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『サンダーボルツ*』はアメコミ映画の常識を変えるか ─ 強さだけじゃない、新たなヒーロー像打ち立てる

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(MCU)『サンダーボルツ*』は、アメコミ映画の潮流を変えることになるかもしれない。

本作で描かれるのは、過去に悪事を犯し、傷つき、トラウマを抱え、敗北し、ヒーローに決してなれなかった人々だ。決して世間から称賛されることのない、後ろめたい過去を抱えた彼らは、本作で予想外の絆を深め、人を助けるヒーローとして立ち上がる。

この美しい物語は、これまでのアメコミ映画とは性質が異なっている。1970~1980年代の『スーパーマン』映画で描かれたのは完全無欠のヒーロー。2000年代の『スパイダーマン』や『X-MEN』では、欠陥や葛藤を抱えたヒーローが登場した。そして2025年、『サンダーボルツ*』は、善い行いや人助けをするのに、必ずしもスーパーヒーローになる必要はないと説く。

(c) 2025 MARVEL

(c) 2025 MARVEL

今から20年か30年後、この映画はアメコミ映画の流れを変えた一作として振り返られることになるのではないか?筆者が本作監督のジェイク・シュライアーにインタビューで尋ねると、彼は「ヒュゥ……」と声を鳴らして、謙虚に答えた。

「とにかく良い映画になってほしい、それを目指していました。それで何か良いことが起これば、それはとても嬉しいことです。でも、あまり遠い未来のことは考えたくありません。とにかく、一生懸命働く皆さんと本作を作れたことを嬉しく思っています。この映画には新しいアイデアや新しい視点を取り入れようとしました。もし共感してもらえたなら、僕たちにとって大きな意味があることだと思います。」

ジェイク・シュライアーという人物にあまり馴染みのない方も多いだろう。彼はA24ドラマ「BEEF/ビーフ」で、激しい人間ドラマを切り取って話題を集めた。アメリカにおけるアジア系コミュニティに焦点を当てたこのドラマは、日常の交通事故をきっかけに激しい争い(=ビーフ)を繰り広げる男女を、生々しく、馬鹿馬鹿しく描いた。同シリーズは2023年のエミー賞作品賞 (リミテッド・シリーズ部門)やゴールデングローブ賞テレビドラマ部門作品賞を初め、数々の賞を総なめにしている。

実は『サンダーボルツ*』には、「BEEF」脚本家のリー・ソンジンも参加。さらに、プロダクション・デザイナーのグレース・ヤン、エディターのハリー・ユーンも参加している。「ですから、あのドラマのDNAがたくさん活きています」とシュライアー。「ソンジンが『BEEF』シーズン2の仕事に戻ってからは、ジョアンナ・カロがたくさんの脚本ドラフトを書いてくれました」。ジョアンナ・カロとは、またゴールデングローブ賞やエミー賞の常連である大人気シリーズ「一流シェフのファミリーレストラン」を手掛ける脚本家だ。

「『BEEF』『一流シェフのファミリーレストラン』両作とも、コメディともドラマとも定義するのが難しい。『サンダーボルツ*』もそうなるべきだと思いました。そういった両極端なものが本作でも機能するはずだと考えたのです」とシュライアーは、本作が持つ独特の作風の起源を明かしている。

『サンダーボルツ*』が提示したのは、スーパーヒーロー映画という枠組みの中で、いかに“人間の物語”を描けるかという試みだ。シュライアー監督が手を組んだのは、「BEEF」や「一流シェフのファミリーレストラン」など、ジャンル横断的に感情のドラマを描いてきた作り手たち。MCUの一作でありながら、テレビドラマの語法や心理描写の細やかさが持ち込まれた本作は、シリーズの中でも異色の存在だろう。これは単なるシリーズ内の一作ではなく、今後のMCUにおける“語り口”の更新を示唆する一手となるかもしれない。

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