【鎌倉市】24時間走の日本代表に 麵屋こころ大船店の向山由美子さん
ビビッドピンクのポニーテールに、レースやフリルのウェアが印象的な名物ランナー、麺屋こころ大船店の女将・向山由美子さん(46)が10月18日にフランスで行われる「IAU24時間走世界選手権」の女子日本代表に選ばれた。競技名の通り、24時間で走った距離を競うウルトラマラソンの一種。向山さんは、選考に関わる5月の大会で自己ベストの228・213Kmを記録。複数大会での結果を合わせて、初の日本代表に輝いた。
未経験から才能開花
元々特に運動はしていなかった向山さん。約8年前、「海まで走って行けたら気持ちいいだろうな」と思い立った。最初は約7Kmで疲れ果ててしまったが、続けるうちに体力もつき、距離も延びた。「ごはんとお酒が大好きで、走ればカロリーを消費できるなと。続けていたらエスカレートしちゃって」と笑う。
「ゆっくりならいくらでも走れそう」という向山さんの話を聞き、ランナー友達が誘ってくれたのが、42・195Kmを超えるウルトラマラソンだ。2021年に初のウルトラマラソンで70Kmに挑んだ結果、「あれ?全然走れる」と自分の走力に気付いた。
8時間走の大会に出たところ、初出場で3位になり表彰台へ。その時の1位が24時間走の日本代表だった。「自分ももっとできるのでは」と、さらに長距離に挑戦。数カ月後には147Kmまで距離を延ばし、大会1位に輝いた。「24時間走もいけるかも」
しかし、その後、涙が出るほどの頭や体の痛みに襲われた。「ウルトラマラソンの洗礼かと思って我慢していたら、病院で鉄分が空っぽだと怒られた」。現在は、薬での補給で元に戻り、「『限界』を経験したことも財産」と笑う。
目標持たずにマイペースで
週に3日ほど、国道1号を西へ走り、海沿いを通って戻る約40Km、4時間半前後のランニングをしているという向山さん。語学講座やオーディオブックを聞いたり、考え事をしたり、「ぼーっとする時間をソファに座ってではなく、走りながらやっているようなもの」という。
「途中で甘いものを食べたり、海の家でお酒を飲んだり。目標を持たずつらくないペースで」がモットー。気分の上がるかわいいウェアは、テニスやゴルフのもの、レースのレギンスなどを組み合わせて楽しんでいる。「最近は黄色も好き。ランナー用と比べたらきっと走りにくいんですけど、ここは譲れない。美意識の高い友達も多いから」ときっぱり。
10月の渡仏費が高額なため、クラウドファンディングを店で実施中だ。「お金はかかるけれど、日本代表になんてなかなかなれるものじゃない。立ち飲み屋さんでも盛り上がるんですよ」。茶目っ気たっぷりに語る一方で、「日本代表になったことをきっかけに、声をかけてくれるお客さんも増えた。いろんな人が応援してくれていると実感できて本当にうれしい」。そう話す目には涙がにじむ。
世界選手権でも、お気に入りの華やかなウェアに身を包み、いつもの笑顔で「走ることを楽しむ」のが目標だ。