ジュビロ磐田のハッチンソン監督が語る大分トリニータ戦のポイント「いかに相手に違う絵を突きつけられるか。悪い流れを断ち切れると思う」
ジュビロ磐田はリーグ戦で3試合勝ちなしと足踏みし、5勝2分け3敗の5位に後退しました。ヤマハスタジアムで迎える4月25日の大分トリニータ戦、4月29日のレノファ山口FC戦のホーム2連戦を前に、ジョン・ハッチンソン監督に話を聞きました。
「川合は地に足つければワクワクする選手なれる」
-前節4月20日のブラウブリッツ秋田戦は試合終了間際に失点し、敗れました。今週のミーティングで選手に伝えたことは。
試合の振り返りから始めました。良い局面もあったんですが、特に難しかったのが、ああいう秋田のスタイルに対して自分たちが戦えずに相手にやられてしまったところ。
前半はよくできていたと思います。セカンドボールをよく回収して、相手はウチのペナに2回ぐらいしか入れていないなかったという意味ではよくやれていたんですけど、後半は戦うのをやめてしまった。セカンドボールを拾われたら、やっぱりワイドに展開されてクロスという、ウチにとっては苦しい試合展開になったと思います。
もちろん原因はいくつかあると思いますが、特に残念だったのが戦えなかったところ。要は秋田をリスペクトできなかった。リスペクトというのは、別に相手と握手しろというわけではなくて、相手の強みをいかに消せるかというところだと思うんですが、それをやらせてしまって、より相手に勢いを持たせてしまった。
もちろんウチもボールを持てていたということもあるんですが、戦術的なところを抜きにして、チームとして常にハードワークをして戦えないと、そういう相手にはすごく苦労してしまう。その原因は別に選手だけではなく、僕から始まるところだと思うんですけれども。
やれないと秋田のようなチームには勝てないというところが見えたと思います。サッカーというのは常にフェアではない。勝っていた試合に負けたり、負けそうだった試合に勝てたりということもある。そういう意味では引き分けが妥当だったと思うんですけど結果として負けてしまった。
なので今日からボールを持っていても持っていなくても、全局面を改善しなければいけないと思いました。選手に話した上で、特にボールを持ったところと、いかにトランジションを止めるかっていうところに取り組んで、いいトレーニングができたなと思います。
-秋田戦の後半にワンボランチにしました。
ゲームをコントロールできていたと思うんですけれど、その中で相手に対して違う景色というか、違う絵を突き付けたかった。
中にいる選手を違うポジションにおいて、ちょっと表現してほしかった。例えばこれまで一輝(川崎選手)が好調なので、一輝をピッチの中に入れたかったんですけど、謙(倍井選手)を残しながらどうするか。謙を中に入れてみようというところがあった。
ただフォーメーションや形が大事というわけではなくて、チームとして何をしようとするか、スペースはどこにあるのか、その結果、相手はどうなるのかというところが重要かなと思っています。
いかに違う絵を突き付けられるか、予想できるチームにはなりたくない。相手に対してプレッシャーでなく、チャレンジを課すような、相手がチャレンジしないと難しくなるような試合にしたいと思っています。
ワンボランチ、ダブルボランチは関係ないし、たまに2トップもあり得るかもしれない。その試合の中でどこに優位性があるのかというところ。
秋田に関してはもう少し裏を増やしたかったので前に人数をかけたかった。2失点目に関しては、別にワンボランチだったから起きたわけではなくて、エラーが連続したというところと、本当に雑だったと思っています。なので形を変えたことで、いい時間帯もあったと思うので、前に人を掛けたけど、決めきれなかったというところです。
-秋田戦後に戦える選手をもう1回見直していかなければという話がありましたが、大分トリニータ戦のメンバーはそうした基準になりますか。
もちろん見直さないといけないんですけど、一気に変えるのか、また同じプロセスを続けるのかというところは見極めながら。
サッカーに関してはやろうとはしてたと思います。ただ、今年こういうのが何度か見受けられている。富山戦も、難しい相手に対してやられてしまった。逆に(ルヴァン杯の)FC大阪戦に関しては難しいピッチコンディション、難しい相手、いろんな他の要素も試合を難しくしたんですが結果を残した。からこそ余計、ああいう敗戦(秋田戦)は残念だったなと思っています。
