東京都荒川区「西日暮里駅」の住みやすさは?谷根千エリアや上野にも近い街の魅力
JR西日暮里駅(にしにっぽりえき)は、荒川区南西部の西日暮里地域に位置し、北側は北区、西側は文京区、南側は台東区に接しています。同駅には、JR山手線、京浜東北線、東京メトロ千代田線、都営日暮里・舎人(とねり)ライナーが乗り入れており、駅自体はコンパクトながら乗り換えに便利で交通利便性に優れています。2020年3月に「高輪ゲートウェイ駅」が開業するまでは、JR山手線駅の中では最も開業時期が新しい駅でした(1971年開業)。この記事では、西日暮里駅周辺の住みやすさを紹介します。
西日暮里駅周辺はどんなところ?
西日暮里地域は、武蔵野台地の東端に位置しています。そのため、駅の西側は高台、東側は低地という高低差のある地形になっています。歴史的に見ると、上野駅西側の上野台地から北に続く台地は江戸時代には江戸で暮らす庶民の行楽地としても有名で、日が暮れるのも忘れるという理由で “ひぐらしの里”と呼ばれていた経緯があります。
現在でも、諏訪台や富士見坂からの視界は都内とは思えないほどの開けた景色を望むことができます。さらに、西日暮里駅の西側は「谷根千エリア」や「上野恩賜公園」にも近接しているため、荒川区でありがならも台東区や文京区の歴史・文化・教育・自然などに触れることができるエリアとなっています。
これらに加えて現在、西日暮里駅の北東部エリアでは大規模な市街地再開発事業が2031年3月の完成を目指して進められています。再開発ではマンションに加えて、地域のシンボルとなるような商業施設や広場などの整備、区の文化交流施設の整備が予定されています。
これまでは、多くの人にとって、どちらかというと居住のための駅というよりは乗り換えに便利な駅という認識がなされていたのでは?と思いますが、再開発によって、これまで以上に街の認知度や魅力度の向上が期待されています。
西日暮里駅周辺の概要
西日暮里駅のある荒川区の行政区域面積は、東京23区で22番目の大きさです。荒川区は西尾久、東尾久、町屋、荒川、南千住東、南千住西、西日暮里、東日暮里の地域に区分(※地域区分は「荒川区都市計画マスタープラン」を参照)されています。この中で、西日暮里駅は区の南西部に位置する「西日暮里地域」に位置しています。
次に人口を見てみます。
荒川区によると、2025年1月1日現在の人口は、約22万2,000人で、5年前の人口と比較すると荒川区全体、西日暮里地域ともに微増傾向にあります。なお、区の将来人口について荒川区が公表している人口ビジョンでは2060年頃に約23万人と推定していて、今後急激な人口増加は予測されていません。
荒川区人口:21万7,146人(2020年)→22万2,278人(2025年) 5,132人(2.4%増)
西日暮里地域人口:2万3,855人(2020年)→ 2万4,611人(2025年) 756人(3.2%増)
※出典:荒川区「町丁別世帯数および人口一覧表」。いずれも1月1日現在
続いて人口密度を見ていきます。荒川区の人口密度は、約219人/ha、西日暮里地域は約223人/haと、区平均や特別区の平均人口密度である約157人/haと比べて高い傾向にあります。人口密度の高さからも分かるように非常に密集した市街地が広がっていることが分かります。
地理的特徴として、西日暮里地域は、西側は武蔵野台地の東端にあたり、西側のエリア台地および台地の縁から東側の市街地に向かって低地が広がっています。このため、駅を挟んで東西で見える景色が異なるのも西日暮里駅の魅力といえます。
特に、西日暮里駅周辺が有する歴史的特徴として、駅西側の高台には、江戸城の前身を築いた室町時代の武将の太田道灌の出城があったとされる道灌山や諏訪台があり、江戸時代には花見など庶民の行楽地として賑わっていました。
おそらく江戸期から多くの人達に慕われた街だったのだろうと思います。現代では当時の行楽地としての名残はほぼ残ってはいませんが、地域から慕われていた歴史は今もなお残り続けています。
また、西日暮里駅西側にある荒川区立第一日暮里小学校の校門前には詩人・彫刻家として明治・大正・昭和時代に活躍した「高村光太郎」直筆の石碑『正直親切』が設置されています。
高村光太郎は同校の卒業生であり、石碑『正直親切』は、1951(昭和26)年に岩手県花巻市立山口小学校の児童のために書かれたものを、創立百周年の際に財団法人高村記念館の協力を受けて設置されたようです。
西日暮里駅周辺の住みやすさ
西日暮里駅周辺の交通利便性
