小谷実可子さん『より多くの人に気付いてほしい!スポーツの醍醐味』
昼から夜へと生まれ変わる夕暮れのひと時……Magic Hour。そして、海と緑に囲まれた癒しのリゾートホテルの優雅なリラックス空間で、素敵な景色と音楽を楽しみながら、幅広いジャンルのお客様を迎え、さまざまな話題でトークする番組です。
今月のゲストは、アーティスティックスイミング選手の小谷実可子さん。
最上階10階にある 『エグゼクティブ オーシャンビュー テラス スイート 1007号室』で
東京湾を眺めながら、お話伺います。
今週は小谷さんをさらに掘り下げていきます!まずは小谷さんと競技の出会いのお話から、、、
シンクロスタートのきかっけとは?
小谷さんがシンクロナイズドスイミング…現在アーティスティックスイミングと呼ばれる競技を始めたのは、小学生の時。健康のために通っていた水泳教室の先生がすすめてくれたことがきっかけでした。
小谷:実は先生の旦那様が、元々日本にシンクロを取り入れた方だったんです。
要・近藤:へえ…!
要:その頃はもちろんシンクロはそんなに知らなかったですよね…?
小谷:知らなかったです!ご主人様がシンクロ日本に取り入れた方だったということもあってその水泳教室は音楽に合わせて平泳ぎをしたりとか、リズム水泳をやっていたんですね。
要:なるほど!
小谷:その泳ぎっぷりをみて、勧められて。当時は聞いたこともないですから、本当に見よう見まねだったんですけど…元々お歌を歌ったり、逆さまになったり、回ったりが、好きな子供だったので、結構とんとん拍子に色々な技ができるようになりまして。
小谷さん、なんと初めて出た大会で優勝!当時、小谷さんと同じように同じ水泳教室の中で何人かシンクロを勧められた人がいたそうで、ソロ・デュエット・チームもやっていたそう!
近藤:最初、何に魅せられました?
小谷:みんなが上手上手って言ってくれて。いきなり大会で優勝したり…色々な人が期待の声をかけてくださったんです。それがうれしくて、私そんなに才能あるのかな~って(笑)
要・近藤:(笑)
小谷:だから、子どもの頃から、将来日本チャンピオンなるのが当たり前だ!という思いがあって、選手を続けていました。途中挫折とか、向いてないかも!と思うこともあったんですけど…結果としてオリンピックまでたどりつくことができたので、良い出会いだったなって。
より多くの人に気付いてほしい!スポーツの醍醐味
25歳で引退するまで、オリンピックも含め多くの大会に出場された小谷さん。
中でも忘れられない試合は、89年スイスオープンで演技をした『カルメン』。
前年88年のソウルオリンピックでメダルを獲得したことで、自分の目標は達成できたということで、当時は『より多くの人に感動を与えられる演技がしたい』という境地に辿り着いていたということ。
小谷:泳ぐ前から、観客の皆さんのエネルギーが自分に吸い込まれていくのがわかって。なんだろこのエネルギーと思いながら飛び込んだ途端に身体と水の境界線が無くなっているような、、、
近藤:一体化するってことですか??
要:そんなアクアマンみたいな…!
小谷・近藤:あははははは(笑)
小谷:普通は筋力を使うので、筋肉が疲労しますし、息を止めているので苦しいんですけど…。そういう感覚が全く無くて。とにかく水と一体化して演技していることが幸せで仕方ない!というような。周りもキラキラして見えて。私がここで生きて、大好きなシンクロをできていることが、なんて幸せなんだろう!と思って。
要・近藤:へえ、、、!
小谷:生まれたことに感謝しないと、ありがとうー!と思って演技を終えてポーズをとったら、満点の10点がワーッと並んで。初めて金メダルをとったという。
この勝つためだけではなく、ただそこに存在できていることが幸せという感覚を味わったことで、小谷さんは選手をしている間ずっと『あの時のような演技をもう一度やりたい!』という方向に意識が変わったといいます。
また小谷さんTBS「世界陸上」フィールドリポーターをつとめていらっしゃいました。
そこには、こんな思いが…
小谷:ゾーンとか、勝ち負けじゃないそういう特別な感覚を経験したので、世界中のいろんなアスリートに、そういう経験があるかどうかを聞いてみたくて、、、
要:うんうん
小谷:400mの世界記録を出した、マイケル・ジョンソン。彼は『自分で走っているんじゃなくて、もう台車の上に乗っかって滑っている感覚で、ゴールしても延々と走っていられそうな感覚だった』って。
要:どこまでも走れる感覚ね…!
