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日本の魚醤<いしる>とタイの魚醤<ナンプラー>の違いとは 魚料理に合うのはどっち?

サカナト

いしるとナンプラー(提供:井村詩織)

日本三大朝市として有名な石川県輪島市の「輪島朝市」。

2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響を受け、現在は市内の商業施設内で営業しているほか、「出張輪島朝市」として全国各地のイベントなどに出店しています。

筆者は今年8月、商業施設で営業中の輪島朝市で「いかいしる(いかのいしる)」を購入しました。

販売していた加工海産物店の店主に「いしる」とはどんな調味料か聞くと、「イカの内臓を原料にした魚醤だよ」と教えてくれました。

「魚醤」と聞いて、筆者がすぐに思い浮かんだのはタイ料理などに使用される「ナンプラー」。でも、ナンプラーと似た調味料なのかというと、どうやら違うらしいのです。

実際に食べ比べをして、違いを追求してみました。

日本の「いしる」とタイの「ナンプラー」の違い

日本の「いしる」とタイの「ナンプラー」の原材料を比べてみました。

日本の「いかのいしる」

「いしる」とは、「いしり」とも呼ばれる日本の「能登地方に伝わる魚醤」のこと。筆者が輪島市で買った商品の原材料名の部分を見ると、イカの内臓と塩が使われていることが分かります。

いかのいしる(提供:井村詩織)

ちなみに、今回購入したのは「いかのいしる」ですが、店頭にはイワシが原材料の「いわしのいしる」もありました。

タイの「ナンプラー」

一方の「ナンプラー」は、タイで作られている魚醤のこと。

多くのアミノ酸を含んでいるのが特徴で、原材料にはイワシ、食塩、砂糖、果糖が含まれており、いしると比べて甘さがあることが予想できます。

ナンプラーの原材料(提供:井村詩織)

「いしる」と「ナンプラー」を実際に食べ比べてみた

まず、いしるとナンプラーをそれぞれお皿に出してみました。

色の違いを比べてみると、いしるは濃い茶色で、ナンプラーはかなり薄い茶色であることが分かります。

いしる(左)とナンプラー(右)(提供:井村詩織)

皿を傾けて粘度を比べてみると、こちらもかなり違いがありました。

ナンプラーはサラサラとしたあっさりした液質なのに比べ、いしるはドロドロしたしっかりした液質をしています。

左がいしるで右がナンプラー(提供:井村詩織)

いしるとナンプラーの風味の違いは?

実際に食べ比べてみると、驚くほど風味に違いがありました。

まず、ナンプラーの香りはかなり生臭いのが特徴。その分、ちょっと舐めるだけでも、魚の濃厚な旨味が感じられます。筆者としては、加熱せずに単体で味わうのにはかなり無理がありそうだと思いました。

次にいしるですが、香りはナンプラーに比べて控えめで、舐めてみると濃厚ながらも口当たりが良いのが特徴だと分かりました。少しの分量でも、しっかりした塩味が感じられます。

いしるとナンプラーは料理でどう使い分ける?

ナンプラーといしるを使って、タイの料理「ガパオライス」を作ってみました。

実際に作ってみると、色の違いはあまりありませんが、味はかなり異なります。ナンプラーを使ったほうは甘じょっぱくて、ガパオライスにピッタリです。

いしるとナンプラーのガパオライス(右はナンプラー、左はいしるで味付け)(提供:井村詩織)

いしるを使ったほうもしっかり風味があって美味しいのですが、何か物足りなさを感じました。

鍋にナンプラーを入れると違和感あり

逆に、水にいしるを加えて出汁にし、魚介類を入れて作る「いしる鍋」のような料理で、いしるの代わりにナンプラーを使うと違和感がありました。

ナンプラーは鶏肉などを使った肉料理いしるは魚介を使った料理に合うのかもしれません。

いしるとナンプラーは違う個性を持つ調味料

いしるとナンプラーはどちらも「魚醤」ですが、味わいはそれぞれ異なることが分かりました。

使う料理によって適切に使い分けることが必要です。それぞれの個性を知って、活かして、日々の料理に役立ててみてくださいね。

(サカナトライター:井村詩織)

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