Yahoo! JAPAN

ディズニープラス「SHOGUN 将軍」の大ヒットは真田広之と “1980年版” があったおかげ!

Re:minder

1980年11月08日 映画「将軍 SHOGUN」公開日

連載【ディスカバー日本映画・昭和の隠れた名作を再発見】vol.4 -「SHOGUN 将軍」

歴史は面白い!ディズニープラスで配信された「SHOGUN 将軍」


今年(2024年)の春にディズニープラスで配信された『SHOGUN 将軍』は、久しぶりに夢中になれるドラマシリーズだった。安土桃山時代の末期を背景に、日本に流れ着いた英国人が、天下を狙う武将たちの思惑に翻弄されつつも、自分の居場所を見つけていく物語。徳川家康をモデルにした武将に扮した真田広之が、とにかくハマッていた。

そもそもこのドラマを鑑賞した動機は、その昔、同じジェームズ・クラヴェルの原作を映像化した作品が記憶に残っていたから。それを観たのは1980年、中学2年のこと。懐かしさもあったし、面白かった記憶もある。ディズニープラスの『SHOGUN 将軍』を観ていたら、当時の記憶がいろいろと甦ってきた。

今の中学生の授業カリキュラムがどうなっているのかわからないが、当時は社会科の授業に歴史という科目が入っていた。歴史上の人物や用語は当然、漢字が多く、中には難しいものもあるので正直、面倒な科目ではあった。第一、“ろくはらたんだい” なんて単語を漢字で書ける人がどれくらいいるのだろう? それでも歴史の授業が嫌いではなかったのは、当時観た歴史に関する映画のおかげ。

黒澤明の『影武者』で戦国時代の知略に興味を持つようになり、『二百三高地』では日露戦争の惨状を知った。『天平の甍』で遣唐使の過酷な道のりを学び、『影の軍団 服部半蔵』や『徳川一族の崩壊』で江戸幕府の舞台裏に妙なワクワク感を覚えた。いやはや、歴史は面白いじゃないか!

厳密にはアメリカで放映されたテレビシリーズ


そんな1980年の11月、『SHOGUN 将軍』が劇場公開された。まず基本を確認しておこう。本作は厳密には映画ではない。アメリカで放映されたテレビシリーズ全8話を160分に編集したものだ。翌年には日本でもこのシリーズが放映されたが、筆者は、こちらは当時観ていない。もちろん、製作国は日本ではなくアメリカだ。

さて、中学2年の筆者が劇場で観た『SHOGUN 将軍』だ。先にも記したとおり、時代背景は安土桃山時代末期。太閤(=豊臣秀吉)はすでにこの世になく、五大老が危うい駆け引きを繰り広げながら日本を統治していた時代だ。英国人の航海士ブラックソーン(モデルとなったのはウィリアム・アダムス、日本名:三浦按針)は嵐に遭い、日本に漂着。五大老のひとりである吉井虎永(モデルは徳川家康)に気に入られてその臣下となり、日本の生活習慣や武士のしきたりといったカルチャーギャップに悪戦苦闘しながら、戦乱の世を生き抜くことになる。

五大老の中心人物、石堂(モデルは石田三成)の嫌がらせを受けながらも、虎永は太平の世を築くために策をめぐらし、避けることのできない戦争へと突入。ブラックソーンはその思想に最初は反発する。そりゃそうだ。自由な個人主義が当たり前の西欧社会に生きてきたイギリス人が、主君に忠誠を誓い、大儀のために命を懸ける武士道精神を簡単には理解できないだろう。なにしろ、虎永の家臣は主君の理想のためなら命を惜しまないのだ。そんなブラックソーンも、少しずつ武士の生き方を理解し、受け入れていく。

などと偉そうに書いてはみたが、当時の中学生にも正確に理解できたかというと、かなり怪しい。子どもの頃からテレビで時代劇は観ていたし、なんとなく武士道らしきものは理解していたものの、ここまで過酷な世界であると知ったのは、80年版の『SHOGUN 将軍』があったからこそだろう。主君のため、理想のためとはいえ、命までは捨てられない。とうてい、自分は武士にはなれない… と思った中学生であった。

まり子に扮した島田陽子のセミヌード


そんな中学生でも、“むむむ、これはヘンだ” と思った点がある。ブラックソーンが風呂に入っているときに、彼の通訳を務めるヒロイン、まり子が入ってきて混浴する場面だ。ブラックソーンはどぎまぎするが、「日本人は自分の裸を恥ずかしいとは思いません」と返すまり子。いや、思うから! 異性の前では誰でもそう思うから!! … と心の中で訴えつつも、まり子に扮した島田陽子のセミヌードが見られて得した気分になったのは置いておくとして、アメリカの映像作品で描かれる日本の描写にはしばしばヘンなものがあるということを知ったのも本作だ。ちなみに、島田陽子は本作の演技で米ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞し、国際派女優の仲間入りを果たした。

プロデューサーの地位を得た真田広之の尽力


ディズニープラスの2024年版『SHOGUN 将軍』は、その辺もきっちり訂正されているが、これは主演とともに製作を兼任した真田広之の尽力が大きい。『ラスト サムライ』でハリウッドデビューを果たして以来、彼は米国の作品で日本が描かれるとき、つねにそれが正しい日本観であるようアドバイスをしてきたという。しかし、ひとりの俳優がどんなに意見を言ったところで、監督やプロデューサーの意向には逆らえない。長年のハリウッドでの活動を経て、本作でプロデューサーの地位を得た真田広之だからこそ生み出しえたのが2024年版だったのだ。

かといって、1980年版が駄作であるというつもりは毛頭ない。1980年版があったからこそ、多くの米国人の目は日本に向けられ、極東の地の中学生も歴史に興味を抱いた。そして、それに立脚したうえで、2024年版は作られ、世界中で支持された。聞けば、第2シーズンの製作も進んでいるとか。相も変わらず “せいいたいしょうぐん” を漢字で書けと言われれば困ってしまうボンクラだが、そんな頭にも映像作品の進歩、すなわち、その歴史を知ることは面白く感じられる。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【天王寺】あべのハルカスでパンのイベント!昨年の2倍以上のシェフが参加

    anna(アンナ)
  2. りんくうアイスパークで「泉佐野カレーサミット」開催へ 16店参加

    OSAKA STYLE
  3. 井筒屋小倉で<紀ノ国屋の特別販売会>開催中 クリスマススイーツが詰まったバッグ?【北九州市小倉北区】

    北九州ノコト
  4. 裏目に出ちゃった〝猫の恩返し〟に11万人ほっこり 「心は暖かくなります」「寓話として完璧」

    Jタウンネット
  5. コツさえつかめば簡単に垢抜ける!いつもの「ブラウンコーデ」が“ワンランクアップ”する着まわし術3選

    saita
  6. 関西アウトレットでは『マリンピア神戸』だけ♡話題のお店を一挙紹介!【後編】 神戸市

    Kiss PRESS
  7. 「節約上手な人」が暖房光熱費を節約するためにやらない“3つのこと”

    saita
  8. 県立明石公園で謎解きゲーム「 追憶レンズと託された謎」開催中 明石市

    Kiss PRESS
  9. 小さな女の子が散歩中『人のおうち』に入ろうとしたら、秋田犬が…お利口さんすぎる『まさかの行動』が90万再生「優しくて涙」「最高の警備」

    わんちゃんホンポ
  10. 【新店・NOCE新潟店】個性的なインテリアに心が躍る! 人気家具店がカフェを併設して移転オープン|新潟市中央区・ノーチェにいがたてん

    日刊にいがたWEBタウン情報