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看護師から27歳で電気工事会社の社長になった理由。従業員25名も当初採用に苦戦。

スタジオパーソル

TikTokやInstagramなどのSNSを活用し、電気工事業界の魅力を発信する「建設社長のあやか」。そのアカウントを運用するのは、看護師から電気工事会社の社長へと異色のキャリアチェンジを遂げた、株式会社レナトゥスの佐藤綾華さんです。会社や業界についてユーモラスに発信するショート動画は、業界内外から関心を集め、総フォロワー数は5万人を突破。動画を通じて会社の雰囲気を伝えることで、現在は25名の社員が活躍しており、採用活動にもつなげているそうです。

建設業界、電気工事士、社長業、SNS運用と、すべて未経験から挑戦してきた綾華さん。その大胆な行動と決断の際に怖さはなかったのでしょうか?彼女が27歳で社長に就任するまでのストーリーや、知識ゼロからはたらく中での苦労、「経験がない」社長だからこその仕事への向き合い方について話を聞きました。

新しい挑戦に踏み出したい方や、キャリアに迷っている方にとって、この記事が一歩を後押しするきっかけとなれば幸いです。

知識ゼロからの挑戦。看護師から電気工事業界の社長へ

──まずは、佐藤さんの今までのお仕事の経歴について教えてください。

高校を卒業後、3年制の看護専門学校に通い、21歳で卒業しました。その後、一般病棟の看護師として約5年間勤務していましたが、次第に看護師以外の仕事にも挑戦してみたいという気持ちが湧いてきたんです。そして26歳の時に、電気工事会社で事務職を始めました。それから1年後、勤めていた会社とは別の、新たに立ち上がった電気工事会社の社長に就任しました。

──未経験の業種に転職されて、たった1年で社長に!

そうなんです。たまたま知り合った経営者の方が電気工事業界で新しく会社を立ち上げる予定で、「女性社長はめずらしいし、やってみないか」と声をかけてくださったんです。看護師時代に培ったガッツや姿勢を評価されたのかもしれませんが、きっかけは本当に「人との縁」でした。

突然の話ではありましたが、当時は不思議とあまり悩むこともなく、「私にもできることがあるはず。これはチャンスだ」と。というのも、事務職として電気工事業界に携わる中で、はたらく人に女性が少ない現状に課題を感じ始めていて。電気工事は力仕事もありますが、意外と繊細な作業も多く、女性でも十分活躍できる仕事なんです。「もし自分が社長という立場ではたらけるなら、女性がもっとはたらきやすい環境をつくりたい」という想いが、決断の後押しになりましたね。実際に女性向けの休暇制度を新たに設けるなど、誰もがはたらきやすい職場づくりに向けて取り組みを進めています。

──看護業界から電気工事業界、事務職から社長というまったく異なる環境への挑戦に不安はなかったのでしょうか?

電気工事会社ではたらき始めたのも、社長に挑戦することになったのも、思いもかけないできごとで。不安よりも「ご縁を大切にしよう」という想いのほうが強かったですね。私はもともと怖いもの知らずな性格なんです(笑)。

また、弟が事業を経営していたり、周りにすごく楽しそうにはたらく経営者の方が多かったりしたことも、「自分にも社長業ができるかもしれない」という自信につながりました。

──大きなキャリアチェンジを果たされて、率直にいかがでしたか?

人とコミュニケーションをとるのはもともと好きだったので、職人さんや取引先の方々との会話については不安はありませんでした。社長業についても、周りの経営者の方々からアドバイスをいただきながら全力を尽くしてきましたね。

ただ、電気工事士は専門職なので、転職した当初、知識ゼロから始めるのはとても大変でした。覚えることがとにかく多くて……。仕事終わりに会社で勉強して帰る日が続きました。

社長になってからも、女性だからという理由で取引先の方から少し下に見られることも少なからずあって、とても悔しかったですね。「ちゃんとした会社ですし、大丈夫です」と仕事で関わる方に胸を張って言えるように、より知識を身につけるため日々努力を重ねていきました。

この粘り強さは、実は看護師時代に培われたものなんですよ。夜勤で不規則な生活が続いていたころに体力や忍耐力が鍛えられて、未経験の業種や社長業に慣れるまでの苦労も乗り越えてこられたんだと思います。社員さんからは「鋼のメンタル」と言われるほどです(笑)。苦労した経験は何事にも活かされるのだと感じています。

自分らしさで切り開く! SNSと対話から生まれた新しい景色

──今日まで順調に経営をされているように見えますが、社長業をまっとうする中で特に困難だった出来事はありますか?

ありすぎてどれから言えばいいのか分からないのですが……。特に大変だったのは、起業当初の採用でしょうか。職人さんがいないと仕事は始まりませんし、会社としても成長できないので、人材確保が最優先の課題でした。

会社の設立から半年後にはさまざまな採用媒体を通じて求人募集をし、広告にも100〜200万円ほどかけたんですが、応募は少なくなかなか人が集まらなくて。そんな時、同じ経営者である弟がSNSを活用して採用を成功させているのを知り、私も2023年のクリスマスからTikTok・Instagram・YouTubeショートを活用した採用活動をスタートさせました。

──そこから今ではSNSの総フォロワー数が5万人を突破しています。どのように運用をされていったのでしょうか?

