています。

──お百度参りをする方は、どんなことを願って訪れるのでしょうか。

その内容はお聞きしませんが、悩みがある人や、受験するお子さんのお母さんなど、心願成就を願って訪れる方が多いのではないかと思います。ほかにも、朝のラジオ体操のように日課としてお参りする人もおられるんですね。それはすごくいいことだと思うんです。お百度を踏むというのも、大変なことでね。まずお百度を踏めるというのは、お寺に来られて、健康だということです。自分に悩みがあったりするときに踏むのもお百度だけれども、楽しいときや感謝をするときにお百度を踏んでもいいと思うんですね。

──自分一人で臨むからこそ、いろいろな思いを抱いて訪れることができるのかもしれませんね。お百度を踏んでいる間、1000回近くお題目を唱えたと思うのですが、バラバラだった言葉と体がだんだんまとまっていく感じがしたのも面白かったです。

そうなんです。「身口意(しんくい)」といって、体と口と心でお題目を唱えるという言葉がありますけれど、やはり口に唱えると、だんだん良くなっていくというか、身についてくるということがあると思います。

御本尊が祀られている本堂。

──お祈りでもあり、一般の人もできる小さな修行のようなものでもあるのでしょうか。お百度参りの最中、手の中の房を数えながら「まだまだ終わりそうにないな……」と思ってしまった瞬間もありました。日蓮宗には100日間の「大荒行」がありますが、行の最中にも「あと何日あるんだろう」という考えが頭をよぎったりするものなのでしょうか?

あと何日あるかは考えないようにしていました。荒行の間は夜中の12時に寝て2時半に起きるので、1日が本当に長く感じます。特に最初の1週間ぐらいは、もうとてつもなく長く感じました。ですから、あまり日にちのことは考えないようにして、逆のところに気持ちを向けたりしていましたね。考えると先が長すぎて辛くなってくるんです。

宗柏寺の奥に立つ鬼子母神堂内。「自分はあくまでも、お寺にいらっしゃる方と鬼子母神さんをつなぐパイプだという気持ちでご祈祷をしています」と伊藤さん。

──荒行が終わりに近づくと、またお気持ちも違ってくるのでしょうか。

荒行の成満は2月10日ですから、節分が来ると「もう少しだな」と思います。一方で、「99日をもって半ばとせよ」という言葉もあります。11月1日から2月10日までの100日間のうち、99日を半分と考えなさいということです。あと1日だけれども、ここは半ばだという言葉なんですね。荒行堂での100日間の修行は長いですけれども、まだまだお坊さんとしての道は始まったばかりです。行が終わっても、まだその先があるということで、そういう言葉があるんですね。

──常に行の最中だという気持ちで、お坊さんとしての道のりを歩むということでしょうか。最後に、日々お参りされる方にとってどんなお寺を目指していらっしゃるかお聞かせください。

亡くなった方には冥福を祈り、いま生きている人には幸福を祈る。そのお役に立てればと思っています。

伊藤順正さんプロフィール

一樹山宗柏寺第二十六世住職。世田谷区の妙隆山玉川寺に生まれる。立正大学仏教学部宗学科卒業、日蓮宗大荒行堂初行成満、日蓮宗大荒行堂再行成満。東京西部日蓮宗青年会会長、全国日蓮宗青年会会長、日蓮宗制度研究委員を務める。

宗柏寺ホームページ https://souhakuji.com/

一樹山 宗柏寺(いちきさん そうはくじ)
住所:東京都新宿区榎町57/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩5分

今回で、当連載は最終回となります。3年近くにわたり、22カ寺のお坊さんがバトンをつなぐ形でお話をお聞きしてきました。あらためて感じたのは、現代に生きる人の力になるお寺がこんなにたくさんあるのだということ。これまでの記事が、みなさんの気になるお寺に足を運び、新たな扉を開くきっかけになれば幸いです!

取材・文・撮影=増山かおり

増山かおり
ライター
1984年青森県生まれ。かわいい・レトロ・人間の生きざまが守備範囲。道を極めている人を書くことで応援するのがモットー。著書『東京のちいさなアンティークさんぽレトロ雑貨と喫茶店』(エクスナレッジ)等。

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