『金子差入店』は現代に生きる人の心が静かに熱を帯びるだろう映画。監督の本気を感じた試写レビュー!
5月16日(金)に公開される映画『金子差入店』。受刑者と家族を繋ぐ「差入店」。厳しい審査や検閲がある差入のルールを熟知し、様々な事情から面会に行くことができない人たちに代わって、面会室へ出向くこともある仕事。そんな差入店を営む家族の絆と、彼らが巻き込まれる不可解な事件を描く、ヒューマンサスペンスです。主演はSUPER EIGHTの丸山隆平さん、共演するのは真木よう子さん、三浦綺羅さん、川口真奈さん、北村匠海さん、名取裕子さん、寺尾聰さんなど豪華俳優陣。『東京リベンジャーズ』(21)や『真夜中乙女戦争』(22)で助監督を務めた古川豪さんの初監督作の魅力をUHBアナウンサーの柴田平美がお伝えします。
映画『金子差入店』のあらすじ
金子真司は妻の美和子と差入店を営んでいる。伯父の星田から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。
ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人の小島の母親から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は差入屋としての仕事を淡々とこなそうとするが、常軌を逸した小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。さらに、小島の母親から息子には話し相手が必要だと思うと再度の差入を頼まれた金子は、小島と話せば話すほど「なぜ、何のために殺したのか」という疑問と怒りに身を焼かれる。
そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う金子。彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を強く求めていた。2つの事件と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、家族の絆を揺るがしていく──。
実力派俳優たちの心震える熱演
金子の妻を演じる真木よう子さんの安定感、男を追いかける金子の母を演じる名取裕子さんや、金子の心を突き動かす言葉をかける叔父を演じる寺尾聰さんなど大御所俳優たちの存在感で、物語に深みと重厚感が増しているように感じます。そして、何といっても今回の映画では殺人犯を演じた北村匠海さんに注目。今までに見たことのない北村さんの不気味さがとてつもなく新鮮で、吸い込まれる感覚がありました。特に、刑務所で金子と対峙するシーンは身震いする瞬間も。『東京リベンジャーズ』の時から続く監督との信頼感があるのでしょう。“こんな役もできるということを、世の中の人にも北村さんのファンにも見てもらいたい。”という監督の思いからあて書きしたという殺人鬼の役は、北村さんの新境地といっても過言ではないかもしれません。
11年の構想を経て完成したこだわりの作品
東京拘置所の前にある差入店を目にしたことをきっかけに、古川監督が差入店を題材として構想し始めてから11年の時を経て完成した今作。様々な作品で助監督を務めていた古川監督の長編映画監督デビュー作は、思いの強さが映画の細部に至るまでこだわりが詰まっています。例えば、何度も出てくる金子差入店の前の割れた植木鉢。そこに植えられた花の種類にまで意味が込められており、細部まで繊細なこだわりが感じられます。中でも、「平和」という花言葉の白いデイジーは、時期的に入手が難しかったため建物の横で育ててもらったのだとか。映画の中の家族、そして、映画を観ている世の中の人に対しても体温のあるメッセージが込められているように思います。
SUPER BEAVERが即決し、制作した主題歌
主題歌「まなざし」は、古川監督が助監督を務めた『東京リベンジャーズ』シリーズで結んだ縁からSUPER BEAVERにオファー。“まなざしよ まなざしよ 騙し絵みたいな今日に 足りていないのは愛だよ…”、見たくないものが重なり合う世界を真実のまなざしで見つめることの大切さ、混迷の時代を懸命に生きる者たちへの熱い想いが込められた歌詞が特徴です。疾走感と熱量溢れる音楽に未来への小さな希望を感じるはず。この映画には、人生をかけて挑む監督の真剣な想いが込められています。主人公・金子役の丸山隆平さんをはじめ、俳優陣や技術スタッフとの信頼関係、そのすべてが結実した作品です。ぜひ劇場で体感してください。
作品情報
公開日:2025年5月16日(金)
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰
主題歌:SUPER BEAVER「まなざし」(ソニー・ミュージックレーベルズ)