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集団行動が苦手な発達グレー息子。就学相談でも「判断が難しい」…特別支援学級と通常学級、選んだのは

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発達グレーゾーン(または軽度)の子ども集団行動が苦手な発達グレー息子。就学相談でも「判断が難しい」…特別支援学級と通常学級、選んだのはの学級えらび

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

年長になり、はじめて就学相談へ

現在小2の息子は、年長の初夏の頃にはまだ集団行動に馴染みにくく、園生活の中でも「その場にいられない」「気づくと一人で離れてしまう」といった場面が目立っていました。

小学校入学を前に、「この子に合う環境をどう選ぶか」について本気で向き合う必要があると感じ、そこから支援を受けていくために、一気に動き出しました。病院での発達相談、療育の開始。そして同時に、市の教育相談センターにも足を運び、就学に向けてどのような支援が必要か、「通常学級か、特別支援学級か」という選択肢についても相談を始めました。

当時の私は、療育先や園での息子の様子を踏まえて、「この子には特別支援学級がいいだろう」と考えており、相談員さんにもその前提で話を持ちかけました。通常学級にこだわりたい訳ではないので、話もすんなり進むだろう、と思っていたのですが――

「困りの程度がこのくらいのお子さんは、判断がとても難しいラインにいます」
「通常学級でも馴染める可能性はありますし、特別支援学級にするかどうかは、ご家庭でどのような将来を見据えているかにもよります」
と、相談員さんからは予想に反して、さまざまな観点から慎重に考える必要があるという提案がありました。

そう言われてはじめて、私は「今の子どもの様子」だけではなく、「これからの成長や進路を見通したうえで選ぶこと」が求められているのだと気づきました。

特別支援学級と通常学級、それぞれのメリットと不安

相談員さんに話を伺って、はじめて知ったのは、特別支援学級の時間割や学習の進め方が通常学級とは構成が異なるということでした。

特別支援学級は「学習」と「生活・自立支援」が半々の時間割で、学校によっては学習時間が通常学級より少なめな場合もあり、学習の進度に差が出やすく、自宅での補完が必要になることもあるそうです。私自身は、事前に調べた段階で「特別支援学級は個々の子どもに合わせた学習ができる」という点に魅力を感じていたのですが、時間割自体が違うために“学習の量そのものが減る”可能性があるという点は、実際に聞いてみてはじめて知ったことでした。

また、特別支援学級から通常学級への転籍は「保護者の希望で可能」と言われていたものの、実際に通う予定の小学校に聞いてみると、少し違った見解もありました。

転籍はできるが、学年途中での転籍希望などは、学校側のクラス編成や先生の配置などの調整の関係で、すぐには転籍できない場合もあること。環境を行き来することが子ども本人に大きいストレスになること。そのため、転籍には本人の意思も含めて慎重な判断が必要だということを説明されました。
※時間割や転籍などについての考え方や対応は自治体や学校によって異なります。実際に見学したり、お話を聞いてみることをおすすめします!

こうして相談や情報収集を重ねていく中で、「特別支援学級か通常学級か」の選択は、あとからの変更が簡単ではない現実も見えてきました。その分、最初にどちらに入るかの判断が、子どもにとっても保護者にとっても、とても大きな意味を持ってくるのだと実感するようになりました。

特別支援学級を選んだ理由。入学後に分かったこと

最終的に私たちは特別支援学級での就学を決めました。
理由としては、何よりも「安心できる環境で、継続して学べること」を大切にしたいと考えたためです。

というのも、園での活動でも、息子は「集団に入れない」という理由がネックになり、楽しそうな経験や行事の機会を逃してしまうことが多くありました。また、療育でも、まずは1対1の関わりから始めて、徐々に小集団へとステップを踏みながら馴染んでいくことになるという説明を受けて訓練していたため、“集団に入る”にも段階と準備が必要なのだということを実感していました。

