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メルカリ社のAI活用率95%、加速すべきは人員整理ではなく「業務の再定義」

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メルカリ社のAI活用率95%、加速すべきは人員整理ではなく「業務の再定義」

2025年8月5日、メルカリは2025年6月期通期決算説明会を開催。過去最高益を達成した決算報告とともに、今後の成長戦略として「AI-Native Company」への組織変革方針を打ち出した。

注目すべきは、社内AIツール利用率95%・開発量64%増というインパクトのある実績、そしてそれに伴う「業務プロセスの全面的な棚卸しと再設計」を明言した点だ。

こうしたAI活用の本格化は、単なる未来志向の技術投資ではなく、現実的な経営課題への対応でもある。

というのも、メルカリ社が今回公開した通期決算(2025年6月期)では、売上収益が1,926億円(前年比+3%)、コア営業利益が275億円(前年比+46%)と、利益面では過去最高を更新したものの、マーケットプレイス事業のGMV成長率はわずか+4%に留まった。つまり、トップラインの成長鈍化という明確な課題に直面している。

その打開策として掲げられたのが、「AIを前提とした組織改革とプロダクト体験の再設計」である。

この動きは単なる業務効率化に留まらず、「人が判断と創造に集中する環境」を目指した抜本的な組織改革=人材配置の見直しとも読み取れる。

以下、エンジニアに向けた視点で読み解く、メルカリの”AIネイティブ”戦略をまとめる。

AI導入で開発効率が64%増、社内AI利用率は95%に

あまり知られていないかもしれないが、メルカリは2017年にAI専任チームを立ち上げており、直近はその動きが加速。AIを活用した出品体験の最適化や不正対策、独自のAI与信モデルの開発などの開発も進めている。

実際、AI活用はすでにメルカリの日常となっているようで、昨日発表された最新データによれば、

●従業員のAIツール利用率:95%
●プロダクト開発におけるAI生成コード比率:70%
●エンジニア1人あたりの開発量:前年比の64%増

といった高い水準、実績を示している。

生成AIの活用はCursor・Claude Code・Devinなどによるコード生成にまで及び、コードの実装スピード・品質が劇的に向上したという。

2025年7月26日に行われた「Devin Meetup Tokyo 2025」の様子。Devinの開発元であるCognition社の共同創設者・Walden Yan氏をキーノートに迎えたミートアップは、メルカリのエンジニア(Kuuさん)がリーダーを務めた。このイベント以外にも、メルカリ所属のエンジニアがオーナーを務めるAIイベントやコミュニティ形成も盛んだ

Cognition共同創設者・Walden Yanが明かす、Devinの一番好きな使い方とは?【Devin Meetup Tokyo 2025】https://type.jp/et/feature/28931/

100名規模のAI組織発足、あらゆる業務をAI前提に再設計

メルカリはこのAI活用をさらに加速させるため、前述した通り100名規模の「AI Task Force」と名付けられた新組織を発足させた。

AIを単なる効率化ツールとしてではなく、組織とプロダクトの“前提”に据える大胆なアプローチを進めている。具体的には、プロダクト開発だけでなく、業務プロセスの全面的な棚卸しを開始しているそうだ。

組織改革の主なアクションは以下の通り。

●全業務プロセスを2025年12月までにAI前提で再構築
●「AIと共に働く職場」づくりを推進
●サポート基盤・不正対策・AIチャット対応を強化

これはつまり、「AIに任せられる業務は徹底的に任せ、人が担うべき価値創出部分に集中する」という体制への転換である。

明らかになった「人員整理」への含意

決算説明会の質疑応答パートにおいて、記者から「AI導入による人員整理」の可能性が問われた際、経営陣からは、明確な数字や計画は示されなかったものの、次のような回答があった。

「業務の見直しにより、人が行うべき仕事の再定義が必要」
「人が判断と創造に集中できる環境づくりを最優先にし、業務プロセスを見直している」

これは実質的に、AIとの共存を前提とした人材再配置やスリム化の可能性を示唆しているとも受け取れる。とりわけ、ルーチン業務やミドルマネジメント層の仕事は再編の対象となる可能性が高いのではないだろうか。

「AIを使う人」から「AIと共に設計する人」へ

今回の発表は、「社内でAIが使われている」というレベルを超え、AIと共に組織設計・プロダクト設計を行う時代の到来を告げるものだ。メルカリのような大企業が、プロセス設計レベルからAIに最適化するという方針は、エンジニアのキャリア形成においても新たな問いを投げかける。

「AIを使いこなすスキル」はもはや前提条件であり、今後はAIと共に価値を設計・実装するエンジニアリング力が問われていく時代に、いよいよ入っていく。

「人員削減」ではなく「AIで業務を再定義」

メルカリの決算説明会は、利益やプロダクトだけでなく、企業そのもののかたちをAIで再構築しようとする意思表明でもあった。今後、他社でも同様の流れが広がる中で、エンジニアが担うべき役割やスキルセットにも、大きな変化が求められそうだ。

文/エンジニアtype編集部

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