2022年産、2023年産を対象に第39回「シャブリワインコンクール」を開催
「第39回 シャブリワインコンクール」が1月18日、新進気鋭のソムリエール、マリー・ヴォデッキさんを審査委員長に迎えてBIVBシャブリ事務所で開催された。ヴォデッキさんは、2023年フランス最優秀若手ソムリエで26歳。審査には、30年にわたりアラン・デュカスグループでワイン責任者を務めたジェラール・マルジョン氏や、パリソムリエ協会会長のジャン=リュック・ジャムロジク氏など、長年の実績を持つ熟練審査員が参加した。
今回の審査員は、ジャーナリスト、レストラン関係者、ソムリエ、仲買人、醸造家など72名。コンクールの中立性を保つために、出品者は審査員を務めることができない規定だ。
対象ボトルは、プティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・プルミエ・クリュが2023年産、シャブリ・グラン・クリュが2022年産で計292本。第1次審査で高得点を獲得したワインが、メダル授与権限を持つスーパージュリーによっておこなわれる最終審査に進み、5つのカテゴリー、19本に、金、銀、銅のメダルが授与された。
審査委員長を務めたヴォデッキさんは、理系の高校を卒業後、パリのフェランディ校で料理とビジネスを学び、ミシュラン星付きレストランで働いた後、ワインの世界に入った。2019年からソムリエとしての専門教育を受け、世界最優秀ソムリエのフィリップ・フォール=ブラック氏や、フランス最優秀ソムリエのグザヴィエ・テュイザ氏らの下で研鑽を積んだ。2021年にはフランス最優秀学生ソムリエ、2023年にはフランス最優秀若手ソムリエなどの受賞歴を持ち、2024年にはフランス最優秀ソムリエコンクールで準決勝まで進出した。オーベルジュ・ド・モンミンでシェフソムリエを務めた後、現在はアヌシーのレストラン・サバで新たな挑戦を始めている。
マリー・ヴォデッキさん(審査委員長、2023年フランス最優秀若手ソムリエ)インタビュー
今回、コンクールの審査委員長を務めた感想をお聞かせいただけますか?
シャブリは白ワインの中でも特別な存在であり、非常に評価しています。そのテイスティングに参加できたことは、とても興味深かったです。私は、一次審査で左岸のシャブリ・プルミエ・クリュを試飲しましたが、テロワールと人々の営みがワインにもたらす違いを実感しました。さまざまなテロワールの個性を比較できたことは、非常に面白い経験でした。
これまでのキャリアについて教えていただけますか?
もともと食の世界や美食に興味があり、以前はパティシエをしていましたが、パリでワインを学び、ワインの世界に転身しました。オテル・ド・クリヨンのソムリエ、グザヴィエ・テュイザ氏や、世界最優秀ソムリエのフィリップ・フォール=ブラック氏に師事しました。
私はワインと同様に日本酒にも大変興味を持っており、フランスで2017年から開催されている、日本酒および焼酎を対象とした「Kura Masterコンクール」の審査員も務めています。昨年は日本酒造組合中央会(Japan Sake and Shochu Makers Association)に招待され、日本に滞在していたため、コンクールの審査に参加できなかったのは残念です。日本滞在中は各地を回り、さまざまな酒を試飲してテロワールを発見する、非常に良い機会となりました。今後も常に挑戦し、学び続けたいと考えています。そのためにも、学びの良い機会を与えてくれるコンクールには積極的に参加したいです。優勝することだけが目的ではなく、私は困難に立ち向かうことが好きなのです。
サンドリーヌ・オドゴンさん(審査員、醸造学講師、BIVBシャブリ広報担当)インタビュー
今回、出展ボトルは2023年産が主体でした。2023のシャブリはどのようなミレジムだと考えていますか。
2023年のシャブリは、特に二つの点に注目しています。一つ目は、非常に日照量が多く、太陽の恵みを強く感じられることです。多くのプルミエ・クリュは力強さを備え、本来冷涼なはずの左岸のワインでさえ、その特徴が顕著に現れています。この力強さと寛大さは、23年ミレジムの個性を明確に示しています。一部のワインは、この力強さによって長期熟成のポテンシャルを持ち、また別のワインは、丸みと果実味を増し、早期に楽しめるタイプとなるでしょう。フレッシュさが不足していると感じられるワインも稀にありますが、そのようなワインは全体の中では非常に少ないです。
2023年は、シャブリとしては非典型的なミレジムですね。
過去にも、16年や13年のような暑い年がありましたが、それらと同様に、23年も例外的な年と言えます。22年と比較すると、その違いは歴然としています。22年は、より冷涼でクラシックなシャブリのスタイルを持っていました。一方、23年は全く異なり、その個性は際立っています。
これらの特徴から、23年産はシャブリにとって、やや型破りではあるものの、非常に興味深く、将来が期待できるミレジムになると確信しています。中長期的な熟成にも適しており、愛好家を大いに満足させてくれるでしょう。
二つ目に注目したのは、生産者の生産年(ミレジム)への限りない謙虚さと尊重の心です。どのワインも樽の使い方が繊細で、過度な抽出は感じられません。試飲の時点で、まだ熟成中のワインも多くありましたが、それでもなお、テロワールとミレジムの個性を尊重した造りがなされていることは明らかでした。これは近年のシャブリにおける重要な変化であり、高く評価されるべき点です。