これもまたすべて手探り状態から始まったのですが、その中でも心がけたのは「ありのままの自分や社員の様子」を投稿で表現すること。私自身はほぼアドリブで撮影しているんですよ(笑)。

電気工事会社では女性社長がまだめずらしかったことも相まって、徐々に注目を集め、フォロワーが増えていきました。それに伴い、採用の応募者数も増加していきましたね。最終的には1年で300人ほど面接をさせていただき、13名の採用が決まりました。そのうち今も当社ではたらいてくれている職人さんで、若手の女性は2名います。

思い切ってSNSをスタートさせたことで、性別や年齢関係なく、会社のビジョンや社風に共感してくれる人材が集まりやすくなっていると感じますね。そして、事務職時代から抱いていた「建設業界ではたらく女性が少ない」という課題に、少しずつ向き合えているのかな、とも。

──オフィスでの様子や、TikTokなどでのやり取りを拝見していると、皆さんの和気あいあいとした雰囲気が印象的です。業界での経験が少ない中で、どのようにチームワークを築き上げていきましたか?

@denki.ayaka 実は私たち... #マコモ湯 #マコモ湯構文 #良い子は真似しないでね #電気工事士 ♬ オリジナル楽曲 - 建設社長のあやか🧸


私は事務職からスタートしていて、現場に出た経験は一度もなく、職人として仕事をしたことはありません。でもだからこそ、職人さんへのリスペクトを忘れず、みんなの率直な想いや気持ちを聞きながら、「会社をより良くするために何をすべきかを一緒に考えること」が私の役割だと思っています。

そのためにも具体的には、仕事が終わった後にみんなと話をする場を意識的に設けたり、社員同士の関係を深めるために、仕事以外でリラックスできる場をつくったりしています。忘年会やお花見、バーベキューなど、仕事から離れて楽しく話せる機会を積極的に設けるようにしていますね。こうした取り組みの継続から、自然とコミュニケーションが活発になり、職場全体の雰囲気向上につながっていると実感しています。

──「経験がないからできない」ではなく、その環境下で自分にしかできないことを考えてコミットされてきたんですね。

この2年間は採用をはじめ、自分の知識不足や人間関係など、日々新しい壁が次々と現れるような感覚でした。そんな厳しい状況を打破するには、自分の立場や役割を把握して、長所を活かすのが大事だと思っていて。私の場合は、コミュニケーションスキルと明るさ、メンタルには自信があったので、そこをうまく使おうと。

過去に、新しく入った職人さんと古くからはたらいている職人さんの考え方や価値観の違いから、関係性を調整するのにかなり苦労した経験があったんです。人間関係は、無理に動かそうとしてもうまくいかないもの。その際も、周りの気持ちを汲み取りながら対話する持ち前のスキルを活かして、無理やり間に入るのではなく、お互いが気付き、歩み寄れるような工夫をして解決していきました。技術力は高くても教えるのが苦手な方もいれば、優しくていねいに教えるのが得意な方もいますよね。一人ひとりの特性を把握し、適材適所のポジションに配置することも意識しています。

あとは、フラットな姿勢で接することも意識しています。「社長だから完璧でなければならない」といった考え方に縛らず、分からないことは素直に「分からない」とありのままを伝える。みんな本当に温かいので、ていねいに教えてくれるし、現場の状況も細かく報告してくれて。自分らしさを大切にしつつ、一人で頑張るんじゃなくて、周りの力も借りながらみんなで一緒に会社をつくりあげていく。これが私の仕事の進め方です。

誰しも一人じゃない。仲間と重ねる一歩一歩が未来をつくる

──どのような環境でも自分らしく生き生きとはたらくために意識していることはありますか?

「最初の一歩を踏み出すこと」を一番に心がけています。新しいことに挑戦するのは誰しも怖いものですが、一歩を踏み出してみると、意外と次のステップにはスムーズに進めるものです。

SNS運用を始める際も、「自分にできるのだろうか」と不安がありましたが、思い切って始めたことで、多くの人に会社のことを知ってもらえるきっかけになりました。社長業においても、周りの方々に教えていただきながら、どうにかこの2年間やってくることができました。

それと、繰り返しにはなりますが「一人でやろうとしないこと」も大切です。一人では何もできませんし、無理をする必要もありません。どんな環境にいても変にかっこつけたりせず、周りの方と支え合いながら一緒になって歩んでいくことで、物事も前に進みやすくなりますし、自分らしいはたらき方ができると思いますよ。そのためにも、いつも支えてくれる周りの方への感謝を心に持って接して、自然と良い関係を築いていけたらいいですね。

──最後に、はたらく方々へメッセージをお願いします!

挑戦したいことがあれば、自分らしく、一歩を踏み出す勇気を持ってみてください。その一歩が、あなたの未来を切り開く大きなきっかけになるはずです。

私たちもこれからどんどん新しい挑戦を続けていきます。直近ではSNSを活用しながら、一人で複数の業務が担える多能工も採用し、会社としてより多くのニーズに応えられる体制を整えたいと考えています。また、M&Aを通じて他業種にも進出して、社員一人ひとりがさまざまな経験を積める環境もつくりたいですね。いつか電気工事以外にも、環境問題に対応した新しい事業やサービスなども展開していきたなと。

こうしていろいろと展望を語っていますが、もしかしたら私の好きなネイルや美容の事業に挑戦する日が来るかもしれませんし、今後どんなことに取り組むのか、正直まだ私自身にも分かりません。ただ一つ言えるのは、アットホームで温かい社風だけは変わらずに、これからも進んでいきたいということ。株式会社レナトゥスは今後も、「お客様からのご期待に添えるような施工を行う」というビジョンを大事にしながらも、そのときどきの変化を柔軟に受け入れながら歩んでいきます。皆さんもぜひ一緒に挑戦していきましょう!

(文:朝川真帆 写真:朝川真帆 編集:おのまり、いしかわゆき)

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