JR東日本社によると、JR西日暮里駅は1日平均乗車人数が約8万8,000人(2023年度統計。降車客数は含まず)であり、山手線の中では30駅中18番目に利用者数があります。規模としては、目黒駅や神田駅と同程度となります。
JR西日暮里駅は、JR山手線および京浜東北線、東京メトロ千代田線、都営日暮里・舎人ライナーを利用することができるため、上野駅や東京駅、霞ヶ関駅など主要な駅までのアクセス性に優れています。
また、東京メトロ千代田線では、JR常磐線各駅停車や小田急線との相互乗り入れを実施しているため、柏市や、東京西部・神奈川県へのアクセスも便利です。さらに、東京メトロ千代田線の大手町からロマスカー(列車名:メトロはこね号)を利用すれば約2時間で箱根湯本駅(大手町駅でロマンスカーに乗り換え)まで行くことができます。
<西日暮里駅から主要駅へのアクセス時間>
・上野駅:約6分
・東京駅:約14分
・新宿駅:約21分
・成田空港(空港第2ビル駅):約39分(JR日暮里駅乗り換え。乗り換え時間を含まない)
・霞ヶ関駅:約15分
西日暮里駅周辺の買い物・飲食店事情
西日暮里駅周辺には生鮮食品を扱うスーパーや飲食店はありますが、比較的規模の大きい店舗は少ない傾向にあります。しかしながら、隣駅である日暮里駅や上野駅まで移動すれば商業施設が充実していますので買い物等に困ることはないです。
また、現在、西日暮里駅の北東部では市街地再開発事業が進められています。再開発では住宅や公共施設(文化交流施設)に加えて、商業施設も計画されているため、整備後は買い物や飲食の利便性が高くなると考えられます。
なお、現在、観光地としても有名な谷中銀座商店街へは日暮里駅からのアクセスが一般的ですが、西日暮里駅からでも徒歩で移動できる距離にありますので、歴史ある商店街で買い物を楽しむこともできます。
西日暮里駅周辺の自然環境
西日暮里駅周辺には、駅の西側に比較的規模の大きい西日暮里公園(荒川区管理)が設置されていますが、この公園以外は児童遊園などの小規模な公園に限られ、十分な自然環境に恵まれているとは言えない状況です。加えて、現時点で駅周辺では規模の大きい公共空間も確保されていません。この点は、防災的にも課題といえます。
しかし、山手線の駅ということもあり、交通利便性の高さを生かすことができます。具体的には、電車を利用して数分から数十分で比較的規模の大きい「上野恩賜(おんし)公園」や「舎人(とねり)公園」、荒川自然公園などへアクセスすることができます。
普段は自然環境を感じられなくても、休日には豊かな自然環境のある公園を堪能することができます。こうした点は、複数路線が乗り入れている西日暮里駅の魅力だと思います。
西日暮里駅周辺の公共施設(役所関係、図書館、教育施設など)
西日暮里駅に隣接する公共施設はないものの、周辺には荒川区の「日暮里区民事務所」や「区立日暮里図書館」をはじめ、最低限の公共サービスを受けるための施設は立地しています。
これらに加えて、西日暮里では山手線を利用すれば「上野恩賜公園内」に「国立博物館」や「国立科学館」「国立西洋美術館」、さらには「国際子ども図書館」など、国の中枢となるような文化・教育施設が立地しています。普段来館する機会が少ない施設かもしれませんが、上野駅に近接しているメリットといえます。
西日暮里駅周辺の治安・ハザード
西日暮里駅のある西日暮里地域(西日暮里一丁目〜六丁目)の刑法犯認知件数は2024年統計では249件となっており、荒川区全体の約19%(区全体は1,328件)を占めます。上図の町丁別の認知件数をご覧いただくと西日暮里駅周辺では、橙色の部分が多く、犯罪認知件数が多いことが見て取れます。
また、西日暮里地域における犯罪の種別として最も多いのは、「自転車窃盗」で58件が認知されています。この傾向は区全体で見ても同様です。このことから、治安に不安を覚える方もいると思いますが、駅前という特性上、犯罪が起きやすい傾向にはあります。一方、西日暮里駅周辺には、「西日暮里駅前交番」が立地していることから、犯罪の起きやすいエリアにあっても安定的な治安維持に貢献していると考えられます。
一方、防災面でみると、荒川区内には荒川水系の隅田川が流れており、おおむね0.5m〜3.0mの浸水が想定されていて、河川洪水の影響を受けやすい状況にあります。特に近年は短時間に強い雨が降る傾向となっているため想定以上の洪水被害が発生することも十分に想定できます。
