【屋上のある家のメリット・デメリット12選】後悔しない建て方のポイントを解説
屋上のある家を建てて家族団らんのひと時を過ごしたい、屋上の庭で趣味を楽しみたいと考える人は多いでしょう。しかし屋上をつくるための費用やデメリットが気になるところです。
屋上のある家にはさまざまなメリットがある一方、一般的な住宅とは異なる建築上の注意点もたくさんあります。
今回は、屋上のある家の魅力とともに、後悔しない建て方のポイントについて解説します。
屋上のある家とは?
屋上とは、住宅やビルの屋根にあたる部分を平らにつくり、人が出入りして活用できるようにした場所のことです。屋上のある家は、そのつくりによって主に3つの種類があります。
居室の上に設置するタイプ
屋上のある家でも最上階の居室の上を全面屋上にするタイプは、開放的で広々とした屋外空間を楽しめるのが魅力です。ペントハウスをつくって室内から出入りするタイプと、屋外に階段をつくるタイプがあります。
ペントハウスとは、屋上への階段室やエレベーターの機械室として利用するためにつくられた「塔屋」のことです。建築基準法の特例により、建築面積の8分の1までの広さかつ高さ5m以下のペントハウスであれば、建物の高さや階数として数えられません。そのため、一般的には特例の範囲内でつくられます。
居室と隣接して設置するタイプ
最上階の居室と隣接して設置するタイプは、屋上テラスやルーフバルコニーとも呼ばれます。居室とのつながりを持たせれば、セカンドリビングやアウトドアリビングとして活用可能です。
屋根の一部が屋上になるタイプ
建築法上の高さの制限によって、屋根の全面を屋上にできない場合があります。屋根の一部を屋上にして塔屋から出入りするタイプであれば、屋根の大部分に太陽光パネルを設置したいときも屋上をつくることが可能です。
屋上のある家のメリット
眺めを楽しめる
屋上のある家は、ロケーションによって海や美しい街並み、夜景などの眺望を屋上から楽しめます。地域によっては場所取りをせずにゆったり屋上から花火を楽しんだり、天体観測をすることもできるでしょう。
ただし、せっかくの景観を遮らないよう、安全に配慮しつつ、フェンスの高さや素材に工夫が必要です。
土地が狭くても庭を持てる
利便性の高い人気のエリアでは、予算内で庭つきの家を建てることができても、狭かったり通りに面していて人目が気になったりするというケースがあります。
そのような場合、土地購入に予算をかけず、屋上に予算を回して屋上のある家をつくると、敷地が狭くても開放的でくつろげる庭をつくることができます。
物干し場として使える
屋上を物干し場として活用し、気軽に外干しできる空間もつくることが可能です。サンルームを設ける必要がないため水回りスペースを節約できることもメリットでしょう。
家族や友人が集う憩いのスペース
屋上に屋外用のテーブルや椅子を置けば、家族や友人とくつろぐセカンドリビングやアウトドアリビングとして活用できます。屋上のある家であれば、道路に面していても人の視線や車を気にすることなく、家族や友人とのBBQやホームパーティーを楽しめるでしょう。
リゾート気分を楽しみたい人はジャグジー、屋外で映画鑑賞を楽しみたい人はスクリーンを設置するなど、目的に応じてさまざまな使い方ができます。
洗濯物を干せる
屋上のある家であれば、晴れた日にたくさんの洗濯物を干せます。日当たりや風通しがいいため、乾きの速さも抜群です。
シーツやラグなど大きな洗濯物のほか、家族分の掛け布団や敷き布団も一度に干せるためとても便利。また、通行人の目線を気にせずに干せるのも外干し派にはうれしいポイントです。
アウトドアリビングとして楽しめる
敷地が狭く庭が持てない場合も、屋上があれば家庭菜園やガーデニングなど、庭で行う趣味の数々を楽しめます。テントを張って野外で炊飯すれば、自宅にいながらキャンプ気分を味わうこともできるでしょう。
