大滝詠一、山下達郎、杏里…【80年代シティポップ夏ソング】屈指の名盤から12曲セレクト!
歌謡ポップスチャンネル「Re:minder SONG FILE」vol.2〜 80年代シティポップ夏ソング
夏のドライブの際に欠かせない必需品だったシティポップ
毎年夏の訪れが待ち遠しかった。ジメジメした梅雨が明けると待ちに待った夏。海や山のレジャーはもちろんのこと、街中でも快適な夏を過ごすために必要不可欠なのがサマーミュージックだった。現在のように四季の移り変わりが曖昧ではなかった80年代は、音楽にも明確に季節感が反映され、夏の歌といえば躍動的でポジティブなリズムとメロディ、あるいは清涼感を促す垢抜けた雰囲気の曲がヒットチャートに並んだ。主にその後者の曲が、現在ではシティポップと呼ばれ、当時を知らない世代や海外のファンにも支持され続けている。
そういった音楽は、80年代以前から呼ばれていた “ニューミュージック” の範疇に属するもので、基本的に職業作家による歌謡曲に対して、シンガーソングライター系によるロックやポップスという立ち位置であった。当時の東芝EMIをはじめ、一部のメーカーが所属アーティストによるオムニバスアルバムなどで “シティポップ” とか “シティポップス” という名称を用いてはいたけれど、一般に浸透するまでには至らなかった。
それでも当時の若者たちは、そういった洗練されている都会的な音楽を敏感に察知し、愛好した。あくまでもシングル主体のアイドルや歌謡曲系と違ってアルバムが主軸だったため、LPから録音したカセットテープを車に積んで聴いた。大滝詠一『A LONG VACATION』や山下達郎『FOR YOU』は、1人の時も、素敵な異性や仲間と一緒の時も、ドライブの際に欠かせない必需品だった。
よりアーティスティックに変貌を遂げた松田聖子
アイドルの中でも松田聖子は別格で、いわゆるシティポップのアルバムと並べても遜色なかった。ファーストの『SQUALL』こそまだピチピチしたアイドルポップスだったものの、大滝詠一がサウンドプロデュースに携わった4枚目の『風立ちぬ』辺りから、よりアーティスティックに変貌を遂げ、夏のアルバムでは呉田軽穂こと松任谷由実が参加した1982年の『Pineapple』、レコード大賞のベストアルバム賞を受賞した『ユートピア』(1983年)に至っては、完全に他のシンガーソングライター系のアルバムに引けを取らないものとなる。
昭和の若者だった僕らにとって、ユーミンや達郎の音楽は、現実の恋物語にも、妄想の恋を思い描く際にも最適な恋愛の常備薬だった。だからこそ令和の今、それらがシティポップとして持て囃されているのは、嬉しいと同時になんだか面映ゆい気持ちになる。やはり僕らを奮い立たせてくれたサザンオールスターズも夏の風物詩ではあるが、当然シティポップではない。ロックでありつつ、極めて歌謡曲に近いものとして、国民的バンドにまで成長したのだった。どこか現実世界から逸脱しているシティポップとは異なる形で、常に大衆に寄り添ってきた音楽として評価されている。
自分の場合、80年代におけるリアルタイムの音楽の大半をユーミンとサザンで過ごしてきたミーハーの典型であるが、当然の如く他のアーティストの作品もたくさん聴いてきた。毎年しっかりと日焼けに精を出しながら、テレビやラジカセで聴いていたサマーソングはすっかり体の一部になっている。
愛着のある作品ばかりが並ぶRe:minder SONG FILE「80年代シティポップ夏ソング」
WOWOWプラスが運営する『歌謡ポップスチャンネル』で放送される、Re:minder SONG FILE「80年代シティポップ夏ソング」のラインナップも愛着のある作品ばかり。大滝詠一、山下達郎と並んで、今は亡き村田和人の名が見られるのが嬉しい。「一本の音楽」は当時CMソングとして注目されたものの、大きなヒットには至らなかった。どちらかといえば遅れての再評価になるだろう。サードアルバム『MY CREW』(1984年)で竹内まりやとデュエットした「SUMMER VACATION」も夏気分マックスの名曲だ。
「め組のひと」や「ふたりの愛ランド」はシティポップとは言い切れないかもしれないが、80年代の夏うたといえば真っ先に思い出されるヒットソングたち。杏里や中原めいこも間違いなく夏場に聴きたくなるアーティストである。シティポップ屈指の名盤として名高い寺尾聰の『Reflections』(1981年)からも欠かせないところだろうし、ミスターシティポップといえる南佳孝作のヒットソングや、シティポップの最重要作曲家である林哲司が手がけた、杉山清貴&オメガトライブももちろんラインナップされている。
それ以外の個人的に好きなシティポップの夏ソングは、竹内まりや「夏の恋人」「二人のバカンス」、南佳孝「スタンダード・ナンバー」など。あと、これはシティポップといえるかどうか判らないけれども、毎年夏が来る度に田中美佐子が出演していたPV(プロモーション・ビデオ)と共に思い出されるのが、オフコースの「夏の日」だ。後期オフコースでは、ラストシングルとなった「夏の別れ」も忘れ難い。稲垣潤一「夏のクラクション」や、井上陽水・安全地帯「夏の終りのハーモニー」然り、晩夏が描かれた切ない歌にも名曲は多いのだ。
Information
Re:minder SONG FILE「80年代シティポップ夏ソング」
ココロ躍る音楽メディア『Re:minder』が、毎回テーマを決めて珠玉のソングファイルをお届け。
▶︎ 放送局
歌謡ポップスチャンネル
試聴方法はこちら
▶︎ 放送日時
2024年08月28日(水)20:00〜21:00
2024年09月05日(木)00:00〜01:00
▶︎ 今月のテーマ
80年代シティポップ夏ソング
♪ 一本の音楽 / 村田和人
♪ THE THEME FROM BIG WAVE / 山下達郎
♪ カナリア諸島にて / 大滝詠一
♪ め組のひと / ラッツ&スター
♪ ふたりの愛ランド / 石川優子とチャゲ
♪ 気ままにREFLECTION / 杏里
♪ 君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。 / 中原めいこ
♪ 夕涼み / 松任谷由実
♪ HABANA EXPRESS / 寺尾聰
♪ セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)/ 郷ひろみ
♪ ふたりの夏物語-NEVER ENDING SUMMER- / 杉山清貴&オメガトライブ
♪ 夏のクラクション / 稲垣潤一
▶︎ 番組公式サイト
https://x.gd/Omw4n