大宮さんぽのおすすめ9スポット。おおらかさが魅力! 雑多魂がこの街のダイナミズム
新幹線も止まる一大ターミナルで鉄道の街と言われるが、「大宮は浦和の後発」なんて街の人はあっけらかん。そんな大らかな街の魅力は何なのか。大宮駅周辺の西も東も巡ってみれば、きっと分かってくるはずです。
『むっちといぶきのコッペパン』店名の主たちとも会えるかも!?
愛犬の名を付けて昨年末に開いた手作りコッペパンの店。目の前のバス停の始発時間に合わせ、藤田光一さんが夜からパンを作り、バトンタッチで妻・美由紀さんたちが約20種類もの具材を調理しサンドする。小ぶりで素朴な味わいなのでパクパクいける。
・6:00~15:00(売り切れ次第閉店)、日・祝休。
・☎048-644-4737
『大宮コーヒーロースターズoasis』団地の中からコーヒーが香る!
郵便局職員宿舎のリノベ物件「POST OMIYA」で、10種類ほどのコーヒー豆を焙煎するカフェ。食事も充実し、大宮ナポリタンはリングイネの生パスタを使って2種類(1100円と1150円)あるので味わいを比べてみて。
・11:00~18:00(木~日は~22:00)、不定休。
・☎048-782-8776
『HAIR SALON Mitsuwa』自転車屋にしか見えない!?
1947年創業、3代目・細田英樹さん(右)が家族で営む店は外にも中にも自転車が何台も! 「特に弟(直樹さん・写真左)の趣味で、2018年頃からこんな調子。自転車の相談にも乗りますよ」。カット4950円。
・9:00~19:30(日は~18:00)、月・第2・3火休。
・☎048-643-0353
『HUMANITIES CAFE fudoki』真っ白な空間で、人文学を少々
元学芸員の吉原啓さんが、飲食を楽しみながら人文学への興味が沸く場を作りたい、と開店。喫茶も食事も豊富なメニューには、月替わりで万葉集の歌をテーマに表現する、万葉の歌クリームソーダ880円、スイーツプレート1700円が!
・11:30~20:30LO、水・木休。
・☎048-729-6088
『大宮製油』こだわりの油が今でも買えます
創業は明治39年(1906)。昭和初期築の建物では、昔ながらのゴマ油をはじめ、菜種油、米油など、厳選した油を販売。量り売りも健在だ。製油工場跡の大宮ガレージは「県内初の立体駐車場でした」と4代目の逸見裕一さん。
・9:00~18:30、無休。
・☎048-644-3225
『インディアンモーターサイクル埼玉』参道脇はアメリカンバイクの聖地!?
氷川参道の脇に大型バイクがずらり。昭和18年(1943)創業の地元バイク店が営む「インディアン」の代理店だ。「いかついけど乗るととてもバランスが取れて扱いやすいんです」と店長の牧野剛昌さん。隣の整備工場ではハーレーの中古も扱う。
・10:00~19:00、火・第1・3水休。
・☎048-729-8682
『お食事カフェ nicai』住宅地の中の山小屋へ
山好きの山崎克也さんが一軒家を改装した山小屋のような店。スキレットなどを使った山定食は少しずつ増えて現在8合目(8種類)まであり。写真は7合目(トマトカレー)、2合目(豆乳雑炊)各1250円。外のテントでも飲食OK!
・11:00~17:30LO、火・水休。
・☎048-788-3640
『goto』は、「何これ!?」でいっぱいの宝の部屋
ギャラリー勤務経験もある後藤利恵子さんがアンテナを張って見つけた作家のクラフトや国内外の雑貨を扱うセレクトショップ。「『売れるかな』より、『何これ⁉ ほしい!』で選びがちなんです」。踏み入れば、好奇心をくすぐられるものばかり。
・11:00~19:00、火休。
・☎048-708-2482
『大西屋』古物と趣味のものに囲まれ一献
4代目・堀江利武さんが守る大正時代創業の酒屋。趣味のプラモや自作の車模型、酒徳利や木箱、ブリキ看板、振り子時計などの古物に囲まれ時が止まったような店は、18時頃から角打ちに。日本酒300円~。太宰治が酒を購入した逸話も残る。
・10:30~21:00、不定休。
・☎048-641-0703
都会感とのどかさのコントラストのある街
駅東口の再開発(大宮門街)が済んだと思えば、西口で1つ2つとまた開発が。なんとも目まぐるしい大宮だが、古いものを壊さず生かす姿も目にできる。住宅地の路地には、昭和40年代の団地を活用した「POST OMIYA」。1階の『大宮コーヒーロースターズoasis』に入れば、低い天井に金属のドアに窓、と団地の要素。焙煎室があるのは元浴室だ。
「ここに昔住んだという方も来ましたよ」と店主の坂部俊夫さん。店のブレンドには大宮サンセットと大宮パークライフ、ケーキにもパスタにも“大宮”の名が。「地元だし、好きだから」とさらりと言える地元愛がいさぎよい。
拡張工事中の道沿いの住宅に開かれた『むっちといぶきのコッペパン』では、揚げ立てのあげパンを頬張る。
「都内に出なくても買い物に困らない。大きなターミナル駅で交通の便もいい。大宮は都会感とのどかさのコントラストのある街です」と店主の藤田光一さんは言う。
「氷川神社があるし周りには遺跡もたくさん!」と、『HUMANITIESCAFE fudoki』の吉原啓さんは研究者目線で街の魅力を教えてくれる。
鉄道の発展までは何もなかった街だけど
スクラッチタイルの瀟洒(しょうしゃ)な建物を曳家(ひきや)で残した『大宮製油』では社長・逸見裕一さんから昔話を聞く。ご先祖は幕末に岩槻城で職を失い、曾祖父が油のしぼり方を習得して大宮で創業したとか。「大宮は雑多な街。商売になれば何でもやる!って人が集まってできた街だと思います」。なんとたくましい。そうだ、大宮は鉄道で発展するまで何もなかったと『大西屋』でも聞いたっけ。「国鉄の土地があったから大きな駅になったけど、鉄道は浦和の後発なんですよ」なんて地元っ子の常連さんはからっと言うけれど、そこには愛が見え隠れ。
「何もない」から、県最大規模の商業地へ。これが街のダイナミズム。だから大宮よ、これからも雑多であれ!
取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2024年5月号より