屋上のある家であれば、通行人の視線を気にせず、思い切り子どもやペットを遊ばせられるほか、道路への飛び出しの心配も不要です。近隣で犬と遊べる場所や施設が少ない場合は、ドッグランを設置すれば、ペットの運動不足解消につながるでしょう。
屋上のある家のデメリット
雨水が溜まりやすい
屋上をつくる場合、屋根は平らな陸屋根にする必要があります。陸屋根は雨や雪など水が溜まりやすい点が大きなデメリットです。雨水が室内に浸入すると雨漏りの原因となり、湿気によって家全体の劣化が進みます。
そのため屋上から雨水が浸入しないよう、防水工事が必須です。これから屋上のある家を建てるなら、台風や近年のゲリラ豪雨にも耐えられるよう、防水工事を徹底する必要があります。
下の階が暑くなる
陸屋根は、切妻屋根と比べると屋根裏スペースを十分にとれないため、階下の居室は屋上に当たる直射日光の影響を受けやすくなります。
さらに断熱対策が甘いと夏場は特に居室の室温が上昇し、冷房効率も悪くなるでしょう。断熱対策や遮熱対策を万全に行うとともに、屋上緑化によって建物の温度上昇を防ぐなど、屋上のある家ならではの工夫が必要です。
こまめな掃除が必要
屋上のある家は、屋根から雨水を集めて地面に流す樋(とい)や配管に落ち葉や砂ぼこりなどが詰まると、雨水がうまく排水されず、溜まりやすくなります。樋や配管の詰まりをそのままにすると雨の日に困るだけではなく、湿気によるカビやコケの発生や、家屋そのものの劣化につながります。
排水溝周りは普段からこまめに掃除し、定期的に床や壁面などをデッキブラシで掃除するなど、日常的なお手入れが必要です。
建築コストが高い
屋上のある家は建築コストが一般の住宅よりも高くなるといわれています。屋上をつくる際に屋上に出るための階段やペントハウスを設置するほか、落下防止対策のための手すりやフェンスの設置も必要であるためです。
また屋上の目的や設置するものによっては、家全体にかかる荷重が大きくなるため、より強く丈夫な構造にするための部材や設計が必要となります。ほかにも雨水が溜まりやすいため、構造に適した防水加工を施すコストもかかるでしょう。
これらの理由から屋上のある家の建築コストは、一般的な住宅より高くなる傾向があります。
点検やメンテナンスのコストや手間がかかる
屋上をつくるときは防水工事が必須になりますが、そのほか定期的な点検やメンテナンスも必要です。一般的に、屋上補修の目安は10数年に一度とされています。
定期点検のほか、想定外の大雨や災害により、補修が必要になる可能性もあります。落下防止のための手すりやフェンスも、日光や風雨にさらされた状態では劣化が進むため、こまめな点検が必要です。
近所からクレームがくることも
屋上のある家では、たとえばバーベキューなどのレジャーを楽しんだ場合に煙が隣家に届き、クレームがくるというケースも考えられます。屋上に高い壁を設置するなどといった対策が必要でしょう。
屋上をだんだん使わなくなった
せっかくコストをかけて屋上をつくっても、使ったのは最初だけで、だんだん使わなくなったという人もいます。使わなくなった理由のうち、代表的なものをいくつかご紹介します。
1つ目は、屋上の使用目的や活用イメージを明確にできていなかったということです。
2つ目は、屋上への動線の計画が甘かったということ。洗濯機から屋上までの動線が悪く、年々洗濯物を干すのがつらくなったという人もいます。また、キッチンと屋上が離れており、BBQやパーティーの準備や片づけが面倒になったというケースもあります。
3つ目は、思ったよりもプライバシーが確保できなくなったということ。屋上のある家を建てた後に、さらに高い建物が近隣に建てられる可能性もあります。
屋上のある家はどんな家でも建てられる?
