多摩の鉄道の“廃線跡”の魅力に迫る!
東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を愛していただきたいという番組「立飛グループpresents東京042~多摩もりあげ宣言~」(略して「たまもり」)。MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。
今週のゲストも、“番組準レギュラー”の地図研究家で鉄道好きの今尾恵介さん。多摩の廃線跡は「京王線」の現在では住宅街となった廃線の痕跡の話題など。「多摩ニュース」では、地球の歩き方の“調布市版”が出たというニュースを受け、<調布で出るなら日野でも・・・>と日野プライドがチラリ。
多摩の鉄道の“廃線跡”の魅力に迫る!
土屋:今週もゲストのご紹介です。横浜市出身で現在は「日野市」在住の多摩人、地図研究家の今尾恵介さんです! 今週もお願いします!
今尾さん:はい、よろしくお願いします。
土屋:改めてですが、今尾さんのプロフィールの紹介をつる子さんからお願いします!
つる子:はい。今尾さんは1959年、横浜市生まれ、「日野市」在住。出版社勤務を経てフリーとなり、地図や鉄道関連の執筆を続けていらっしゃいます。この番組では主に、多摩の地名や地形、鉄道のご意見番として知識的な面で支えていただいております。最新刊はPHP研究所から販売中の「ぶらり鉄道廃線跡を歩く」です!
土屋:さあ、ここからは今尾さんの著書、PHP研究所から出ています「ぶらり鉄道廃線跡を歩く」から、多摩地域の廃線跡について聞こうというのが、先週のメインテーマだったんですが、1路線しかやれなかったんで・・・
つる子:そうなんですよ! 情報が次から次へと・・・
土屋:ということで、多摩地域の廃線跡、2つ目を教えてください!
今尾さん:「京王線」の「旧線」というのがあります。
土屋:旧線、昔の線路ですね。
今尾さん:本では2箇所、取り上げているんですけど、新宿~幡ヶ谷までと・・・
土屋:京王新線ですね。
今尾さん:そうですね。あとは、「仙川駅」から「調布駅」までの間。これが、全然違う所を走っていたんですよ。
土屋:え、最初は違ったんですか!?
今尾さん:「仙川駅」から「調布駅」間は・・・「仙川駅」「つつじヶ丘駅」「柴崎駅」「国領駅」「布田駅」「調布駅」までの「甲州街道」の南側を走っているんですけど、昔は北側を斜めに走っていたんですよ。
土屋:そうなんですか!
今尾さん:昔は単線だったんですね。大正2年に「京王線」で初めて笹塚から「調布駅」まで開通した時にそこを通っていたんですよ。それが昭和2年に勾配の緩和と、一時、金子駅=「つつじヶ丘駅」のあたり、「甲州街道」の路面電車だったので路面を走るのを止めて、高速化と複線化のために、全面的に今の線路に付け替えたんです。
土屋:そういうことか。「甲州街道」をどう高架しているのかと思ったら、路面電車だったから甲州街道を横断して北に向かって・・・
今尾さん:北というか、「甲州街道」の良きところで畑の中に入っていった感じです。
土屋:はあ~。ということは、その跡地が・・・
今尾さん:あるんですよ。実際に現地に行くとさっぱりわからないんです。でも、空中写真を見ると、家が一列に繋がっているのでわかるんです。
つる子:家からわかるんですね!
今尾さん:道で、あるアパートだけ角度が違うんですよ。道に直角に面しているのに、そのアパートだけ30度くらい斜めに傾いているんです。それが線路跡なんです。線路に沿って長いアパートなんで、建てる時に線路に忠実に建てたのでそうなったんです。
つる子:はあ~。
土屋:「甲州街道」の「仙川」のあたりのどこから横断するんですか?
今尾さん:「滝坂」という坂があって、キューピーの工場があって今は研究所になっているあたりがすごい急坂で、40パーミルで下りていたんです。そこを「甲州街道」に向けて、今の「京王線」の線路から見て右側に分かれていくという感じですね。それで急坂を下りて、あとは「つつじヶ丘」のあたりを路面電車が走っていたということなんですよ。
土屋:うわ~、今行きたいっ!
