自宅は破壊、いとこ2人が亡くなり…友人を思い目指す表彰台!記者が全国大会へ
パレスチナ・ガザ地区での戦闘が始まってから、10月7日で1年。
以前もお伝えしたHBCの金子将也記者(23)とガザの友人の話題です。
▼16歳の友人が亡くなり…「私たちの夢は壊された」それでもバーベルをあげる青年 ガザから北海道の記者に届いたメッセージ
テレビ局の記者としてはめずらしい国民スポーツ大会の北海道代表になった金子記者。
戦闘により大会に出場できなかった友人の悔しさを胸に大会に臨みました。
パレスチナのガザ地区では、今も戦闘が続いています。
「一番つらかったのは、2人のいとこを亡くしたことだ」
現地の悲惨な状況を語るのは、ガザ地区からエジプトへ避難したアブデさん(23)とモハメドさん(23)です。
アブデさんは、パレスチナを代表するパワーリフティングの選手で、2年前の世界学生大会では、銅メダルを獲得しました。
2024年の世界大会にも出場する予定でしたが、戦闘により断念。
HBC報道部の金子記者は、アブデさんの悔しさを胸に、国民スポーツ大会に出場しました。
9000キロ離れた友人がトレーニングの力に
普段は警察担当の記者として、道内の事故や事件を取材している金子記者。
月に数回ある泊まり勤務を終えて向かった先は、トレーニングジムです。
金子記者のもう一つの顔。それはパワーリフティングの選手。
2023年の世界ジュニア選手権大会では26位でした。
パワーリフティングは、脚の力を試す「スクワット」、上半身の力を試す「ベンチプレス」、背中と足の力を試す「デッドリフト」の3つの種目の総重量を競います。
金子記者は2024年、国民スポーツ大会の北海道代表予選で優勝。本戦への切符を手にしました。
練習は、1日2時間を週5日。トレーニングが終わり、平日は帰宅するのが午後11時半。
料理も手早く済ませます。
「睡眠時間が命」と話す中、常に時間との勝負です。
多忙な生活の中、トレーニングを続けられる理由のひとつに、9000キロ離れた友人の存在がありました。
避難所でトレーニングしているのは、ガザ地区のパワーリフティング選手、アブデ・スカイクさん(23)。
戦闘により、自宅は破壊され、2人のいとこを亡くしました。
「ガザでの暮らしはとてもつらかった。毎日多くの人が病気で亡くなっていた」
アブデさんは4月、パレスチナのスポーツ協会から支援を受け、父親とエジプトに避難しました。
もう一人の友人モハメッドさんはアブデさんが生きてガザを離れられたことを「奇跡だ」と話します。
ただ、母親や妹は今もガザ地区に残されています。
「エジプトに避難できた人は、思っているほどいい人生を送れていない。常にガザのことを考えている。家族を残して避難できたことに、罪悪感を感じている。」
この状況で、ビザを取得するのも難しく、2024年の世界大会には出場できませんでした。
金子記者はこれまで、アブデさんの避難生活や道内でデモ活動する団体を取材してきました。
「アブデの頑張っている姿をSNSで見て、練習をやらなければと思う。アブデや亡くなった彼の友人のためにも、必ず勝ちます」
表彰台への条件を超える力が…!
佐賀県で開かれた国民スポーツ大会。
金子記者が出場する93キロ級には、フィジカルの強い選手が揃います。
まずは、得意とするスクワット。3回目、270キロを立ち上がれば3位圏内も見えてきます。
こちらはなんとかクリア。
課題のベンチプレスは、自己ベストタイの157.5キロを押し上げますが、最後の165キロは惜しくも失敗。
この時点で金子記者は、3位の記録とタイ。
表彰台に上るには、最後の種目のデッドリフトで270キロはあげなければいけません。
ここも難なくクリア。
しかし、3位を争っていた選手が直後に300キロを引き上げ、金子記者は4位に…!
惜しくも表彰台に登ることはできませんでした。
「言い訳してはいけない。アブデが避難所でもトレーニングしている姿を見たら、自分も多忙な仕事ではあるが、彼と比べたら全然大したことないので、自分はもっとできると思う」
金子記者は試合後、アブデさんに結果を報告しました。
「結果は4位だった。トータルは697.5キロ。トータル720キロ上げたかったよ」
そう話すと、アブデさんは「試合当日は、なかなか思うようにいかないよね」と労ってくれました。
「エジプトで会えることを楽しみにしている」
「もちろんだよ」
アブデさんと、再び同じ大会に出られる日まで、戦争反対の声を伝え続けようと強く思ったという金子記者。
11月にはエジプトに行き、アブデさんと2年ぶりに再会して、一緒にトレーニングする予定だということです。
“パワーリフティングで日本一を目指し、アジア大会でアブデさんと対決したい”
そのためにも一日も早いガザでの停戦と、スポーツができる平和な日がなによりも必要です。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年10月7日)の情報に基づきます。