梅干し研究にゴールなし! 本田明子さんが語る梅仕事の魅力
「きょうの料理」6月号の特集は、梅干しやらっきょう、新しょうがの保存食を紹介する「本田明子の初夏の手仕事」。なかでも本田さんが長年研究を重ねた梅干しのレシピは、家族や友人から大好評なのだそうです。本記事では、手仕事の楽しさに満ちた本田さんの梅干し研究の様子を伝えます。
『きょうの料理』2025年6月号より
本田明子さん
小林カツ代さんに弟子入りし、助手を務めながらその味と技を学ぶ。「簡単だけど手を抜かない」精神を受け継ぎ、おおらかに、かつおいしくつくるコツを伝え続けている。
梅干し研究にゴールなし!
和歌山から、埼玉から、山梨から――毎年初夏になると、農家さんやお庭の木になったという知人から梅がわが家に届きます。見た目も香りもさまざまな梅ちゃんたちを前に、さて今年はどうしたものかとしばし腕組み……私の「夏の梅干し自由研究」の始まりです。
塩や漬け加減によって、仕上がりの味だけでなく食感も変わるのが梅干しのおもしろいところ。ある年、昔ながらの塩分20%で漬けてみたら、しょっぱすぎるかと思いきや、塩けの中に果実の香りが際立って意外とフルーティー! 塩も日本のものから海外のものまで、いろいろ漬け分けて味の違いを探りたくなります。どこの塩がいちばんという答えはまだ出ていませんが、食べ比べると何となく違いがわかるのが楽しいです。
梅が白く塩をふくまで干してみたり、畑に落ちてしまった少し傷のある梅をあえて漬けてみたり、常識とは違う漬け方も一度は試してどうなるか実験したくなるのが私の性分。たまに想像と違う味になることもありますが、それもまた貴重なデータだと思えば、翌年へのやる気が盛り上がります。
そうした試行錯誤の末にたどり着いたのが、「きょうの料理」6月号で紹介する「きほんの梅干し」。誰もがつくりやすく、そのまま食べても料理に使ってもおいしく食べられるレシピです。とはいえ、梅干しづくりは1年に1回のことだから、私の研究に終わりはありません。きっと今年も新米が出るころになったら、漬け上がった梅干しをつまみながら、来年の梅干しのことを考えているかと。
■NHKテキスト『きょうの料理』2025年6月号より抜粋
■撮影・邑口京一郎/スタイリング・阿部まゆこ