どのチームでもハードワークだったり、戦うこと、お互いのために戦うというところを求めているんですが、それを誰ができるのかというのを見て、メンバーも選びたいと思っています。
ただ選手には、こういった敗戦に対するリアクションというのを求めています。練習の中でお互いポジションのために競争してるところも見れました。このチームの中で、またこのフットボールプログラムを通じて成長してほしいと思っています。
特にスタートで出るメンバーは特権だと思っていて、ウチのチームを代表してプレーするわけだから、最低限チームのために戦わなければいけない。秋田戦はいいシーンもあったんですけど、いいシーンがあっただけでは足りないので、大分戦は戦えるメンバーを選ぶというところだと思います。
-大分は守りが堅いイメージがありますが、監督の印象は。
特に守備からトランジションのところ、攻撃に移るそのトランジションのところも非常にいいチームだと思っています。
ボールを持ちながら相手に切り替わる局面に対して、ボールを持っている時から準備しないとダメージを負う。特にカウンターの局面だったり、ワイドに展開されてのクロス、ペナの中にも人数をかけてくるので非常に難しい相手です。
相手の守備も5-3-2になったり5-4-1のところで崩すのは非常に難しいので、そこに対してのトレーニングをしました。いろんなチャンスの作り方、またペナの中への人の掛け方、どこにボールを最後に運ぶのか。そういう判断のところで、いろんなイメージを共有しながらやりました。
大分戦でこの悪い流れを断ち切れるとは思うんですが、もちろん相手の強みであったり、やってくることに対してリスペクトしないとまたやられてしまう。大分にも個人的に何人か指導した選手もいますし、その中でハードワークができるというのも知っていますし、非常にタフに守備もしてくるので、いかに崩せるかというところ。切り替えの局面で止められるかというところだと思います。
-川合徳孟選手のこの1カ月間の成長が目覚ましいです。彼の良さは。
非常にハードワークしているし、多分その成長のところはハードワークの結果だと思います。プレシーズンを振り返ると、ファーストチームにもセカンドチームにも、どっちもあまり絡めずに、後半途中から出てくるだけの選手だったと思うんですけども、今まさにチームに絡めていて、非常に大きく成長してるなと思います。
ただその成長というのは個人がどうなりたいかというところからくると思っています。もちろんわれわれの原則もあるんですけど、そこに合わさってハードワークして、だからこそ成長していると思います。
彼のタッチだったり、ボールのないところ、オフの動きだったり、また積極性というところがいいなと思っているんですけど、そこにさらにゴールにも絡めてきてるというのは素晴らしいこと。スタメンにも近づいてきていると思います。
18歳でまだミスも許される年齢ではあるんですが、ここからシーズン通して安定したパフォーマンスもしなきゃいけないし、もっとボールを失わないようなこととか、もっと安定したプレーを見せなければいけなくなってくる。
いい裏抜けだったり、ボールタッチだったり、また状況判断もある。プレッシャーがかかって、ゴールを背負った状態でもターンして前を向いてというところができるんですけど、もっと守備のところも伸ばしていかなきゃいけない。まだ理解しきれてないというか、自分のプレーがどうチームに影響を与えるかというのは理解できていない。例えば自分が奪いたいから行っちゃうとか、まだ我慢しなければいけないとか。そういうところはまだまだ伸ばしていかなければいけないなと思います。
-川合選手は指導者としてワクワクする選手ですか。
ワクワクする選手になれると思います。ただそこはもう本当に彼次第だと思っていて、コーチングスタッフ、うちのスタッフも彼に対していろいろやってくれています。
例えば試合の振り返り。彼が出た試合を彼自身が分析して、コーチにプレゼンしなければいけないとか、それもすごい重要な取り組みだと思っています。確かにワクワクする選手ではあるんですけど、まだ18歳、地に足つけなきゃいけない。そこまでがまだ楽な部分で、ここからいかにパフォーマンスを維持しながら成長していくかというところだと思います。
どこまで彼自身が熱量を持って、自分のために努力できるか、情熱を持ってやれるか、またこのサッカーを愛してやれるかというところが本当に大事になってくると思います。地に足をつけることができればワクワクする選手になることができると思いますし、彼にはなぜここまで来られたのかということを理解させて、ここから何をしなければけないかというのを理解してもらうことだと思っています。