『九月花形歌舞伎』「あらしのよるに」初日開幕、公式レポート到着ーー開演前には出演俳優による館前挨拶も、中村獅童「心温まる作品」
9月4日(水)に南座にて『九月花形歌舞伎』として「あらしのよるに」が幕を上げた。
開場前に、南座劇場前に狼のがぶを勤める中村獅童や、山羊のめいを勤める中村壱太郎ら出演俳優が勢ぞろいし、公演の意気込みを語った。
中村獅童:中村獅童です。「あらしのよるに」は、2015年に南座で上演させていただきまして、約9年振りに南座での公演となります。心温まる作品になっておりますので、是非劇場に足をお運びください。
中村壱太郎:この原作の絵本を読んで、本当に心温まる、友達や信じる力というのをとても強く受けて、その思いを舞台に全力で表して行きたいと思います。精一杯千穐楽までやってまいりますので、是非何度も見ていただければと思います。
市村竹松:この「あらしのよるに」は、初演の2015年の時から山羊のはく役で出演させていただき、とても思い入れ深い舞台です。はくは一見ドライなのですが、実はとても熱いユニークなキャラクターとなっております。舞台でその姿を見ていただければと存じます。
坂東新悟:この「あらしのよるに」は南座の初演を拝見し、とても羨ましく思っていたので、今回こうして出演できることをとても嬉しく思っております。またこの南座は2020年3月以来ですので、舞台に立つことができるありがたみを噛みしめながら、毎日勤めたいと思います。1ヵ月、よろしくお願いいたします。
市村光:市村光でございます。9月になってもまだまだ暑い日が続きますが、それでも暑さに負けないように1ヵ月精一杯頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
市村橘太郎:山羊のおじじを勤めます市村橘太郎でございます。山羊ではございますが、紙は食べませんのでご心配なく。ご見物よろしくお願いいたします。
河原崎権十郎:初演以来、狼のがいを勤めさせていただいております。この作品は大人から子供まで楽しめる素晴らしい作品です。一生懸命、精一杯勤めさせていただきます。京都は暑いですが、南座の客席はとても涼しいので是非お越しくださいませ。
市村萬次郎:狼おばばを勤めさせていただきます、市村萬次郎でございます。中村獅童さんを中心に関係者一同、一生懸命楽しい舞台を作りあげました。是非、ご覧いただきたいと思います。
中村錦之助:狼ぎろを勤めます。今の恰好は一人山羊みたいですが。私は実は山羊みたいに心優しいおじさんですので、是非見に来てください。よろしくお願いいたします。
そしていよいよ初日が開幕。子どもから大人まで楽しめる歌舞伎作品の「あらしよるに」は、初日も多くの小中学生が来場し、場内には瑞々しい笑い声や拍手が起こり、盛り上がりを見せた。
ある嵐の晩、山羊のめい(中村壱太郎)が雨宿りをしているところへ、狼のがぶ(中村獅童)がやってくる。お互いの声しか分からぬまま二匹は夜通し語り合い、「あらしのよるに」を合言葉に、再会することを誓う。次の日の朝、同じ場所にやってきた二匹はお互いの姿を見てビックリ。めいは食べられてしまうのではないかという恐怖に、がぶはめいを食べてしまいたいという欲望にかられながらも、少しずつ距離を縮めていく。がぶとめいが客席におりて山を目指す場面や、がぶが義太夫節に乗って踊りだす場面では二匹の関係をコミカルに描き、会場から笑い声が起こった。
一方そのころ、昔山羊に耳をかじられた狼のぎろ(中村錦之助)は、耳を復活させるため、狼のおばば(市村萬次郎)に魔法の鏡を使わせ、山羊のめいやみい姫(坂東新悟)が手掛かりになることを知る。ぎろは穴熊ぴか(市村光)をはじめとする森の動物たちを問い詰め、がぶとめいのことを知ると、二人に襲いかかる。歌舞伎のだんまりの演出によって、お互いが闇の中で探り合う様子を緊迫感たっぷりに表現された。
ところ変わって狼たちの住処に囚われるがぶとみい姫。そこへ、先代の狼の長を殺したのはぎろだと知ったがい(河原崎権十郎)が現れ、みい姫を開放する。一人牢に閉じ込められているがぶの元にも、めいが現れ、がぶを助けだそうとする。狼の群れたちがそれを阻止しようとしますが、めいを助太刀する山羊のおじじ(市村橘太郎)やはく(市村竹松)がやってきて、狼と山羊が入り乱れての乱闘に。派手な立廻りで観客を圧倒した。
最後には数々の難局を乗り越えながらも、がぶとめいがお互いを友達だと言って抱き合い、客席は感動に包まれる。三味線の音に合わせて喜びながらリズミカルに走り回る二匹の姿に、会場は手拍子で応え、幕引きは万雷の拍手となった。
『九月花形歌舞伎 発刊30周年記念「あらしのよるに」』は9月26日(木)まで南座にて上演中。9月16日(月・祝)には原作者・きむらゆういち、18日(水)にはきむらと絵・あべ弘士によるサイン会も実施される。チケットはイープラスにて販売中。