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【静岡市美術館 の「写真をめぐる100年のものがたり」展】野島康三の写真は、絵画への挑戦状か

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の 静岡市美術館 で10月4日に開幕した企画展「写真をめぐる100年のものがたり 京都国立近代美術館コレクションを中心に」から。

米国の写真収集家アーノルド&テミー・ギルバート夫妻が収集した「ギルバート・コレクション」を中心に、19世紀末から現在までの68作家による約180点を展示 。

入口では「近代写真の父」とされるアルフレッド・スティーグリッツによる米ニューヨークの風景(1900年前後)、出口では地面から天上まで届こうかというやなぎみわ「案内嬢の部屋1F」(1997年)が目立っている。まさに「写真の1世紀」を被写体やカメラの技術進化とともに展覧する構成になっている。

コバーンの船舶が水面に落とした影に神秘性を感じたり、奈良原一高の「軍艦島」での取材に思いをはせたり、雑誌「LIFE」表紙にもなったカーシュによるウィンストン・チャーチルのポートレートに人間性を感じ取ったり。

一つ一つの作品を凝視した後に湧き起こる、感情の揺れの幅広さを自覚した。それはとりもなおさず、「写真」というメディア、作法、技術が人間の欲望と表裏一体の進化を遂げてきたことを表しているのではないか。

例えば、20世紀初頭に活躍した野島康三の、極めて絵画的な写真を見ると、スーパーリアリズムの絵画を裏返したような感覚に陥る。題名不詳とされた1930年の作品や、同じ年の「仏手柑 」は、果実を中心に置いた「静物画」のような趣。

独自の印画技法を用いて、あえて「現実には存在しない何か」に見えるよう、腐心している。このパラドックスがとても興味深い。「現実を正確に写し取りたい」という写真家ばかりではない、という当たり前の事情に、改めて思い至った。(は)

<DATA>
■静岡市美術館 
住所:静岡市葵区紺屋町17-1葵タワー3階 
開館:午前9時~午後7時(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
企画展料金(当日):一般1300円、大学・高校生と70歳以上900円、中学生以下無料
会期:11月17日まで

 

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