プリンが常温で1年保存できる?!「ジンギスカンのたれ」で有名な企業がスイーツ開発…その理由は
忙しい毎日に、ほっと一息、‟ごほうび糖分”を。
今回は、北海道のお土産の新定番をねらうスイーツのご紹介です。
お土産に嬉しい常温保存可能な商品なのですが、プリンにバスク風チーズケーキと、通常は消費期限が短そうなもの…。
なぜ開発できたのか?
その裏には、ある企業の歴史と思いがありました。
連載「ごほうび糖分」
「ジンギスカンのたれ」で有名な企業が…
北海道札幌市の「ベル食品」。
社名を聞けば、おそらく北海道民の大半が、オレンジのラベルの「成吉思汗たれ」を思い浮かべるかと思います。
もちろんこれが主力商品…と思いきや、実は「成吉思汗たれ」は、売上全体の5%ほどだといいます。
ほかにも幅広い商品を展開していて、スイーツにまで手を広げているんです。
ベル食品公式Xの中の人「ジンたれ君」によると、発売当初には「プリンに付属のカラメルソースが、実は『ジンギスカンのたれ』なんじゃないか?!」なんて話題にもなったそう…(もちろんジンギスカンのたれではなく、こだわりのカラメルソースです)。
ことしは新たなスイーツ、バスク風チーズケーキの「雪バスク」も登場しています。
意外な取り組みの真意とこだわりを、福山浩司代表取締役社長が直々に語ってくれました!## プリンに、バスク風チーズケーキも!
2022年に発売した「北海道プリン」。1箱に4個入りで、プリンはそれぞれカップに入っており、カラメルソースとスプーンが付属しています。
オンラインショップのほか、札幌市内のお土産店などで販売しているのですが、驚いたのが常温の棚に置かれていること。賞味期限は約1年先でした。
カラメルソースは封を切った瞬間に、甘い香りで安心…。プリンはなめらか!
乳製品のおいしさが感じられるので、なぜこれが常温で長期保存可能なのか、食べるとますます不思議です。
2025年秋冬の新商品「雪バスク」は、「雪のようにやわらかくとろけるなめらかな食感」を目指した、バスク風チーズケーキです。1箱に3個入っています。
カップの中で2層に分かれていて、バスクチーズケーキの表面の焼き色や香ばしさも再現されています。濃厚で満足感のある味でした。
なぜスイーツ開発を?
なぜスイーツ開発に乗り出したのか…その背景には、会社創業時から変わらない思いがあります。
ベル食品は第二次世界大戦直後の1947年、「北海道のおいしいものを全国のみなさまに食べてほしい」という志を持った、北海道大学農学部出身者を中心とした7人の若者によって創業されました。
「成吉思汗たれ」を発売したのは1956年で、実はその2年前に、今でも販売が続くラーメンスープ「華味」を開発したのが先でした。長年にわたるラーメンスープ開発の技術が評価され、現在も業務用のラーメンスープの小袋が売上の半分ほどを占めています。
「成吉思汗たれ」が5%にとどまるのは、家庭用商品も展開が幅広いからです。
根昆布だしに、スープカレーの素やレトルト食品、鍋つゆなど…スーパーマーケットを歩いてみると「これもベル食品だったんだ!」という商品が多く見つかるかと思います。
福山社長へのインタビュー中、話が及んだ商品を机に並べてくださったのですが、この量に!
バリエーション豊富なのですが、どれも「北海道らしさ」が共通しています。
ことしの秋冬の新商品にも、「かに」や「ふぐ」など、北海道らしい食材を使っています。自分で買ってきて調理するには手間がかかる、高級な食材を使っていたり、なかなか見かけない味の商品を出しているのも特徴です。
福山社長は、「食べてみたい!と思ってもらえるものを意識して商品開発をしています。あわび・ふぐなど、気軽には食べられないものを手軽に食べられるようにして、家でプチぜいたくができるようにしたいと思っています」と話します。
「北海道のおいしさを全国へ」。
その思いが、スイーツ開発にもつながっていました。
「北海道の牛乳消費が減っている中で、牛乳を使ったスイーツで消費拡大に貢献したいと思いました。北海道の食材を使って地域経済に貢献したい、北海道を元気にしたいという思いがあります」
「北海道プリン」には、道産の牛乳やクリームを使用。「雪バスク」も道産のクリームチーズ、生クリーム、牛乳を使用しています。
これまでの技術の積み重ねで、新たな挑戦を
スイーツ開発は、2021年に東京の食品メーカーを買収してスタートし、埼玉の工場で生産しています。
お土産に嬉しい「常温保存可能」「製造から1年保存できる」という特徴は、ベル食品がレトルト食品で培った技術があるからこそ実現できたといいます。
福山社長は、「世の中にないものを作りたい、いつでもどこでも北海道スイーツが味わえるようにしたいという思いで、常温にこだわりました。北海道の方には、自宅に置いておいて、いつでも食べたいときに食べられるおやつに。観光客の方には、旅行の思い出として、北海道の味を思い出すときに楽しんでほしいです」と話します。
スイーツをはじめ、幅広いジャンルの商品開発は、営業や企画開発部門の社員が月に1度集まって会議をしていますが、社長も参加して企画段階から意見を出すといいます。
「最終的に役員プレゼンがあるんですけど、そのときには私はもう知っているんですよね(笑)。新商品が多い会社だと思います。北海道の人口が減っている中で、やっぱり攻めて行かないと」
「ジンギスカンのたれ」で有名なベル食品。ですがそれだけではなく、ラーメンにザンギ、スープカレーなど北海道の幅広い食を届けていて、「北海道のソウルフードメイカー」をうたっています。
福山社長は、「ジャンルを広げながらも、北海道のおいしいものをいかに魅力あるものに加工してお届けするか、というところにこだわってきました。北海道のものを食べたいとおもったらベル食品を思い出してもらえる、そんな存在を目指しています」と話していました。
連載「ごほうび糖分」
文:Sitakke編集部IKU
※掲載の情報は取材時(2025年10月)の情報に基づきます。