【ガチ検証】昭和プロレス全盛期の「老害プロレスファン」が今のプロレスを観に行ったらこうだった
自分で言うのは気が引けるが、おそらく私(サンジュン)は「老害プロレスファン」なのだろう。今でもプロレスが好きではある一方で「今のプロレスが好きか?」と言われたら、素直に頷けない自分がいる。
そんな老害プロレスファンが「今のプロレス」を観に行ったらどんな感情を抱くのだろうか? それを確かめるべく同じく老害プロレスファンである当サイトのGO羽鳥と2人で、聖地「後楽園ホール」へと足を運んだ。
・プロレス歴
私がプロレスにドハマりしていたのは、小学校高学年から高校を出てちょいくらいまで。プロレス的なトピックで言うと「G-1クライマックス」の初開催から格闘ブーム到来でプロレス暗黒期が始まるくらいまでの間である。
当時、私は新日本プロレスが「キング・オブ・スポーツ」であることを疑ったことはなく、長州力こそが世界最強であると心の底から信じていた。10.9東京ドームの2階席から、のどが破けるほどの「長州コール」をしていたのは誰あろう私だ。
まあ、厳密にいうと「昭和プロレス」ではなく「平成プロレス」なのだが「平成プロレス」だとややニュアンスが違ってくるのがプロレスファンの繊細なところ。この記事では「昭和プロレス」で統一させていただく。
・後楽園ホールへ
さて、そんな私が最後に自分でチケットを買って行った興行は、安田が大金星を挙げた「INOKI BOM-BA-YE 2001」くらいまでさかのぼるだろうか? タダ券をもらえば観に行くことはあるが、週刊プロレスも20年以上購入していない。
かつて全女 & インディー好きであったGO羽鳥も同じようなもので「最近のプロレスはほとんどわからない」とのこと。そんな2人が選んだのは11.10 後楽園ホールで開催された「プロレスリングZERO1」の大会だ。
この大会を選んだ理由は特になく「後楽園ホールでいいタイミングでやっていたから」程度。ただ田中将斗は当然知っているし、GO羽鳥はくどめGMの大ファン。ハヤブサもSNS等で復活したことは知っていた。
・新生ZERO1
久しぶりに足を運ぶ後楽園ホール。後楽園ホールといえば「夢☆勝ちます」を連想してしまう老害プロレスファンは、果たして今のプロレスを楽しむことが出来たのだろうか?
~結論~
「結構できた!」
まずは何と言っても素晴らしかったのが「ハヤブサ vs 清宮海斗」のメインイベント! この日は「ZERO1 vs NOAH」の対抗戦が3試合行われており、ノアの清宮選手はオカダ・カズチカの顔面を蹴り上げたことで存じていた。
両者ともに卓越した運動神経の持ち主で、特に清宮選手からは「絶対に負けねえ」という気持ちがビシバシ伝わって来た。技の攻防やカウント2.999の応酬もそうだが、最も気持ちが見えたのがメインイベントだ。
またハヤブサは噂にたがわぬいい選手で、周りが2代目ハヤブサにしたくなる気持ちも良くわかる。先代が偉大過ぎるがゆえ不安も無くはないが、本人が納得するまで目一杯ハヤブサを続けて欲しい。
・感情移入できた試合も
気持ちという意味でセミファイナルの「田中将斗 vs 小峠篤司」も、ノアの小峠選手がかましたゴツゴツした頭突きから、泥臭い気持ちが垣間見えてきた。どれだけ技が素晴らしくても、素の気持ちが見えてこなければ胸には響かない。
当然、田中将斗の安定感はさすがの一言で、今なお第一線で戦っていることだけのことはある。小峠選手の気持ちを引き出せたのも、相手が他ならぬ田中将斗だったからだろう。
その他、ノアの「モハメド ヨネ」も安定感があり、老獪に観客をコントロールしていた。前座に目を向けると女子プロレスラーの真白優希選手は感情が出やすいため、磨けば光る素材なのかもしれない。
それより何より……
我々のハートを鷲掴みにしたのが……
黒潮TOKYOジャパンである!!!!!!!!!
・黒潮ショック
以前のリングネームが「イケメン二郎」であることは知っていたが、黒潮TOKYOジャパンがどんな選手なのかは知らなかった。確か引退する間際の武藤敬司が彼のことを褒めていたような……?
が、入場曲の福山雅治『HELLO』がかかった瞬間、会場の空気が一変! 序盤はやや引き気味に見ていたのだが……
全ッ然リングインしねえ!
後から知ったことだが黒潮TOKYOジャパンは「世界一入場が長い選手」として有名だそう。後楽園ホールを縦横無尽に動き回る黒潮TOKYOジャパンの一挙手一投足に、気付けば目が離せなくなっていた。というか……
まだ入らないんかいッ!
まさかまさかと思ったが、なんと『HELLO』が終わってしまった……と同時に黒潮TOKYOジャパンも控室に帰ってしまった……え? 我々が戸惑う中、会場は大「アンコール」コール! そして……
もう1回黒潮TOKYOジャパンキターーーー!
今度こそ素直にリングインするかと思いきや、またもなかなかリングインしない黒潮TOKYOジャパン。最後の最後は黒潮TOKYOジャパンのつま先がリングに触れるか触れないかまでガン見してしまったことを報告しておく。
・黒潮コントロール
試合自体がややお笑い担当的な位置づけではあったが、いずれガチな黒潮TOKYOジャパンを「ちゃんと1度観てみたい」と素直に思った。そうか、トレーナーはTAJIRIなのか。そりゃプロレスも上手いよな。
気持ちが見えた清宮選手やハヤブサも素晴らしかったが、この日最も観客をコントロールしていたのは、紛れもなく黒潮TOKYOジャパン。いずれバッチリなタイミングで「イケメン」コールをしてみたい。
・胸アツ
最後にもう1つ、私が感動したのはこの日の興行がほぼほぼ満員だったこと。若い人もいたしおっさんたちも多かったが、彼らこそ私がプロレスが遠ざかっていた間、プロレス文化を育んできてくれた立役者である。
正直、私もこの日の興行の全てに満足したワケではない。そもそも私はレスラーが手拍子を煽るのも嫌いだし、試合中に話すのももってのほか。乱発される「パチン」に興ざめしてしまったことも確かだ。
だがしかし、過去のプロレスを知りながらもそれらを受け入れ「今のプロレス」を全力で応援しているファンは、なんとありがたい存在だろうか?
プロレスから遠ざかっていた後ろめたさはあるものの、あの会場にいた全ての観客はもちろん、今この瞬間、会場にいるプロレスファンたちに心の底から「ありがとう」と言いたくなった次第だ。
結果的に老害プロレスファンでも「会場に行けば新たな発見があるし、プロレスを楽しむことができる」というのが、今回のファイナルアンサー。ひとまず黒潮TOKYOジャパンを観にどこかの大会に行ってきます。
・行けばわかるさ
最後の最後に、もしこの記事をご覧いただいた読者の方の中で、我々と同じく「しばらくプロレス観戦してないな~」という方がいたら、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがだろうか?
当時の我々はプロレスから大きなエネルギーを得ていた。それは我々より古いプロレスファンたちが、プロレス文化を守ってくれたから。そして今は我々が次世代にプロレス文化を紡ぐ番である。
……と、超久しぶり1回会場に行っただけなのに超エラそうであるが、私は自分自身にそう言い聞かせた。でもパチンの乱発はやめてくれよな。アンダーテイカーもパチンには怒ってるらしいよ!
取材協力:プロレスリングZERO1(当日申請であったにもかかわらず、快く画像を使わせていただきありがとうございます!)
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.