「たとえ集団に入れなかったとしても、この子が安心して学べる場所があればいい」
「その中で少しずつ、人との関わりや自信を育てていければ」

そんな思いで、特別支援学級を選びました。

ただ、入学してからしばらくは、私自身が迷いを感じることもありました。通常学級の子どもたちが仲良く過ごしている様子を見たり、息子が同学年の子たちと関わる時間が限られていたりすると、「この選択でよかったのだろうか」と、私の中に“置いていかれたような気持ち”が湧いてくることもありました。

息子は幼稚園の頃に行きしぶりがあったのですが、小学校入学後もそれは続き、「せっかく安心できる環境を選んだはずなのに、どうして……」と悩む時期もありました。

けれど、そうした思いは、息子の変化や、特別支援学級で過ごす子どもたち、ご家族の姿を実際に見て少しずつ変わっていきました。

特別支援学級で育まれた「仲間との関係」

特別支援学級での生活が始まって、息子にまず現れた大きな変化は、「その日、どんな活動をして、誰と過ごしたか」をうれしそうに話すようになったことでした。

入学前の園生活では、こちらが「今日は何をしたの?」「誰と遊んだの?」と聞いても、「わかんない」「忘れた」と答えることが多く、関心のあるごく限られた子の名前しか出てこない日々が続いていました。

けれど特別支援学級に通い始めてからは、
「○年生の○○さんがね、こんなこと言ってたよ」
「○○くんは今日はこんなことしてたよ」
と、同じ教室にいるほかの子の様子まで話してくれるようになりました。

おそらく、クラス全体で十数名程度と人数が少なく、規律ある安心できる環境の中で大人が丁寧にサポートしてくれることが、息子の心に“余裕”を生み出したのだと思います。異学年で過ごすことも多く、必ずしも話の合う相手とは限らない中で、就学前までのように「気の合う一人二人」とだけ過ごすのではなく、教室全体の雰囲気やほかの子の様子にも自然と目が向くようになったのは驚きでした。

また、授業参観や懇談会でクラスの様子を見てみると、子どもたち一人ひとりが、自分のペースで「できるようになったこと」を自信を持って発表している姿がありました。

保護者同士も、どの子にもあたたかい目を向けて見守る雰囲気があって、「ああ、こういう場所が“安心できる学びの場”なんだな」と、参観に行くたびに胸が熱くなりました。

特別支援学級を選ぶにあたっては、転籍のハードルや、そのまま中学校も特別支援学級へと進むケースが多いことにその後の高校・大学進学や就労のことを考えると不安やためらいもありました。けれど今では、それが「特別支援学級から出られない」のではなく、「ここが安心できるから、ここで学びたい」という自然な選択なのだと、息子やほかの子どもたちの姿を見て実感するようになりました。

今の心境。そして今後の進路について……

今のところ、今後の息子の進路はまだはっきりとは決まっていません。特別支援学級から通常学級への転籍も可能性としては残っていますし、本人がどんな将来を思い描くかによって、これから必要なサポートや学び方も変わってくると思っています。

けれど、入学前の私は「今ここで最適な進路を選ばなければ、この子の将来が閉ざされてしまうのでは」と、かなり切迫した気持ちを抱えていました。「本人はまだ小さいから、親が方向を決めてあげなければいけない」という思いが強かったのです。

そこからすれば、今はずいぶん考え方が柔軟になった気がします。
進路について情報を集めていくうちに、特別支援学級を出たあともいろいろな進学ルートがあることや、こういった子たちへの学びの場が今後増えつつあること、そしてサポートの形次第で、子どもの可能性は十分広がるということを知っていきました。

現在、息子は小学2年生。まだまだ大人の手が必要な場面も多いけれど、特別支援学級という落ち着いた環境の中で少しずつ「できること」が増え、「できない」よりも「やってみたい」という気持ちが前に出るようになってきました。以前は行きしぶりもありましたが、今では「今日は○○の授業が楽しみ!」「授業でやったことを家でもやってみたい!」と、前向きな言葉が聞かれるようにもなりました(もちろん、気分に波はありますが……)。