開放感を味わえる屋上のある家ですが、どんな家でも建てられるのでしょうか。実は屋上のある家を建てるにはいくつかの規制もあります。確認していきましょう。
第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域は高さ制限が
戸建て住宅を中心とした「第一種低層住居専用地域」と「第二種低層住居専用地域」に屋上のある家を建てる場合、高さは10~12mまでという制限があります。
屋上のある家を建てる際はどの地域に建てるのかも考えながら家づくりを進めましょう。
屋上のある家を建てるときに押さえておきたいポイント
屋上への動線を工夫する
屋上への動線が使いやすいように考慮されていないと、屋上を使う頻度も減ってしまいます。屋上へ行くには寝室や子供部屋などを通らなければいけない動線にした場合、洗濯物やバーベキューの道具を運ぶ際になかなか運びにくく、使い勝手の悪い屋上になってしまいます。
屋上への動線についても考慮しながら家づくりを進めましょう。
屋上の目的を明確に
「おしゃれだから」「なんとなく」といった理由で屋上を建てると、使わなくなる可能性が高いです。屋上の使用目的や頻度、活用イメージを明確にして建築や補修にかかるコストに見合うかどうかをよく検討しましょう。
また、目的に合う間取りや動線を確保して計画することもポイントです。たとえば目的が洗濯物を干すことなら、洗濯機から屋上への動線がスムーズになるよう配慮するなど、間取り設計の工夫が必要です。
屋上の設置実績のある施工会社を選ぶ
屋上はそもそも雨漏りや雨漏りによる劣化を起こしやすい形状であるため、雨漏りしない屋上を設置できる施工会社を選びましょう。
タマホームの「グリーンエコの家」など、屋上を標準装備し、防水加工技術に定評のあるモデルを持つハウスメーカーもあります。
工務店であれば屋上のある家を建てた実績や防水補修の実績があるか、アフターメンテナンスの体制は万全かどうかなどをチェックし、慎重に選びましょう。最近では、都市圏の広がりにともない、東京や神奈川、愛知や大阪以外でも、屋上設置実績のある工務店が増えています。
防水対策
屋上の防水対策は、FRP防水と金属防水工法の2種類が主流です。FRP防水とは、床の上に敷いたFRPのシートの上に樹脂を塗って硬化させる方法で、軽くて強度が高いのが特徴。ただし、地震などの揺れでひびが入ると、メンテナンスの手間と費用がかかります。
金属防水工法はガルバリウムなどの金属鋼板を被せる工法で、ジョイント部分から入り込んだ水は排水路によって排水されます。軽くて耐久性も高く、耐震性にも優れているのが特徴です。
ハウスメーカーや工務店と相談し、建てる屋上の種類や施工方法、予算に応じて適切な防水方法を選びましょう。
また、地域の気候によっては、ゲリラ豪雨や積雪への対応も視野に入れて、防水対策を行いましょう。
落下防止対策
屋上のある家では、人やペットが落下しないための対策として、適切な高さと強度のある手すりやフェンスの設置が必要です。
あわせて手すりやフェンスが劣化して落下するのを防ぐことも大切です。劣化した手すりやフェンスの部材が庭や隣家、道路に落下すると、大きな事故につながりかねないためです。
屋上のある家を建てる時には、強度があり劣化しにくい素材の手すりやフェンスを選ぶとともに、安全確保のためにこまめに傷んでいないか点検しましょう。
必要な点検やメンテナンスについて把握しておく
屋上のある家を楽しむこととメンテナンスはセットと捉え、必要な点検や補修について事前にハウスメーカーや工務店に尋ねて把握しておきましょう。
点検やメンテナンスの費用は必要経費と考えて積み立てておけば、補修の時期が訪れたときにあわてずに対応できます。
プライバシーの確保
屋上の立ち上がりやフェンスが低いと眺望を楽しみやすいですが、周囲からもよく見えるため、プライバシーが確保しにくくなる可能性があります。
屋上のプライバシーを確保するためには、近隣や周辺の状況に応じて、周囲からの目線を遮るための高いフェンスやラティスが必要です。
また、建てた後に周辺に高層マンションなどが建つ可能性もあります。エリア情報に詳しいハウスメーカーや工務店に事前に見通しを尋ねるなど、リサーチを入念に行いましょう。
まとめ:屋上のある家は、建てた後のことをイメージして計画しよう!
今回は、憧れる人が多い屋上のある家について、メリットやデメリット、後悔しない建て方のポイントもご紹介しました。
屋上のある家は、使用目的が明確な人にとってはメリットがたくさんある一方、屋雨漏りをはじめさまざまなリスクもあります。屋上のある家を建てる際は、防水対策や落下対策、アフターメンテナンスがとても重要です。屋上の使用目的を明確にするとともに、建てた後の使い方やメンテナンスのこともよく考えて、理想的な屋上のある家を計画していきましょう。