このため、西日暮里駅周辺では、駅西側の台地上を除いて水害への備えが必要となります。また、西日暮里駅周辺の一部では木造建築物が密集しており、防災上の危険性を抱えています。駅周辺では、市街地再開発事業により、木造密集市街地の解消や交通広場の整備が進められており、災害時には一時的な避難場所として有効に活用されることが期待されています。
河川洪水・高潮に対する災害ハザードエリアは、荒川区が公開しているハザードマップ情報、または国が公表している不動産情報ライブラリがありますので、いずれかで災害ハザードリスクを把握することをおすすめします。
西日暮里駅周辺の病院事情
西日暮里駅周辺には、初期救急や二次救急として複数の医療施設が立地しています。
<西日暮里駅周辺の主な病院・診療所>
【初期救急】
・荒川区医師会こどもクリニック(小児科)
【二次救急】
・社会医療法人社団一成会 木村病院
・荒木記念東京リバーサイド病院
・医療法人社団杏精会岡田病院
・社会医療法人社団正志会令和あらかわ病院
・医療法人社団藤寿会佐藤病院
西日暮里駅周辺の子育て環境
荒川区によると、区の保育所待機児童数は、2023年4月1日時点で33名となっています。2022年・2023年はそれぞれ0でした。こうした状況などを受け、荒川区では、待機児童を持つ保護者等を対象にベビーシッター利用に対する補助事業をはじめ、各種子育て支援施策を行っています。
また、西日暮里駅や隣駅である日暮里駅周辺には、日常の買い物に便利な商業施設が多くあるほか、子育て支援施設、医療施設など、子育てを行う上で不可欠な施設が充実しています。
なお、今後、約1,000戸近い分譲住宅が駅北東部での市街地再開発事業により供給されることから、居住人口が大幅に増加することが考えられます。当該事業では誘導用途として保育施設が想定されており、市街地のリニューアル後も持続的な子育て支援が行われると思われます。
西日暮里駅周辺の家賃相場
<西日暮里駅の家賃相場>
・ワンルーム:10.10万円
・1LDK:17.71万円
・2LDK:23.52万円
・3LDK:27.31万円
<日暮里駅の家賃相場>※隣駅
・ワンルーム:10.42万円
・1LDK:17.45万円
・2LDK:22.56万円
・3LDK:24.25万円
<西日暮里駅周辺の不動産価格相場>
中古マンション:6,882万円(専有面積70m2の場合)
中古一戸建て:8,831 万円(建物面積100m2の場合)
西日暮里駅の市街地再開発事情
現在、西日暮里駅の北東部において、市街地再開発事業が進められており、これまでに西日暮里駅前には不足していた交通広場の整備や、都営日暮里・舎人ライナーとJR線・千代田線との乗り換えの利便性を向上するペデストリアンデッキの整備、住商複合型のタワーマンション建築などが予定されています。大きく街並みが変化することが考えられます。
西日暮里駅周辺の魅力まとめ
今回は、荒川区の南西部に位置する「西日暮里駅」周辺の住みやすさを紹介しました。JR西日暮里駅はJR山手線・京浜東北線や東京メトロ千代田線、都営日暮里・舎人ライナーを利用できるほか、上野駅や東京駅にも近く公共交通の利便性の高いです。
一方、都心の駅であることから周辺は自然環境に恵まれているとはいえない点はデメリットに挙げられます。しかしながら、少し足を延ばせば、上野恩師公園や荒川自然公園、さらには駅西側には江戸以前から続く神社仏閣が多く立地している点で見れば、自然環境にアクセスしやすいエリアといえそうです。
ただし、防災面でみると、荒川水系である隅田川が近接していることや市街地の大半が低地にあるため、河川洪水により1階部分は浸水するエリアに含まれていることに注意が必要です。
また、一部地域では木造密集市街地が点在しており、区全体的に災害への対処が求められています。このため、日頃から災害へ備えとして、どのような災害が起きる可能性があるのかハザードマップ等で事前に確認しておき、いざ災害が起きた場合には、迅速な避難、災害発生後は、救助・復興・回復への対処など、日頃から適応策を検討しておくことが必要と考えられます。居住する際には、個人・家族間で災害発生後の連絡手段や避難先などをあらかじめ話し合っておくことをおすすめしたいです。
なお、現在、西日暮里駅周辺では市街地再開発事業が計画されており、2025年1月には東京都知事から再開発組合の認可を受け本格的にプロジェクトが始動しています。完成後は住商機能に加えて公共施設(文化交流施設)も整備され、街のシンボル的存在になるはずです。ぜひ、引越し先を検討する際の候補地に入れてみてはいかがでしょうか。