多摩市・旧多摩聖蹟記念館 建築の観点から評価 日本のモダニズムの先駆け
贈呈式を実施
多摩市にある旧多摩聖蹟記念館がDOCOMOMOJapanによる「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれたとして先ごろ、選定プレートの贈呈式が開かれた。昭和初期に建てられた歴史ある建造物が、建築の観点から高く評価された。
同記念館は2022年6月に、2021年度の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定された。特徴的な楕円平面の近代建築は事例が少なく、日本のモダニズムの導入過程を評価するうえで価値のある作品であると考えられるというのが、主な選定理由だという。
選定された当時はコロナ禍だったためプレートの贈呈は先延ばしになっていたが、東京文化財ウィークに合わせて贈呈式を行うことになった。式には阿部裕行・多摩市長や一般社団法人DOCOMOMOJapan事務局長の玄田悠大さんらが出席した。玄田さんから阿部市長にプレートが手渡され、現在は同記念館内に展示してある。
プレートを受け取った阿部市長は「多摩市ではこの貴重な文化財を適切に維持、活用していくため、皆さんとともに取り組みを進めていきたい。今後も旧多摩聖蹟記念館ではいただいたプレートにふさわしい姿を保存していきたい」とあいさつし、協力を呼びかけた。
東京タワーなど選定
同法人はモダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織DOCOMOMOの日本支部。これまでに認定された国内の近代建造物は、国立西洋美術館や国立劇場、霞が関ビル、東京タワー、日本武道館などがある。
モダン・ムーブメントは、20世紀の建築の主要な潮流のひとつで、機能性を重視し、装飾を用いず線と面による構成が特長だという。
市の文化財に
同記念館(旧称:多摩聖蹟記念館)は、多摩市の都立桜ヶ丘公園内にある。1930(昭和5)年6月26日に竣工した。明治天皇や皇族の連光寺行幸、行啓を記念して、明治政府の宮内大臣だった田中光顕らにより建てられたもので、大正・昭和時代に国内で活躍した建築家の関根要太郎と蔵田周忠が同記念館の設計に携わった。この設計者の二人がかかわった作品で現存するものは、唯一この作品のみだということも選定された理由だ。
1986年に管理団体から市が寄贈を受けた後、市の指定有形文化財に指定、2002年には東京都の「特に景観上重要な歴史的建造物等」にも選定されている。建物内には明治天皇騎馬像が展示されているほか、ギャラリーや喫茶サロンなどがある。