「西遊記」に登場する三蔵法師は架空の人物ではない!三蔵法師の仕事とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 仏教】
翻訳が下手だった?三蔵法師玄奘のこだわりとは?
『西遊記』を題材としたマンガやアニメにも登場するので、三蔵法師玄奘のことを架空の人物だと思っている人も少なくないようだ。しかし、れっきとした実在の人物である。602年に今の河南省洛陽に生まれ、11歳で仏門に入った。仏教を原典で学びたいと欲して、629年に国禁を犯してインドへ出立。ナーランダー(インド北東部にあった仏教大学)などで学び、657部
の仏典を携えて645年に帰国した。『西遊記』は、玄奘の求法の旅をもとに作られた伝奇物語なのだ。帰国後の玄奘は持ち帰った経典の翻訳にとりかかった。
玄奘の翻訳の特徴は原典に忠実なことで、訳語の統一も徹底していた。また、すでに普及している訳語であったとしても、不適切と思われるものは新しい訳語に変えた。観世音菩薩を観自在菩薩としたのは、その一例だ。
『般若心経』もこうして訳された経典の1つだが、『般若心経』以外の翻訳は、庶民にはあまりうけなかったようだ。翻訳
の正確さにこだわったせいで語呂がよくなく、音読に向かなかったからだ。『法華経』などは西域出身の鳩摩羅什の訳のほうが好まれ、日本でも羅什訳が普及している。