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<全国高校野球選手権静岡大会> 聖隷クリストファー 悲願の初V 選抜落選から3年半、自力でつかんだ甲子園 「上村野球」再び聖地へ

アットエス

全国高校野球選手権静岡大会は7月28日、草薙球場で決勝が行われ、聖隷クリストファーが3―1で静岡に競り勝ち、甲子園初出場を決めた。初回に谷口理一選手の2点適時三塁打で先行して主導権を握り、2年生左腕、高部陸投手が4安打1失点で完投した。2022年春の選抜落選から約3年半、自力で甲子園切符をつかみ取った。春の県大会覇者が夏の頂点に立つのは2015年、3季連続甲子園に出場した静岡以来10年ぶり。

「勝ち負けより、いい顔してやろう」
上村敏正監督(68)は、藤枝明誠との準決勝を前に選手に言った。
昨夏は決勝で掛川西に敗れた。雪辱の舞台が近づくたびに、勝ちを意識する気持ちは強くなる。指揮官はそれを見透かすように、そう呼びかけた。
掛川西時代の教え子で、監督を支えてきた加茂勇作部長(36)は言う。「ただの笑顔じゃない。湧き上がってくる充実感を大事にしよう、と話していましたね」

「緊張」を否定しない

上村監督は「緊張」を否定しない。自身は浜松商で1975年夏の甲子園に出場。「自分も高校時代は緊迫した場面で足が震えた。弱さは隠さず、表に出していい」。ただ「根拠のない自信を持つには練習するしかない」とも言う。

今大会、準決勝に先発した上田一心投手は「緊張した。でもマイナス思考にはならなかった」と振り返った。積み重ねてきた練習と、春の県大会決勝での完封勝利が自信の裏付けとなり、大事な場面でひるまなくなった。

原点は選手時代の経験

公立高校の教員として浜松商や掛川西を甲子園に春夏計8度導き、磐田北副校長などを経て2017年秋に7年ぶりに私学・聖隷クリストファーの校長、野球部監督として現場に復帰した。2018年の夏、指導の原点についてこう答えている。

「自分の高校時代、秋は県大会に出場できず、春は県大会初戦でコールド負け。あんなに弱いチームでも(1975年夏の)甲子園に行けた。野球は球の速さや遠くに飛ばすという対決じゃない。どうやってここ一番で力を発揮するか、そのための準備をするかだと一貫して思ってきた」

ここ一番で力を発揮する「準備」

愚直に基礎を鍛え上げ〝ここ一番〟で力を出し切る準備をする。積み上げてきた基礎の確かさは試合前ノックを見れば分かる。

決勝の朝、上村監督は「お前たちならやれると信じている」と語りかけた。その言葉は「普段、褒められたことがない」と話す選手たちの背中を押した。大一番を戦う選手の表情には、自信と充実感がみなぎり、伝統校を威圧する力となった。

波紋呼んだ選抜落選

監督就任から8年目でようやくつかみ取った甲子園切符だ。
2021年秋の東海大会で準優勝しながら、翌春の選抜は落選。
東海大会の決勝進出校が落選したのは1978年以来44年ぶりの波乱で、この時は優勝校の不祥事による辞退という異例の出来事だった。

選考委員の説明は「個々の能力、特に投手力は(東海4強で選出された)大垣日大が上。甲子園で勝つ可能性が高い」と客観性に乏しく、世間の不評を買った。
選考理由や基準に対する議論は、国会の審議でも取り上げられるなど波紋を広げた。

努力は報われない?

落選を受け、当時の上村監督は「力がないと言われればその通りかもしれない。ただ、結果として東海準優勝までできたことを評価されてもいいのかなと思う。(選手が)努力は報われないと思ってしまったら、それは違う」と心情を吐露している。

あれから3年半。上村監督自身も悩み、苦しんできた。「高校野球が嫌になった。嫌な思いをしてまで、何のためにやっているのかと思うこともあった」。その姿を傍らで見てきた加茂部長は「長かったし、きつかったですね」と感慨を口にする。

3元号で貫く上村イズム

上村監督が甲子園に導いた高校は浜松商、掛川西に続き3校目。昭和、平成、令和の3元号にわたる歴史にその名を刻むことになる。かつてに比べたら、選手の体格も技術も一変したが、上村イズムの根幹は変わっていない。

「野球はメンタルが影響するスポーツ。苦しい場面で何を考えて打席に向かうのか。自分との戦い。それを普段からコントロールできているかどうかが問われる」
上村野球が再びの甲子園でどんな輝きを放つのだろうか。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)

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