【コラム】佐渡金山世界遺産登録と小木・直江津航路 竜哲樹(元上越市議会議員、元産経新聞記者)
「佐渡島の金山」登録の最終結果はこの7月に
佐渡島金山の世界遺産登録の最終結果はインドで開催の7月下旬の世界遺産委員会に出されるものと思われる。
振り返れば、30年ほど前から世界遺産を目指す動きが始まり、地元佐渡市はもとより、新潟県もそして国も全力を挙げて取り組んで来た。6月初旬にユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)が「登録勧告」ではなく「情報照会勧告」にしたことに、一時関係者に動揺が走ったが、それでも島民はじめ関係者らは悲願達成に向けて準備に余念がない。先月22日には登録を目指す県民会議の総会も開かれ、結束を深めた。
佐渡金山を巡っては、韓国が朝鮮半島出身者の強制労働があったと訴えているが、外務省はじめ政府挙げて対応を図っており、何とか難関を突破して貰いたいものである。
ところで、佐渡も少子高齢化で、特に旅館はじめ観光業などを営む事業者にとっては厳しい状況が続き、世界遺産登録が大きな追い風となって、佐渡経済全体が盛り上がることに大きな期待を寄せている。
小木〜直江津航路も世界遺産登録に期待する
佐渡と本土を結ぶ航路は言うまでもなく新潟港と結ぶ両津航路と小木~直江津航路がある。メインは旅客数や荷量数ともに両津航路が圧倒的であることは承知している。
確かに現在、小木~直江津航路はカーフェリー1船体制であり、一日2往復に限られている。当然ながら旅客数や荷量数も両津航路に比べ格段少ない。佐渡島民全体から見ても小木港利用者が昔から少なく、小木周辺の島民の生活航路であるとともに、上越市や妙高市、糸魚川市の上越地域を中心とした佐渡観光旅行者の人達が大部分を占めていると思われる。
ただ、9年余り前に開業した北陸新幹線上越妙高駅や、本年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸したことで、関東・長野や北陸・関西からの観光客も増えつつあるのも事実だ。
今後、佐渡金山の世界遺産登録によって小木~直江津航路の往路・復路含めた乗降客の大幅増で、上越市を含む上越地域3市、隣の柏崎市、そして隣県の長野市なども一層観光客増に繋がっていくことを大いに期待したい。
チャンス生かすための地元が努力する観点は
世界遺産登録はもちろん佐渡金山の産業遺構としての価値を国際的に認められたことを内外にアピール出来、世界から多くの歴史関係者はじめ観光客なども訪れて戴ける大きなチャンスであることは言うまでもない。
そこでも求められるのは、佐渡金山そのものの価値だけでなく、佐渡全土において多くの観光客らを迎え入れるための受入れ体制を磨き上げなければならないだろう。交通アクセスなどは無論のこと、何よりも旅館・ホテルなどの魅力ある宿泊環境や食、芸術文化も求められる。
素人である私が偉そうに言える資格はないが、ありのままの佐渡を堪能してもらうにしても、島民や事業者の皆さんのおもてなしの意識改革が必要になって来るに違いない。
そのことは小木~直江津航路の直江津港側の上越市にも同じように、おもてなしの体制が求められる。今上越市は通年観光に力を入れ、集中的に春日山・直江津・高田の3か所を舞台に観光施策を進めようとしている。
いずれにせよ、佐渡金山の世界遺産登録は関係地域に大きなインパクトをもたらすものであり、同時に、この大きなチャンスを生かすための地元の努力が求められている。
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。