今振り返ってみると、あのとき「この子が安心できる場所はどこか」を大事にして特別支援学級を選んだことは、わが家にとっては良い選択だったと感じています。これから先も、進路は一度きりの決断ではなく、その時々の成長や気持ちに寄り添いながら、親子で一緒に考えていきたいと思います。

執筆/河野りぬ

(監修:初川先生より)
息子くんの年長時から就学相談等を利用し、悩んだ末に特別支援学級に入学して、その後の様子や思いのシェアをありがとうございます。特別支援学級か通常学級かについて悩む場合に、自治体によって特別支援学級の対象がどのようなお子さんと設定しているかが異なる場合があります(知的障害(知的発達症)のお子さん向け、あるいは自閉症・情緒障害のお子さん向けなど)。そのあたりの情報収集も含めて、年長の頃(春~秋)に就学相談にかかり、相談しながら検討できるとよいと思います。そのプロセスの中で、通学圏内にある特別支援学級を見学させていただくのも1つです。

いわゆる「グレー」のお子さんの場合、特別支援学級でも通常学級でもしっくりくる度合いがど真ん中ではなく、一長一短と思われることもあります。また、就学相談で出される提案は夏~冬時期ですが、お子さんが「小学校」に入ることをとても楽しみにしている場合などはその後集団生活の中で「小学校」を見据えてぐんと成長することもあります(特に、集団生活のルールや、小学生になるための準備や一人で支度ができるかどうかなどに関して)。

ただ、その一方で、小学校生活はお子さんにとって新奇場面の連続であり、新しいことが苦手なお子さんにとっては負担感も強く、今までできていたこともうまくできなくなったり、不安感が増したりすることもあります。そのあたりをどこまで想定できるかはどうにも読み切れない面もあり、最終的には、お子さんをよく知る保護者の方をはじめとして、お子さんの小学校生活でまず何を大切にするか(入学後しばらくはどこを選んだとて慣れるまでは大変なことはもう想定内として、その中で大事にしたいのはどのような環境か)ということになってくると思います。河野さんの場合には、「安心できる環境で、継続して学べること」でした。とても大事な視点だなと感じます。

小学校入学後に関して、通常学級の場合には、「1年生と2年生の間」「2年生と3年生の間」にはそれぞれ大きなステップがあります。2年生に進級する際には、算数で筆算が出てくるのでそれまでの繰り上がり・繰り下がりはマスターできているほうがよいとか、新出漢字の画数も増え、1回に出る新出漢字の数もほぼ倍になります。3年生に進級する際には生活科がなくなり、理科と社会になるので座学が増える、算数では九九をマスターしていることで割り算に対応できるなどの要素が出てきます。通常学級に入学したものの、このままで大丈夫なのかを検討する場合には、学年の節目においてお子さんが困っていないかを見ていけるとよいだろうと思います。

勉強が分からないまま45分過ごすのはつらいと感じるお子さんは多く、“分からなくてもいいや”と投げ出してしまうことはその後、自分に合った課題が出された時にも投げ出しがちになることもあり、環境とのミスマッチは学習や学びとの適切な距離感を保ちにくくなることもあります。

通常学級か、特別支援学級かで悩む際には、どのような選択をされても、お子さんが少し不適応な様子を見せると、これでよかったのだろうかとますます悩まれる場合もあります。1つひとつの出来事に悩むのは仕方のない面もありますが、河野さんのように、学校に慣れる時期は一喜一憂等あったかと思いますが、「学期」くらいのスパンで見ていただけると、お子さんの成長(あるいは依然として苦手なことを呈することもありますが、それぞれ)を見やすくはなります。パートナーや、担任の先生やスクールカウンセラーなどと、保護者としての不安(大人側の不安・心配)を折々に共有しながら(お子さんにはそれをあまり見せずに)見守っていけるといいでしょう。河野さんの息子くんは、できることが増えて、のびのび成長しているとのこと、何よりです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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