つる子:(笑)。
今尾さん:先ほど写真って言いましたけど、空中写真はグーグルアースで見られるので、家を1軒1軒見られますよね。それで、ここだよ!と言うと、おおー!!ってみんな、感動してくれるんです。
つる子:グーグルアースだとすぐにわかるんですね!
今尾さんおすすめ廃線跡①西武鉄道“ 安比奈線”
土屋:今尾さんのこの本「ぶらり鉄道廃線跡を歩く」には、多摩以外の廃線跡の素敵なところが紹介されているので、選りすぐりの廃線跡を教えていただけますか?
今尾さん:近場では西武鉄道に“ 安比奈線”というのがあるんですよ。本川越駅の手前に南大塚駅というのがあるんですね。そこから入間川に向かって伸びている支線みたいなのがあったんです。それは、入間川の砂利を取るための線路=砂利線です。
土屋:「西武多摩川線」もそうだし・・・
今尾さん:「下河原線」も、「京王相模原線」の「京王多摩川駅」までの間もそうだし、「南武線」もそうだし・・・、と砂利線が多かったんです。それが入間川の“ 安比奈線”です。
土屋:その廃線跡は今も残っているんですか?
今尾さん:10年前に取材したので、今残っているかはわからないんですけど、10年前に行った時は線路も架線=電線も残っていたんですよ。廃線跡としてのグレードは高かったんです。電車が通らなくなって半世紀くらい経っているので、みんな、線路の脇にプランターを置いてお花を植えていたりして良い感じなんですよ。
土屋:“砂利線”というのはけっこういっぱいあったんですね。
今尾さん:そう、昔はいっぱいあったんですよ。大正時代の後半から砂利の需要がすごく増えるんですよ。それはやっぱり鉄筋コンクリートの建物や橋が増えたので。
土屋:砂利をそこに混ぜるんですか?
今尾さん:そうです。砂利は骨材なので。要するに、鉄筋コンクリートは砂と砂利とセメントと水で作りますので、砂利は必須だったんですね。で、砂利が取れる所はある程度の架線勾配がないとダメなんで。東京の近くの荒川とか江戸川は砂とか泥しか無いので、急流である「多摩川」と入間川の上流部ですね。
土屋:転がって削れて砂利になる。
今尾さん:特にそうですね。その程良い砂利が得られるので、その辺に砂利線が集中して作られるということですね。
土屋:今、砂利がなくても鉄筋コンクリートを作れるんですか?
今尾さん:今は砂利は別の所=山砂とかいろんな所から取っていますね。「多摩川」や「相模川」などの東京近くの川は高度成長期に砂利を取り過ぎて、橋脚が現れちゃう傾いちゃう、あとは田んぼに水が入れられなくなるみたいな弊害があったので、昭和40年代に全面禁止になったんですよ。
土屋:そういうことがあったんですか!
今尾さん:あちこちに砂利穴がいっぱいあって、その砂利穴の一つが「府中市是政」の「多摩川競艇場」なんですよ。
つる子:おお!
今尾さん:「多摩川競艇」の人に聞いたことがあるんですけど、「多摩川競艇」が始まった戦後の昭和30年代、競艇をやっている西側ではまだ砂利を取っていたと言っていましたね。
つる子:へえ!
土屋:で、六本木の方では“ジュリアナ”があって・・・(笑)。
つる子:(笑)。
今尾さんおすすめ廃線跡②JR可部線の廃線区間(広島県)
土屋:今尾さん、他におすすめの廃線跡を教えてください!
今尾さん:広島県のJR可部線の廃線区間です。可部線は今でもあるんですけど、広島駅から2つ目にある横川駅から北へ行っている線があって。あき亀山というわりと新しい駅があるんですけど、そこから先が3分の2くらいが廃止されちゃったんですよね。
土屋:それは人を乗せていたんですか?
