東京、7月7日に終了する見逃せないアート展3選
いつの間にか2024年も半分が過ぎ、夏休みを目前に控えた7月を迎え、東京の美術館も展示替えのシーズンになっている。訪れたいと思っていたのに、慌ただしく過ごしているうちに何となく行きそびれている展覧会もあるのではないだろうか。ここでは、今週末までに閉幕する注目の展覧会を3つピックアップして紹介する。
ブランクーシ展は日本の美術館での大規模展が初めて実現した点でも意義深い。国内外で再評価が高まる三島喜美代は、残念ながら会期中の2024年6月19日に逝去し、その訃報は多くのアートファンを悲しませた。注目の集まるホー・ツーニェンの初期作から最新作までを網羅的に紹介する展覧会もさることながら、同じ会場で開催中の「翻訳できない わたしの言葉」や「Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展」も7月7日(日)までとなる。いずれも見逃せない展覧会ばかりだ。
ブランクーシ 本質を象る
20世紀彫刻の新たな表現を開拓した存在といわれ、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)やイサム・ノグチ(Isamu Noguchi)らにも影響を与えた彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi)。石こうの「接吻」(1907〜1910年)や「ポガニー嬢Ⅱ」(1925年)をコレクションする京橋の「アーティゾン美術館」で、待望の企画展が開催される。
パリでロダンに見いだされるも、早々に独立したブランクーシ。自身の故郷であるルーマニアの文化や、同時代に発見されたアフリカ彫刻などに触れ、洗練された独自のフォルムと、素材への探求を続けた。
「ブランクーシ 本質を象る」には、パリのブランクーシ・エステートが協力。国内外で所蔵されている彫刻作品、フレスコやテンペラなどの絵画やドローイング、写真作品など約90点を展示する。事物の本質を見つめ続けたその足跡をたどろう。
三島喜美代―未来への記憶
1950年代から70年もの長きにわたり、現代美術家として活動を続ける三島喜美代。2020年以降、受賞や展覧会が相次ぎ、国内以上に海外からの評価が急上昇している彼女の待望の大規模個展が「練馬区立美術館」で開催される。
これまであまり展示されてこなかった活動初期の油彩画などの平面作品から、1960年代以降の新聞や雑誌などをコラージュした作品や、1970年ごろの陶にシルクスクリーンで印刷物を転写した多様な立体作品や、1970年ごろの産業廃棄物を素材に取り込んだ近作まで、約90点が展示予定だ。
特に必見なのが、三島の代表作にして最大規模のインスタレーション「20世紀の記憶」(1984〜2013年)。本展のために、常設展示されているアートスペース「アートファクトリー(ART FACTORY)城南島」を初めて離れ、美術館内に展示される。20世紀の100年間から抜き出した新聞記事が転写された耐火レンガブロックが敷き詰められた展示室は、まさに歴史が迫ってくるような圧巻の光景だろう。
ホー・ツーニェン エージェントのA
シンガポール出身のホー・ツーニェン(Ho Tzu Nyen)は、映像やインスタレーション、演劇的パフォーマンスなどの作品を、アジアを中心に世界各地で発表してきた。日本でも2021年に「豊田市美術館」で開催した個展「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」が記憶に新しい作家だ。
清澄白河の「東京都現代美術館」で開催される「ホー・ツーニェン エージェントのA」は、2003年のデビュー作「ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり」から、3Dアニメーションを用いた2017年の「一頭あるいは数頭のトラ」、2021年に「山口情報芸術センター(YCAM)」とコラボレーションした「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」など、7点の映像インスタレーションを展示し、これまでの歴史的探求の軌跡を辿る。
また、新たな展開であり、国内初公開となる最新作「時間(タイム)のT」(2023年)も非常に興味深い作品だ。現代アート好きなら見逃せない貴重な企画展となるだろう。