神奈川県看護賞 中区内の病院から2人
「第60回神奈川県看護賞」の贈呈式が5月14日に行われ、保健師2人、助産師1人、看護師7人の計10人が表彰された。中区から選ばれた、かながわクリニックの弘中千加さんとみなと赤十字病院の間瀬照美さんを紹介する。
児童虐待防止に一役(弘中千加さん)
神奈川県採用の保健師として9年ぶりに受賞。「想定外でしたけど、県の保健師として賞をいただけたことが嬉しい」とほほ笑む。東京都出身で22歳から神奈川県に入庁。保健師として県内の様々な保健福祉事務所で県民の健康増進に向けた取組みや感染症の対応などを行ってきた。39年間勤め上げ、昨年退職。現在、(公財)神奈川県結核予防会の看護部かながわクリニック=元浜町=看護科科長を担う。
保健師として県内で初めて児童相談所に配属された。県内の他の児童相談所にも保健師が順々に配置されていく方針のなかで、保健師の役割や業務の整理が求められた。「かなりのプレッシャーでしたね」と話すが「学校や家庭など何かあれば何でも同行させてもらいながら整理していきました」と振り返る。
この経験を生かし平塚保健福祉事務所では、児童虐待を防ぐために地域の仕組みづくりに奔走した。児童相談所と産科医療機関、行政などの多機関で連携し、妊娠期から母子ケアを行うため、「リスクアセスメントシート」を作成したモデル事業を実施。児童虐待防止が出産前から取り組める事例として県の事業化にまで発展した。
昨年度は人材育成に力を入れ、研修を県内各地で実施。「『誰も取り残さない』という行政の保健師の役割が広まれば」と後進に期待する。
体制構築し人材育成(間瀬照美さん)
「自分の功績というよりも、現場で尽力する職員一人ひとりの活躍の集大成」と話す。根岸にあった前身の横浜赤十字病院時代を含め、横浜みなと赤十字病院=新山下=に40年近く勤務。現在は副院長兼看護部長として活躍する。
鹿児島県出身。助産師だった祖母の家で見た医学書がうっすらと記憶に残る。進路を意識し始めた高校時代、「毎日が違う日々を過ごしたい」と、日々違う患者、違う病気に対応するイメージのあった看護師を志した。
長女出産と同時に看護師長に。毎日が精一杯で「いつも辞めたいと思っていた」と苦笑する。だが、個々の得意分野を見ながら組織を形成する中で、スタッフの成長は純粋な喜びとなった。その成長とともに、組織もアメーバのように進化していくのを目の当たりにし、マネジメントの面白さに目覚めた。
赤十字の「人が人を救う」という使命を胸に、国内外の災害救護活動の派遣・支援体制の構築にも尽力。「派遣できる人材は、これも適材適所で、時間をかけて育てないと」と話す。
「自分のテーマはやっぱり教育。人を教育しないと組織は良くならないし、いい医療を提供できない」ときっぱり。赤十字グループ内にとどまらず、地域のネットワークづくりにも貢献し、後進の背中を支え続ける。