今尾さん:人を乗せていて、2003年に加部から先は廃止されちゃったんですけど、その線路は太田川というかなり大きな川があって、太田川に沿っていくつも橋を架けながら三段峡という所まで行っていたんですよ。三段峡に止まっていたんですけど、そこから先、島根県の浜田市まで行く予定だったんです。だけど、挫折して三段峡で止まっていた。
土屋:これは、廃線跡はどれくらい残っているんですか?
今尾さん:昔の取材だったので今どれくらい残っているか分かりませんけど、グーグルアースを見ると、太田川の鉄橋は残っていますね。かなり情緒がありますね。鉄橋が残っていると廃線跡としてはかなりグレードが高いんですよ。鉄橋は落っこちてくると危ないので。
土屋:そうですよね。老朽化で取っちゃいそうですけどね。
今尾さん:鉄橋は“撤去”するのが普通なので。
つる子:おっ!
土屋:来た! 砂利穴~ジュリアナに続く・・・(笑)。
今尾さん:(笑)。
土屋:これ、老朽化しても行政としては安全という判断ですか?
今尾さん:2003年まで現役でしたから、まだ20年しか経っていないので。もしかしたら遊歩道とか他の鉄道ではそういう活用の仕方もやっていますので。そういう活用の仕方をすると、自分が列車になったつもりで歩けるとか。あとは、サイクリングロードになっている所もあるし。
鉄道ファンが思う廃線跡のジレンマ
土屋:都市部は乗客が乗るから黒字なんだけど、山間部に行くと急にここから先の路線が厳しいみたいなことがあったりして。鉄道好きにとって、こうやって廃線が増えて行くのは嬉しいことではないですよね? 寂しいですよね?
今尾さん:そうですよね。
土屋:北海道とか20年後、どうなっちゃうんだろう。
今尾さん:ほんとそうですね。今のように、国の補助はありますけど、独立採算制でやっていたらいずれ小樽~旭川間と、千歳空港~札幌間だけしか残らないみたいな話もあるので。“上下分離”と言いますけど、やっぱりある程度、国は下の方の線路にはお金をかけて。高速道路にいっぱいお金をかけているんだから、少しはね。ヨーロッパはそうですけど、線路は国が責任を持って維持するので、その上物は・・・“オープンアクセス”といっていろんな会社が自由に列車を走らせるということをやっているので。そういうふうになってくると北海道の鉄道も・・・
土屋:道路もバス会社が運営してないでしょ? 道路は国が作っていて、その上で営業しているわけだから鉄道だってそういうふうにしないと、というのが鉄道ファンの中でも話題になっていて。経済の専門の方も地図上に鉄道が無くなると一気に人が減っていくという。
今尾さん:そうなんですよね。鉄道が廃止されると、交通手段としてバスになるんですけど、鉄道からバスになった途端にお客さんは半分以下になるんですよね、なぜかね。
つる子:ええ!?
土屋:旅行に行く時に、地図に鉄道が無いと不安でしょ!?
つる子:ああ、そうですね! それはありますね!
今尾さん:地図に鉄道が無いと“一見さん、お断り”感が出るんですよ。
つる子:ほう、なるほど。
土屋:青森の十和田湖にありましたよね?
今尾さん:十和田観光電鉄というのがありましたよね。あれも新幹線が開通して、第3セクターの青い森鉄道になって、特急が三沢に行かなくなったので廃止されちゃったんですよ。
多摩ニュース①「多摩市」で空き家が減少
土屋:今週もこちらにちょっとお付き合いいただきたいと思います! 「多摩ニュース」!
つる子:「多摩市」が実施した、令和6年度、空き家の実態調査によりますと、市内の空き家、空室の多くが減少していることが明らかになりました。戸建て住宅だけでなく、集合住宅の空室も対象としており、結果、すべての住宅種別で減少傾向を示しています。
土屋:人口減と言われている中、多摩市全体の空き家率5.3%から4.2%への減少で、20代から30代の若年層、若い人たちが中心に転入で増加しているという。今尾さん、いかがですか?
