沿岸部におけるチヌの生態 【春夏秋冬の行動と捕食のパターンを知ろう】
マダイの黒い版・クロダイ。通称チヌ。マダイの黒い版といっても、チヌが先かもしれないのだが、オカッパリではもちろん、沖釣りの世界でもなかなか難しいマダイと違って、チヌは比較的よく釣れるゲストだ。しかし我々はチヌについて、「汽水域にもいる」「水質の汚染に強い」という二点くらいしか知らない。何を食べているか?春夏秋冬どんな動きをするのか?シーズナルパターンを知ろう。
チヌ(クロダイ)ってどんな魚?
クロダイ(以下チヌ)はマダイを黒銀の縞模様にしたような外見の魚で、汽水域でも完全な海水の世界でも生きられる魚で、大型では60cmにも迫る。近似種のキビレは汽水域でしか生きられないので(海水では呼吸ができない)、そこにキビレがいるとなると、辺りは汽水域であるとも考えられる。
チヌは川でも海の沿岸でも沖堤防でもジギングでも釣れる。もともと体力的にタフな魚で、どうやら寿命も長いらしく、50cm以上は何年生きているかわからないという意味で、「年無し」ともいわれる。
よく釣れる都道府県は大阪湾奥、東京湾、熊本も聖地だ。熊本などは川にウヨウヨ見えチヌがいるという。筆者は大阪湾住まいだが、垂水や泉南などきれいな水域でもよく見かける。南港でもよく悠々泳いでいるのを見るが、海が何せ濁って汚いせいで、そんなに多いとは思わないが、日本で随一のチヌ・エリアだ。濁った水の下にはチヌがたくさん棲みついているらしい。
シーズナルパターン
チヌ釣りの盛期は夏で、高水温25℃でもよく釣れる。夏のチヌは特別に引きが強い。また春にはノッコミという産卵のパターンがあり、沖の、よく潮にもまれた筋肉質なチヌが接岸してくる。このときにも数釣りできるが、筆者の印象では盛夏の居着きのチヌのほうがキケンな引きを見せると思う。
釣れるところでは通年釣れる。厳冬期でもマイクロベイトパターンがあったり、秋でもアジングに混じって食ってきたりと縦横無尽の食いっぷりで、貪婪な食性の魚である。実際、消しゴムなんかで釣れることもあるらしいから、なかなか面白い。
釣り方は基本的に「ボトムずる引き」だといわれる。ただしチヌばかりは、このセオリーが簡単に揺らいでしまう。デイゲームでトップウォーターに出ることもあれば、夜、シンキングまたフローティングのメバルプラグにも食いついてくるし、アジングワームを丸のみすることもある。何を食べているかわからないが、マッチ・ザ・ベイトをそこまで考える必要はない。春夏秋冬、ともあれチヌがアタるレンジを突き止めれば、あとは微妙な調整でフッキングまで持っていける。
捕食物は「問わない」
上述のように捕食物は問わないチヌである。しかし一般に好んで食うのは、次のようなものらしい。
・イガイ
・イワシ
・ハク(ボラの仔)
・小ガニ
・フナムシ
・エビ
筆者はルアーフィッシングで、かつプラグはフローティングまでしか使わないうえ、ワームでもそこまでレンジをあえて入れないので、表層で釣れるチヌしか試していないことになる。しかしその場のチヌのグルメを突き止めればよりパターン化しやすいことは間違いない。
食用には適さない?
チヌはニオイの強い魚で、あまり食用には適さないといわれている。沖の回遊個体は一級品の味わいだが、湾奥の陸っぱりアングラーだとあまり好んで持ち帰る魚ではない。
しかし見た目は迫力ある。これほどカッコいい魚もなかなかいない。ただ釣るためのルアーフィッシング対象魚としては、格別の存在だ。近似種のキビレでなく、本チヌが釣れたら、やはり嬉しい。筆者は個人的に黒銀の縞模様がハッキリとしたチヌが好きだ。釣り極めていくなら姿かたちも追い求めたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>