【横浜市港北区】地域防災拠点に携帯トイレ 市内18区役所で初
港北区は9月16日、区内の地域防災拠点に指定されている小中学校全29拠点に、「トイレスターターキット」を配備したと発表した。災害発生直後の避難所において、素早くトイレを確保するために必要となる備品をセットした同キットの導入は、市内18区役所で初の取組み。担当者は「自助・共助をフォローするアイテムになる」と期待する。
大規模な災害時には、断水などで避難所の水洗トイレが使用できなくなる可能性があることから、横浜市では下水直結式仮設トイレ(=災害用ハマッコトイレ)や組立式仮設トイレを備蓄しているが、使用できるまでに時間がかかるという課題がある。
区は防災事業の一環として、災害時のトイレ問題や携帯トイレの備えについて啓発をしている。災害発生時における初動対応の重要性が高まる中、避難所におけるトイレの円滑な運営を支援するためのトイレスターターキットをこのほど導入。内容物についての意見をもらうなど、NPO法人日本トイレ研究所(東京都)が協力した。
同キットの導入を発案したのは、港北区総務部総務課の渡部駿さんだ。渡部さんは2024年元日に起きた能登半島地震の被災地派遣に立候補し、同年3月に現地を訪問。被災者の話を聞き、トイレ事情や避難所における初動の大切さをまざまざと感じたという。「組立式トイレを組み立てるには3時間ほどかかってしまう。その間にもトイレは必要になる」と導入を立案し、今年度予算に組み入れることに成功した。予算の210万円はグッズの購入や各拠点への配送に充てられた。
同キットには、携帯トイレやトイレットペーパー、アルコール消毒液などのほか、避難者が安心して携帯トイレを利用できるよう、同研究所が作成した運用マニュアルや掲示用の案内サイン等も備えている。「被災時には、紙やマジックを用意して、手書きするのも大変なので。これなら貼るだけで済む」と渡部さん。昨年度末にサンプルを作成し、予算を取り付けた今年度に同研究所の意見を取り入れながら内容物を揃え、防災月間である9月5日までに全拠点に配備した。
渡部さんは「このキットは、避難者自身が利用する『自助』、避難所運営者がスムーズに運用できる『共助』の両方をフォローするもの。地域の防災訓練等で活用してもらえるようアナウンスしていきたい。モデルケースとしてほかの区にも広げられれば」と期待を込めて話した。