今尾さん:良いことじゃないですか。空き家問題は全国的に深刻なので。
土屋:なんで、「多摩市」で人口が増えたんですかね?
今尾さん:23区が、家がものすごく高過ぎて。中古のマンションでも1億円いきますからね。どうやってローンを組むんだっていう。
土屋:ほんとそうですね。ちなみに、今尾さんが住んでいらっしゃる「日野市」はいかがですか?
今尾さん:「日野市」のうちの周りはわりと区画整理している所なので、どんどん家が建っていますね。子供が増えているので。小学校も少ない時はだいたい2クラスくらいだったんですね。それが今、4クラスになっているので、相当増えている印象がありますね。
つる子:4クラスはたしかに増えてますね!
土屋:かたや、世田谷区は公立の小学校は減っていますからね。
つる子:あ、そうですか!
土屋:みんな私立に行っちゃうので。公立小学校は合併、合併で。
今尾さん:だから、2月1日はほとんど授業にならないんですよね。
土屋:そうなんです、受験生はいないんです。
今尾さん:東京の私立の受験日なので。
つる子:ああ、そうなんですね!
多摩ニュース②「地球の歩き方 調布市」発売!
土屋:さあ、もう一つ、いきましょう! 「多摩ニュース」!
つる子:旅の定番ブック、“地球の歩き方“から東京都内初となる市版、「地球の歩き方 調布市」が10月23日に発売されました。
土屋:すごいよね。メキシコとかカナダが出ているのに、「調布市」が出たんですよ!
今尾さん:“プロヴァンス”などは出ていましたけどね。コロナになってから海外版がだいぶ打撃を受けたみたいで。それで会社も変わったんですよね。
土屋:ああ、そういうことですか。それで「調布市版」が・・
今尾さん:「調布市」に先を越されましたね、「日野市」としてはね。
土屋:こんなこと言うのはなんですけど・・・「地球の歩き方 日野市」はいけますかね?
今尾さん:行けると思いますよ! 「調布市」で出来るんだから!
つる子:(笑)。
土屋:ちなみに、市民や「調布」にゆかりのある人々に、「地球の歩き方 調布市」の本の表紙をどうしようかと聞いたところ、1位は「深大寺」だったということで表紙は「深大寺」になったと。
つる子:おお、なるほど!
土屋:2位が「神代植物公園」。読みは一緒だけど漢字が違うんだよね。で、3位が、その他で「多摩川」、「味の素スタジアム」、「天神通り」など。「調布市」は、「水木しげる先生」が長年暮らしていたところでもあるからいいかもね。
つる子:はい。
土屋:こうなると、「地球の歩き方 調布市」が出たなら、多摩の他の地域でここなら行けるんじゃないかと思いますか?
今尾さん:「八王子市」は広いし、色々あるのでね。「高尾山」「陣馬山」もあるし、ニュータウンもあるし。
土屋:あと、「立川市」も行けるし。逆に、「武蔵野市」がどう出るかですよね。
今尾さん:そうですね、わりと狭いんでね。あとは、「国立市版」が出るかどうかですし。
土屋:ああ、それはいいかもしれない。今、今尾さんがおっしゃっていた通り、(「調布市」が出せるなら・・・)という(笑)。うちだって!と躍起になっているところもあるかもしれないですね。
今尾さん:そうですよ、「東村山市」だって出ますよ!
つる子:(笑)。
土屋:ここでお時間です! オレ、人となかなか旅行ができないけど、今尾さんとだったら旅行したい、色々と話しながら全国回りたい(笑)。結果、台本の半分も紹介できていない(笑)。今回ご紹介できませんでしたけど、PHP研究所から販売中の今尾さんの最新刊「ぶらり鉄道廃線跡を歩く」にいろんな廃線跡の魅力があります。2週に渡ってお話を伺いました、地図研究家の今尾恵介さんでした。ありがとうございました!
今尾さん:ありがとうございました。
(TBSラジオ『【公式】東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)