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若手世代に広がる「静かな退職」 上司ができることは?

キャリコネニュース

画像はイメージ

私が担当する管理職向けマネジメント研修では、「若手が出世したがらず、必要最低限の事しかやらない」とか、「モチベーションが低くて、仕事の報連相も無くて困っている」といった声をよく聞きます。

若手へのこうした悩みは今に始まった事ではないように思われますが、最近ではこのような状態のことを、「静かな退職」といった言葉で言い表すようです。今回は、この「静かな退職」状態に入ってしまう若手に対して、上司ができることを紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

企業の古い組織体質、前時代的なマネジメントに「あきらめと無関心」

「静かな退職」は2022年に米国で生まれた言葉で「Quiet Quitting」の日本語訳になります。会社を辞めるつもりはないが出世を目指ざすこともしない。必要最低限のことだけをやり、プライベートを優先する状態とも言われます。

Great Place To Workの2024年の調査では、働き始めた後で静かな退職を選んだという人が7割を超え、その理由としては「仕事よりプライベートを優先したいと思うようになったから」とか、「努力しても報われないから」といった声が挙げられています。

なぜ、このような状態になってしまうのでしょうか? ポジティブ心理学で有名なマーチン・セリグマンの心理学理論に、学習性無力感といったものがあります。犬の実験が有名ですが、檻に入れた犬に軽い電気を流し、パネルを押すと電気が止まることを学習させます。

その後、パネルを押しても電気が止まらない状態を作ると、最初のうちはパネルを押す行動を繰り返しますが、電気が止まらないことに気がつくとパネルを押さなくなり、その場でじっと蹲って我慢するようになります。押しても無駄だという諦め感や無力感が醸成されるのです。

この学習性無力感が若手の静かな退職の理由の一つかと思われます。日本の低成長に対する悲観的な思いや、入社前に抱いていた希望と実際の仕事とのギャップ、そして会社の古い組織体質や前時代的な上司のマネジメントに対し、若手は「あきらめと無関心」を感じて静かな退職状態に入ってしまうのです。

若手の「静かな退職」への3つの処方箋

人の行動はセルフイメージによって変わっていきます。そして、そのセルフイメージを構成するものがWILL/CAN/MUSTです。普段の意識の中でこの3つの要素が低下することで、若手は静かな退職を選択するようになります。要素ごとに、上司の関わり方を解説していきます。

処方箋(1):MUST(役割への使命感)を上げる

会社の理念やビジョンに対する自組織の目的と目標を、上司自身の言葉に落とし込んでいきましょう。借り物の言葉は若手には響きません。数値的な目標だけでなく、仕事の意義や社会的な価値を言語化していくのです。そして、1対1の面談の中で、若手が入社の当時に抱いていた思いと現在の仕事が繋がっていることを、組織の目的と目標をベースに伝えていきましょう。

処方箋(2):CAN(能力や強み)を上げる

人の成長は7割が仕事、2割が上司の薫陶、1割が研修によるものと言われます。7割の成長を導く仕事においては、部下の仕事を細かく因数分解をして小さな階段を設計します。そして、一段ずつ登りきるといった達成経験の数を増やしていきましょう。大きな仕事の1回の達成経験より、小さな仕事の多数の達成経験が人の成長実感を高めるからです。

上司の薫陶においては、上司自身の失敗経験やかつての上司から聞いた今でも通用する仕事の進め方を伝えていきましょう。研修は1割の成長というものの、その時間から考えると効率が高いと言われます。若手のうちはテクニカルスキルを中心とした研修に参加させましょう。

処方箋(3):WILL(働きがい)を上げる

WILLの中には、モチベーションの源泉である価値観(仕事で大切にしていること)が含まれています。心理学の世界では、人の価値観は成長/貢献/絆/お金/権限/家族などといった言葉で深層心理に存在していると言われています。

まず、その若手が仕事で大切にしていることを信頼関係をベースに聞いていきます。そして、その価値観を感じられる仕事の進め方を、一緒に考えていきましょう。

以上、若手の静かな退職を防止する方法を、上司が関わりやすい順番に紹介してみました。日常の中で、自組織の若手部下に足りないなと思う項目から関わりを始めてください。若手が静かな退職にはいることを防止し、主体的に仕事を進められる人財に溢れる職場醸成に役立ててください。

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