2億年以上姿が変わらない生きた化石<カイエビ> 独自のエコな生態とは?
田んぼの中には様々な生き物が暮らしています。その中には、数億年間姿が変わらない生きた化石「カイエビ」もいます。
田んぼは人為的な環境で、生き物のために作られているわけではない場所ですが、なぜ生きた化石が田んぼの中で生きていけるのでしょうか。
カイエビの生態
カイエビは田んぼや小さな水たまりに生息する甲殻類です。化石でもその姿のままで発見され、2億年以上前から同じスタイルで生き続けている、ある意味完成された生命であるといえるのかもしれません。
見た目は、まるで貝にエビが挟まっているようなカブトガニのような形で、名前の由来とされています。
泥を食べて生活することが多く、小さな脚を使い水の中をすばやく泳ぐ姿はじつにキュート。悠久の時を超えるロマンチックな存在であることを忘れてしまいます。
カイエビの卵はとても丈夫
カイエビの卵は丈夫で耐久卵とも呼ばれ、泥の中に産み付けられてそのまま水が干上がっても数年間生存可能といわれます。
カイエビの卵は、雨が集中する5月から6月までそのまま土の中で休眠して過ごし、大雨や水田の灌漑で水が供給されるとふ化します。水のある環境を好むため、田植えの時期によく見られるのです。
寿命は約30日から50日と短めで、6月から7月頃に繁殖期を迎え、一生を終えます。
カイエビのルーティン
カイエビは、北から南まで日本のいたるところに分布しています。田んぼや水たまりをはじめ、農業地帯に生息しています。
水が豊富な時期には活発に動き回りますが、水がなくなると卵の状態で何年も生き延びます。
この強力な生存能力を持つ独特な生活サイクルこそが、カイエビが数億年もの間ほとんど姿を変えず、田んぼのような環境でも生き続けられる秘密といえるでしょう。
乾季になると卵が休眠状態になり、雨季になると一斉にふ化するというルーティンを繰り返します。
環境に大きな変化をもたらす水、つまり雨に適応するための理想的な仕組みとなっているカイエビの生活史。カイエビの生存戦略は、果てしなく長い年月を生き抜くのにちょうどよかったのでしょう。
外来種から身近な種までさまざま
日本にはいくつかの種のカイエビが生息しています。その中でもミナミカイエビやニホンカイエビなどがよく知られています。
これらのカイエビの種は、それぞれ異なる環境に適応しており、地域によって微妙に特徴が異なります。
アメリカカイエビという外来種も日本に定着しつつあり、国内の生態系に影響を与えているとされています。日本ならではのイメージがありますが、じつはグローバルです。
カイエビを飼育してみよう
カイエビは比較的簡単に飼育することができ、短い寿命ですが、家庭でその成長を楽しむことができます。カイエビ独自のエコな生態は、田んぼの生物について学ぶのにもってこいです。
飼育には水槽ときれいな水、底砂が必要です。食事はもちろん、なにより適度な温度と光が必須となります。
餌は乾燥アカムシや酵母菌が定番で、水温25度をキープするのがコツ。気を付けるべき点はほかにありますが、とりあえずこれらを意識すれば安心して飼育をスタートできます。
卵から成長する様子を観察すると、子どもたちに自然の不思議やわくわく感を与えてくれます。大人も童心に帰り、学びの機会を提供してくれます。一度飼えば、愛着が沸くこと間違いなしですよ。
(サカナトライター:おっしー)