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【若者の投票率向上】どうすれば投票したくなる?ワークショップで分かった学生の本音

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「若者の投票率向上」。先生役は静岡新聞の市川雄一ニュースセンター専任部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年10月21日放送)

(山田)今日は、若者と選挙というお話です。

(市川)衆院選公示日の10月15日に、選挙と投票を考えるワークショップが静岡市葵区の静岡デザイン専門学校で開かれました。僕が企画と司会を担当し、3時間やってきました。この催しは公示日を狙って開いたわけではなくて、今年の早い時期から日程が決まっていたものです。

(山田)市川さんは、ずっと「若者と選挙」をテーマとしてやられてますよね。

(市川)昨年、静岡市選挙管理委員会が立ち上げた静岡市の「どうする投票率研究会」は、若者の投票率をどうにかアップさせようということを考える専門家の会議で、委員として僕も参加させていただきました。

そのとき僕が「投票所にフォトスポットを設置してそこで若者がバズるような写真を撮って拡散してくれたらいいんじゃないか」と、どうやら言ったらしいんですよ。それを市選管が採用することになり、フォトスポットのデザインを静岡デザイン専門学校の学生に依頼したんです。

(山田)そうだったんだ。

(市川)静岡デザイン専門学校から「フォトスポットのデザインなどを考える前に、投票とか選挙について考えるワークショップを開いてみたい」という話があり、そこで僕のところに企画や司会の依頼が来て、15日に実施したというわけです。10月22日付の静岡新聞の終面を使って、その特集を組ませていただきました。

ワークショップには静岡デザイン専門学校のグラフィックデザイン科の2年生31人が参加してくれました。2年生というと、だいたい19歳から20歳になる年で、もちろん選挙権はある年齢です。

今年の大きな選挙では、県知事選がありましたよね。県知事選に投票に行きましたかとみんなに聞いていくと、「行ってない」と言う人ばかりでした。なかなか行った人が見つけられず、ようやく2人見つかったのですが、その2人の行った理由は「家族と一緒に行った」というものだったんですよね。

家族が投票に行っていると、子供が投票に行きがちだというデータもあるので、それが実証されたとも言えますが、多くの学生が県知事選に行っていなかったという事実もありました。ほとんどが投票未経験だったので、「衆院選にぜひ行ってくださいよ」という話もしたんです。

投票に行かない。そのワケは?

(山田)みなさんの意識ってどうでした?

(市川)やっぱり選挙に対する意識が高いとは言えない。投票に行かない理由を尋ねると、そもそも選挙があることを知らなかったと。

(山田)僕、それ一番だと思うな。

(市川)県知事選なんて、あれだけ大々的にテレビや新聞でやってて知らないのかって僕なんかは驚いちゃうんですけど。あとは、「時間がなかった」という理由です。他のことで忙しいということですが、朝から晩まで期日前投票をずっとやっているんですけどね。

あとは「政治家に良いイメージがない」という理由です。もう完全な政治離れということですね。そういったことを言う学生がやっぱり多かった。

どうすれば投票に行きたくなる?

(市川)ワークショップの中では、どうすれば投票に行きたいと思えるか、あるいはどうすれば投票率が上がるのかについて、みんなで話し合ってもらいました。

5、6人ずつぐらいのグループに分かれて話した後、代表者に発表してもらうワークショップをやりました。その中で一番多かった意見は、利便性の向上なんですよ。つまりスマホで投票できるようになれば、それはやるよと。

(山田)ネット投票。

(市川)意見としては一番多かったです。またキッチンカーとか石焼き芋のように、向こうから投票箱がやってきてくれれば投票しますよと言う声もありました。学校とか会社が健康診断とか一斉にやったりしてるじゃないですか。ああいう形で学校や企業に投票箱が来て、学生や社員に投票させるという案も。これ、全部利便性の向上ですよね。

(山田)投票行くのが面倒くさいってことですね。

(市川)そうなんです。やっぱりそこが一番大きな理由として挙げられてましたよね。投開票日の投票は基本的には自分の家の近くの学校や公民館で投票できるので、歩いて行けるような場所なんですが、期日前投票って市役所ですね。利便性の問題は、確かにあるんですよね。

例えば今回は10月27日が投開票日ですが、季節もいいし、旅行にも行きたいですよね。週末に1泊2日でどこかへ行っていたら、日曜日に投票って難しいですよね。

(山田)リアルな意見ですね。

何を基準に投票する?