小谷:同じことをおっしゃってました!
要:わかる…!僕は、学生時代陸上をやっていた時、全然弱い選手でしたが、、、
小谷:スポーツの醍醐味って、オリンピックはもちろん世界中の選手が目指す最高峰であってほしいと思ってお手伝いしているんですけども…。そこで勝つ人だけが輝くんじゃなくて、、、国内の大会でも、小学校の運動会でも、その人のその限界に挑戦してそれを超える瞬間。私は、心が体の限界を超える時だと思ってるんですけど。
要:はい
小谷:そういう時に、ゾーンといいますか、何かこうどこまででもいけそうな、何か幸せだったりに、出会うのかなって。そういうのを経験したあとって『ありがとー!』って気持ちになりませんか?
要:なります!なんだか、決して自分の力じゃない気がしますよねあの瞬間ってね。
小谷:そういうものに、より多くの人に気が付いてほしいなと思って
AS人生を豊かにしてくれた人物の存在
小谷さんのもう一つの忘れられない試合は、今年2月に開催された世界マスターズ水泳選手権(ドーハ)。アーティスティックスイミングの男女混合デュエットに安部篤史さんとペアを組み出場しました。
小谷:オペラ座の怪人の演技を男女ならでは表現でしたいと思って、すごくこだわって振付を考えて。本当に色んな発見や気付き・喜びをパートナーの安部篤史さんからいただいたんですけども。その結果として、金メダルを獲ることができてうれしかったんですが、世界選手権やエリート大会でジャッジしている方から『素晴らしい演技だった、我々のスポーツに芸術性を再びもたらしてくれてありがとう。』という言葉をいただいて、、
要・近藤:わあ…!
近藤:なんだかメダル以上のなにか、、、やってよかった!ってなりますね…!
要:すばらしい言葉ですね…!
小谷:なんだか、ただ自分の喜びのためにやるんではなくて、ちょっとでも競技のプラスになれた!と。自分の新たなやりがいと言いますか、次の目標というのがそこで確固たるものになったような。非常にうれしい瞬間でした。
要:まさにアーティスティックスイミングになったわけですね!
小谷さんが一緒にペアを組んだ安部篤史さんは、高校時代まで水泳をなさっており、その後大学からショーでシンクロに携わり、2015年から競技シンクロを本格的にはじめたそう。
また競技をスタートする前に、ウォーターボーイズにも抜擢され、俳優・演技にも挑戦していらっしゃいます。
競技に取り組んでいる男の子たちには、安部さんに憧れて競技をスタートした子もいるとか!小谷さんにとって、安部さんは人生に影響を与えた人です。
小谷:数少ない日本の男性ASスイマーとして、本当に一人で頑張って。日本選手権なんて、男性の更衣室もない中、一人トイレで着替えて、自分の順番を待って…というような苦労を誰に文句を言わずにやり続けてくれていたおかげで、日本のミックスデュエットのメダリストとなって、、、。
要:へえ
小谷:あと安部篤史さんは、競技を支えるために、テクニカルコントローラーと言って、試合の演技が申告通りになっているかどうかを見極める技術者になっているんですけども、本当に寝ずに世界の研修を受けて後輩たちに伝えていて、、、
要:うんうん
小谷:私はパリオリンピックから男性もオリンピックに出られることになったので、ジェンダーレスのスポーツになったっていうことを発信したくて。今年の世界マスターズでミックスデュエットを泳げば、多くの人にわかってもらえるかなと思って、是非安部さんをと誘いました。
安部さんと泳ぐ、男性と泳ぐということで、本当にたくさんの発見があったということ。
小谷さんのAS人生を豊かにしてくれた人ということで、一番最初に名前をあげたいとおっしゃっていました。
(TBSラジオ『要 潤のMagic Hour』より抜粋)