本当に寒いときの避難所の「進化」とは「我慢」しないで健康に過ごすために大切なこと
冬の災害への備えを進める転機となった「阪神・淡路大震災」から30年が経ちました。
しかし、防災の取り組みは、まだ道半ばです。
そんな中、私たちが直面するかもしれない「極寒での避難生活」を考える演習が開かれました。
【特集】“じぶんごと”防災
進む避難所対策
1月、北海道北見市で行われた厳冬期災害演習。
最低気温はマイナス19.6℃、極寒の訓練で見えてきたのは、避難所対策の進歩です。
演習を主催する日本赤十字北海道看護大学の根本昌宏教授は「5年後、10年後の先を見ながら、未来型を含めてここまでやってみてはという提案としてやっている」と話します。
まさに「最先端の避難所」から真冬の防災のあり方が見えてきました。
この日集まったのは自治体職員や医療関係者ら、約140人。
早速、気温1度の体育館に寝転がって、毛布1枚で過ごす寒さを体験します。
HBCの東峰優華アナウンサー(苫小牧出身)は「あまり布団をかけても暖かくない、頭から冷えてくる」と体感を話します。
2024年1月の能登半島地震では、家屋の倒壊など、地震による直接的な原因で死亡したのが228人だったのに対し、避難生活の中で病気で亡くなるなどの「災害関連死」が277人で上回りました。
まさに避難生活の質の向上の必要性が浮き彫りになったデータです。
健康的な避難所に必要なのは「TKB+W」
演習を指揮した根本教授は、健康を損なわない避難所作りの必要性を強調します。
それが「TKB+W」の4つの要素をすべて満たすことにあるといいます。
Tはトイレ、Kはキッチン・食事、Bはベッド、Wはウォーム・暖房を指します。
そのひとつ、生活に欠かせないトイレ。
今回初登場したのが、こちらのラップ式のもの。
排せつ物を固めて臭いを消す薬剤と、水を入れて、ボタンを押すと…。
ラップごとぐーっと排せつ物が包まれていきます。
薬剤は固まり、袋状になったラップの中でゼリー状になっていきます。
一般的には屋外のプレハブ式やトレーラー式などがありますが…今の時期の北海道、マイナス10℃~20℃の地域もありますよね。
屋内との温度差が大きくなることで「屋外のトイレでもヒートショックを可能性がある」と根本教授は指摘します。
屋内にトイレを設置できることはそれだけ健康の不安が払しょくされることにつながるのです。
車内で夜を明かすことも…暴風雪での立ち往生も想定
一方で、真冬は、車に乗っているときの暴風雪での立ち往生にも注意が必要です。
場合によっては、車内で一夜を明かすこともあります。
堀啓知キャスターは、暖房を切った車内での避難を体験。車内の温度はマイナス5℃。
体験は、1時間ほどでしたが…。
実は「寒さ」という面では「意外に快適だった」と話す堀キャスター。
しかし問題だったのが…。
「体が動かせないので、寝るのにはちょっと向いていないと思う。1時間だから耐えられたけれど、これが7時間とかは無理だなと感じた」
スチール製折り畳みベッドでプライベートも確保へ
そして、寝床となるベッドの設営です。
今回は従来の段ボールベッドではない、新たなベッドを導入しました。
スチール製の折り畳みベッドです。段ボールベッドは箱を組み立てて並べる必要がありますが、スチールベッドは、広げるだけでよく、短時間で設置できます。
ベッドの上にテントを張っていくと…暖を取りつつ、プライバシーも確保できる「テント・オンザ・ベッド」の完成です。
こちらを体験したのは東峰アナウンサー。
体育館の中の温度はこの時点で4.2℃。
ここからテントに入って中の温度がどれくらい上がるか検証していきます。
すると…
「全く動いていませんが、かなり暖かいです」
「今の温度は15.9℃と、テントの中はかなり暖かかったです」
午前0時に消灯し、就寝…。
そのまま朝を迎えることができました。
「眠れました。結構寒かったので朝方3回くらいは起きてしまったのですが、ゆっくり眠ることができました」
参加した人の中には、「テントの中に熱がこもって暖かくなったのでパーカー1枚で寝た」という人もいましたよ。
根本昌宏教授は「しっかりと食べてしっかりと排せつするできれば、ゆっくりと寝ることができる。TKBのバランスを保つためにも最低限のW(ウォーム)を保つことが大切」と強調していました。
避難所に限らず、札幌でもマンションの高層階などで、電気やガスや水道などが絶たれ孤立する恐れもあります。
自宅が避難所の役目を果たす備えがあるのか、改めて見直してみることも大切です。
【特集】“じぶんごと”防災
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年1月20日)の情報に基づきます。