(市川)「実際に投票するってことを想像してください」という話もして、その時何を基準に投票先を決めますかと投げかけてみました。性別なのか、政策なのか、容姿なのか、人柄なのか。その場で話し合ってもらったんですが、「政策」と言うんですよ。

(山田)そこは政策なんですね。

(市川)その辺は結構しっかりしていて、「国会で政治のことを決めるので、政党が弱いと発言がいくら良くてもなかなか国会では反映されないから政党が大事だ」っていうようなしっかりとした意見も出ました。決して政治に関心がないわけでもないんだろうな、という感触もありました。

(山田)僕はてっきり、イケメンだったりとか、元アイドルみたいな、そういうところへ来るのかなと思いきや…。

(市川)意外と「中身が大事だよ」っていうことを言っている方が多かったですね。

自分の考えに近い候補者が見つかる「ボートマッチ」

(市川)投票や選挙に直接関心を持ってもらおうと思って、模擬投票とかボートマッチなんかもやってみました。

静岡市の選挙管理委員会主催のイベントだったので、模擬投票には実際の投票箱や投票用紙を持ってきていただいて、そこで実際に投票してもらったんですよね。

(山田)それは皆さんスペシャルな体験でしたね。

(市川)架空の候補者に、憲法とか少子化とか原発とか選択的夫婦別姓みたいな政策がそれぞれあるという仮定をし、それで投票してもらいました。

(山田)しかも、まさに今問題になってる政策。

(市川)そう。一番関心が高いところかなと。実はこれ、裏を言うと、実際の政党の公約をはめてたんです。学生には投票前に言わなかったですけどね。

その結果、ある政党がトップに立ったんですが、それは新聞でもこの場でも言うことはできない。公職選挙法に人気投票の公表の禁止という規定があるんです。

(山田)そうなんですか。

(市川)選挙に関して人気投票をやって公表してはいけないという法律があります。例えば「自民党と公明党と日本維新の会と立憲民主党の4党のどれがいいですか」と学生に聞き、そこで「自民党がトップでした、何票でした」みたいなことをやったら、これは人気投票ですよね。それを公表することが禁じられてるんですよ。

報道だけではなく、例えば公民館などで人気投票をして、不特定多数の人に公表するのはダメなんです。おそらく、YouTuberがやっても、ダメですね。なかなか知らない人が多いと思うんですけど。

(山田)ボートマッチってのは?

(市川)静岡新聞社が公開しているボートマッチは、例えば原発に対する賛否など、色々な質問にインターネット上で答えていくと、最後に「あなたはどこに住んでますか」と表示され、静岡1区などと入れると、そこに立候補している5人の立候補者とのマッチ度が出るんです。自分が答えた質問と、その立候補者から既に僕らが回収したアンケート結果を反映させて、誰の考え方に近いかをパーセンテージで出すんですよ。それがボートマッチです。

静岡新聞では前回の知事選から始めたんですが、衆院選でも作って、実際に学生にも体験してもらいました。

(山田)わかりやすいわけですね。自分がどの候補者と近いかというのが。

(市川)この人と20%、この人と15%、この人と3%みたいな形で表示されるんですが、一つの参考になるということですね。昨年開いた「どうする投票率研究会」でもボートマッチをやった方がいいんじゃないかっていう意見は若者の方からもあるようです。それで今は報道機関でやってないところがないぐらい、流行ってますね。

投票で自分の思いが表現できる!

(山田)今回、若者たち、しかもデザインを勉強されているクリエイターの卵たちと一緒に選挙の話をして、市川さんが感じたことはどういうことですか。

(市川)投票っていうものの大事さを伝えるのって、難しい。「どうする投票率研究会」の会長だった谷口将紀東京大大学院教授も「投票率向上に特効薬はない」という話をされています。

フォトスポットを作っても投票率は向上しないかもしれないし、バズらないかもしれない。それでも、この学生たちにはこういったことを通じて社会参加意識も芽生えると思うので、そういった意味では少しは成果があったのかなと思います。このことは10月22日付の紙面のコラムにも書かせてもらいました。

印象的だったのは、終わった後に何人かの学生に「どうだった?」と話を聞くと、ポツリポツリと「私、口下手だからあんまり考え方が、言えない」などと言う人がいたこと。

それを聞いたときに、「これ、なかなか大事だな」と思いました。みんなが政治家のように雄弁ではない。だけど、心に秘めているものはある。言葉では表現できないけれど、投票することは表現になるんですよね。これは誰しも与えられている等しい権利で、それを駆使しないのはもったいないんじゃないかっていうことは感じました。

(山田)まさに今回はデザイン専門学校ということで、普段から表現の活動をされてる学生ですから、通ずるところもあったかもしれませんね。若者がどういうふうに選挙に対して考えているのか。みんなで一緒にこのことを考えていきたいなと思います。今日の勉強はこれでおしまい!

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