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ヴァイオリニスト前田妃奈 オフィシャルインタビューが到着

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前田妃奈

日本センチュリー交響楽団の第284回定期演奏会(2024年9月21日)に、ヴァイオリニストの前田妃奈がソリストとして登場する。2022年ヴィエニアフスキ国際コンクール(ポーランド)で、日本出身者として41年ぶりに優勝。1年以上にわたり20カ国・60地域でのツアーを展開してきた気鋭のコンクール覇者にとって、出身の大阪府豊中市を拠点とするオケとの初共演となる。奏でるのはブルッフ「スコットランド幻想曲」。指揮も注目株の太田弦、ハープが山地梨保と若き才能が集う。前田妃奈に演奏にかける思いを聞いた、オフィシャルインタビューが到着した。

前田妃奈 (C)Taira Tairadate

――コンクールのワールドツアーを終えられた今の心境はいかがですか。

私は留学経験もなく、英語も満足に話せません。すべて国・地域に1人で行き、きょうはリサイタル、明日はコンチェルトと、バタバタの1年2カ月でした。たやすくできる人もいるでしょうけれど、私にとっては大変なことで、生きて日本に帰ってこられれば上等でした(笑)。ツアー中は余裕がなかったのですが、今年2月くらいから6月くらいまで休みをいただいた間に、行った先々の景色、さまざまなアイデンティティーを持つ方々と関わったことでインプットしたものを咀嚼できた気がします。演奏が前よりも楽しくなり、表現の幅が広がったと言うか、ない引き出しは引き出せないので、引き出しが増えたのが良かったなと感じています。

――ツアーで印象に残っているのはどんなことでしょうか。

ヴィエニアフスキの協奏曲を演奏する機会が多かったのですが、国・地域によって全然違う音楽になり、刺激を受けました。お客さまの反応も、舞台に出てくるだけで「ブラボー」と声がかかるような国もあり、多種多様で面白かったです。強烈なアイデンティティーに接し、特に印象に残った国はパナマですね。リハーサルは午前7時から始まって、オケの指揮者の本業はお医者さん。クラリネットの音色は、今にも「コンドルは飛んでいく」が聞こえてくる民族楽器のようで、何度も楽器を見てしまいました。

――そういえば、リトアニアで両替をしたら全部2000円札で返ってきた、というエピソードを「X」に投稿してバズっていましたね。

人生でバズったのは2回目ですね(笑)。1回目はコロナ禍のとき、ホールの客席の間隔を空けるため、「座らないでください」と呼び掛ける貼り紙にバッハやベートーヴェン、ブラームスらの肖像が入っていたのを写した「プレッシャー笑笑」という投稿でした。リトアニアで「これしかないけれど、いい?」と言われ、2000円札の束が出てきたときは、「めったに見ないものが、いっぱいある」と面白かったです。貴重な気がして、今も記念に手元にとってあります。

――4カ月間ほどのお休みは、いかがでしたか。

寝ていたり、祖父母に会いに行ったり、したいことをして過ごしていた気がします。いくら音楽が好きでも昨年、あれだけ弾くとオーバーヒートというか、今はいいかなという気持ちになってしまい、いい演奏もできなかったと思います。この充電期間、ヴァイオリンは弾かなかったんですけれど、「やはり私は音楽がしたい」と思えたし、「私は弾きたいんだな」と再確認できました。ちゃんと休んで「復活」できたのは、私にとっても、聴いてくださるお客さまにとってもプラスになったのではと思います。

――前田さんの演奏を聴きまして、技術うんぬんを超えて前田さんにしか弾けない音、音楽を感じています。

人一倍、本当に音楽が好きで、音楽に携われている時間が喜びです。私はテクニックが完璧で、難しい曲を何でも弾けますという人ではなく、好きが高じてやっているだけなので。私は1曲1曲にドラマを作って表現するタイプです。大好きなフレーズをいかに良く聴かせるために前後をどうするか、などとよく考えます。何曲も弾くリサイタルはその構築が大変で、曲ごとに違う自分に生まれ変わらねばなりません。コンチェルトは1曲に集中できるのですが、指揮者にオーケストラの皆さん、舞台上に大勢がいる中、皆で構築していく難しさがあるかと思います。でも練習やリハーサルでいろいろ考えていますが、本番になると好きという気持ちで先走ってしまいますね。

前田妃奈 (C)Taira Tairadate

――直近で目指されていることはありますか。

何か目標を立てるタイプではなく、コンクールに出ることを決めたのも「勘」でした。ですから「勘」が働けば海外に行くこともあるかもしれません。今は一人の作曲家を集中して取り上げることに興味があります。例えばグリーグのソナタは、作曲年代も作風も違って面白い。一方、作曲家が一緒ですから一貫している部分もある、同じ作曲家の曲を演奏することは、私としては気持ちとして入っていきやすい部分があります。

――ブルッフでセンチュリーとの初共演に臨む思いを聞かせてください。

出身が豊中市ですし、ご一緒できたらと思っていたので、念願叶ったという感じで嬉しいです。「スコットランド幻想曲」は全楽章、とてもいい曲です。私は民謡、民族音楽チックな曲が大好きで、いつか弾いてみたいと思っていました。ただ、一見キャッチーで簡単そうに聴こえますが、指が間に合わず、とても難しい。まんまとだまされました(笑)。指揮の太田さんとの共演は、2回目になります。優しくて誠実な方なので、何の迷いなくお任せできると、次の機会を楽しみにしていました。

――地元・大阪での演奏会、聴衆へのメッセージをお願いします。

高校から東京に出た私ですが、関西でさまざまな人にお世話になり、支えられて今があります。東京での活動は、なかなか関西で見えないと思うので「おかげさまで、こんなに大きくなりました」と分かりやすく言える機会は大事だと思っています。幼いころから知ってくださっている方々も、そうでない新たに私のことを知ってくださった方々も、ぜひ聴きに来ていただけたらと思います。

「この曲が好きだ」「音楽が好きだ」という、あふれる気持ちを聴衆に届けてきた前田妃奈。誰もが憧れるコンクールの優勝の重みを感じつつ、海外ツアーの経験を積んできた。充電期間で改めて自身の音楽と向き合う姿勢を見つめ直したという中、新たに挑む「スコットランド幻想曲」。さらに深みを増した「物語」を聴かせてくれることに期待が高まるところだ。

取材・文=最上 聡

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