経験上、23年のような非典型的なミレジムは、市場で人気を博すこともあります。熟成が早く、若いうちから楽しめるため、消費者の嗜好に合う場合があるのです。もちろん、文化や市場によって評価は異なりますが、クラシックなシャブリとは異なる魅力を備えた23年が、どのような評価を受けるのか、今から非常に楽しみです。
2022年は厳冬期に2℃という低温を記録し、その後、夏季には22℃前後の高温を維持した。特筆すべきは、9月における15℃への急激な気温低下である。一方、2023年は冬季から比較的穏やかな気温推移を示し、6月から早期に気温の上昇が始まり、夏季は21〜22℃の安定した高温を維持した。さらに、9月においても20℃という比較的高温を保持している。
2022年の降水量は極端な変動を示している。6月に110mmという顕著な降水量を記録した後、7月から8月にかけては15〜20mmという極端な少雨期を経験し、9月には再び95mmの多雨となっている。対照的に、2023年は3月の78mmを除き、比較的安定した降水量を示している。特に夏季は68〜78mmという適度な降水量を維持し、9月は35mmと比較的穏やかな降水量となっている。
日照条件においても両年で顕著な差異が観察される。2022年は7月に360時間という突出した日照時間を記録したものの、9月は平年を下回る結果となった。2023年は6月に320時間の顕著な日照を記録し、その後も夏季から9月にかけて安定した日照条件を維持している。
以上の気象条件を基にワインへの影響と予想される特徴をまとめると、2022年産は夏季の高温と強い日照、そして少雨により、果実の完熟度と凝縮感が高まっていることが予想される。しかしながら、9月の多雨と気温低下により、収穫時期の適切な判断が重要となった年である。結果として、より凝縮した果実味と高めのアルコール度数を持つ、力強い構造のワインとなる可能性が高い。長期熟成のポテンシャルも期待できる。
2023年産は、より安定した気温推移と適度な降水量により、果実の均一な成熟が実現されたと考えられる。特に9月の好天は、最終的な成熟過程において理想的な条件をもたらした。これらの要因により、バランスの取れた酸と糖度を持つ、エレガントな味わいのワインとなることが予想される。シャブリの特徴であるミネラル感を伴ったスタイルを表現できる可能性もある。両年とも高い品質が期待されるものの、そのスタイルは大きく異なることが予想される。特に2023年は、シャブリのテロワールを純粋に表現する可能性を秘めた注目すべきミレジムとなるだろうと考えられる。
メダル受賞リスト
プティ・シャブリ 2023 (Petit Chablis 2023)=金賞:ドメーヌ・ジョリー・エ・フィス (Domaine JOLLY et Fils)、銀賞:ドメーヌ・エルヴァン (Domaine ELLEVIN)、銅賞:シャルリー・ニコル (CHARLY NICOLLE)、ドメーヌ・ゴトロン・アラン・エ・シリル (Domaine GAUTHERON Alain et Cyril)
シャブリ 2023 (Chablis 2023)=金賞: ドメーヌ・デ・マランド、アンヴェール・ド・ヴァルミュール (Domaine des MALANDES, Envers de Valmur)、ドメーヌ・オリオン (Domaine ORION)、銀賞: ドメーヌ・デ・アット、レ・シャティヨン (Domaine des HÂTES, Les Châtillons)、シャルリー・ニコル、アント・MCMLXXX (CHARLY NICOLLE, Ante MCMLXXX)、銅賞:SCEV フランクレ、ヴィエイユ・ヴィーニュ (SCEV FRANCLET, Vieille Vigne)、
シャブリ・プルミエ・クリュ 2023 左岸 (Chablis Premier Cru 2023, Rive Gauche)=金賞:ドメーヌ・デ・マランド、コート・ド・レシェ (Domaine des MALANDES, Côte de Léchet)、銀賞:ドメーヌ・ド・ラ・トゥール、モンマン (Domaine DE LA TOUR, Montmains)、銅賞:ドメーヌ・ヴェレ、ボーロワ (Domaine VERRET, Beauroy)
シャブリ・プルミエ・クリュ 2023 右岸 (Chablis Premier Cru 2023, Rive Droite)=金賞:ドメーヌ・デ・マランド、フルショーム (Domaine des MALANDES, Fourchaume)、銀賞: ドメーヌ・ジャン・コレ・エ・フィス、モン・ド・ミリュー (Domaine Jean COLLET et Fils, Mont de Milieu)、ドメーヌ・ゴトロン・アラン・エ・シリル、ヴィエイユ・ヴィーニュ レ・フルノー (Domaine GAUTHERON Alain et Cyril, Vieilles Vignes, Les Fourneaux)、銅賞:ドメーヌ・エルヴァン、ヴォクパン (Domaine ELLEVIN, Vaucoupin)
シャブリ・グラン・クリュ 2022 (Chablis Grand Cru 2022)=金賞:ドメーヌ・ジャン・コレ・エ・フィス、ヴァルミュール (Domaine Jean COLLET et Fils, Valmur)、銀賞:ドメーヌ・ジャン=ポール・エ・ブノワ・ドロワン、ヴァルミュール (Domaine Jean-Paul et Benoît DROIN, Valmur)、銅賞:ドメーヌ・ジャン=ポール・エ・ブノワ・ドロワン、グルヌイユ (Domaine Jean-Paul et Benoît DROIN, Grenouilles)