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小学生でも開発できる時代なのに、なぜ小粒のサービスしか生まれない?【ひろゆき×安野たかひろ】

エンジニアtype

小学生でも開発できる時代なのに、なぜ小粒のサービスしか生まれない?【ひろゆき×安野たかひろ】

ひろゆきが聞く!

AIエンジニアであり、経営者の顔も持つ安野たかひろさんをゲストに迎えた今回の対談。「エンジニアと経営側の要望が一致しない場合、大いに悩む」というジレンマが聞けた前編に続いて、後編では「エンジニア側とどう折り合いをつけるのか?」という安野さんの質問からスタート。

なぜ日本のエンジニアは小粒なものしか開発しなくなってしまったのか。そんな話題にも話が及びました。

【前編はこちら】優秀なエンジニアは「コードが汚いから読めない」なんて言わないhttps://type.jp/et/feature/26796/

目次

真似するな危険? 汚いコードは「直したければどうぞ」個人開発のサービスがヒットした昔に比べ、現代は夢がない?日本のエンジニアはなぜ小粒な開発ばかりするのか?

真似するな危険? 汚いコードは「直したければどうぞ」

安野さん:2chでは「綺麗なコード」を要求してくるエンジニアの圧力にどう抗って「done is better than perfect」な姿勢を貫いていたんですか?

ひろゆきさん:2chの場合は、コード整備だったり、リファクタリングだったりは、やりたい人がテストを通して勝手にやっていいよという感じでした。

OSSのようにボランティアの開発者が触りたければ勝手にコードに触るというやり方だったので。リファクタリングしたい人はするし、したくない人はしない。個人の裁量に委ねていました。

ただ、これはほんとひどい話なので、若いエンジニアは真似しないことをお勧めします。

安野さん:経営サイドとしては「やりたければやってね」ってポリシーはやりやすいですよね。

一方で、その方針で進めるとエンジニア間で流儀の違いとか、許容可能な綺麗さレベルが違って喧嘩が起きる気もするんですが、その辺はどうだったんでしょう?

安野さん:例えば、私と妻はどちらも部屋の片付けをしないタイプで、どんどん部屋が汚くなっていくんですよね。まさに「掃除したければやってね」というスタンスです。

ただそうすると、部屋の汚さの許容度が相対的に低い側が掃除をやらざるを得ないので、お互いに汚部屋耐久チキンレースみたいな感じになります(笑)

だいたい私の側が妻よりも少し許容度が低いので私が先に片づけ始めてしまうんですが、そんなチキンレースが起きたりはしないんでしょうか?

ひろゆきさん:我が家も同じ状況になってますー。

安野さん:ひろゆき家もですか!

ひろゆきさん:家庭は解決不能ですけど、仕事ではコードに触らないことが可能なので、業務を進める上ではほとんど喧嘩は起こらなかったですね。

コードが綺麗になることに文句を言う人は居ないですし、直す側も直したいところだけ触ればいいし、汚い部分を触りたくなければ触らなければいいだけなので。

んで、一番汚いコードを書いてるのがおいらなので、「コードが汚いのはけしからん」ってのは、おいらが言われるだけという、、、

安野さん:ひろゆきさんの家庭が大丈夫なのか俄然気になります(笑)

ひろゆきさん:うひょひょ。まあ、嫌なことをやらなくていいOSSと、嫌なことでも命令だとやらなければいけないという業務の差はあるかもしれませんね。

安野さん:おっしゃる通り、OSSと業務という差は大きい気がします。

あと、「一番汚いコードを書いているのは自分」というのは、ある意味トップ自らが率先垂範するモデルですね(笑)Metaのザッカーバーグもコードが汚かったという逸話がありますし、実はそういうスタンスはアリかもしれませんね。

ただ、そのFacebook(現Meta)が昔掲げていた「Done is better than perfect」とか「Move fast and break things(素早く行動し破壊せよ)」みたいなビジョンは、2014年には封印されて「Move fast with stable infrastructure(安定したインフラで素早く動く)」というおとなしめな標語に置き換えられていたので、組織が成熟してきたときにその文化を維持するのはなかなかできないのかもしれません。。。

個人開発のサービスがヒットした昔に比べ、現代は夢がない?

安野さん:ところで、インターネットとかIT業界も全体的に成熟してきて、「ITクソつまんなくなった」って言われたりもしてきていますが、ひろゆきさんから見てどう見えていますか?

ひろゆきさん:初期のネットサービスって個人が作ってるのが普通でしたが、今やゲーム以外で個人が作った名のあるサービスって聞いた事ないですよね。

2000年代くらいまでは、個人が作ったサービスがヒットしたりもしてたのですが、今は資金のある会社がサービスを作る話しを聞かないので、昔に比べると夢のない時代になったなぁ、、と。

安野さん:確かに、日本語圏で個人が作ったwebサービスが大きくなったのって、catnoseさんがZennを作ってリリースしたのが最後ぐらいな気がします。

一方で、AI分野はまだまだ未成熟で面白いことが出来る余地があるとは思っています。研究とか大きいモデルを作る部分はビッグテックや大学の研究室がやっているイメージですが、「そこでできた基盤のモデルを使い倒して何か新しいアプリケーションを考える」という領域はまだまだ掘られていなくて、個人でやってる方が沢山いる印象です。

それこそモデルを組み合わせれば、先日の東京都知事選挙で展開した「AIあんの」のような仕組みも作れるわけです。AIの新技術もどんどん出てきますし、個人的には今もかなり楽しみながらやっています。

ひろゆきさん:Webサービスを作るのは容易になって、参加者も増えてるはずなのに、どれも小粒なんすよね。クラウドやCDNなんかも整備されてるので、個人でもかなりの規模のものが作れる時代にも関わらず、なんでなんすかね?

安野さん:確かに。なぜだろう......

ひろゆきさん:皆が知ってる大規模webサービスで個人が作ったものだと、最後は「漫画村」かな、、と。当時は日本のトラフィックのTOP10に入ったとか、、、

安野さん:漫画村か・・・!!! それは思いつかなかった(笑)。確かに規模で見ればそうですね。

日本のエンジニアはなぜ小粒な開発ばかりするのか?

ひろゆきさん:でもなんで、日本のエンジニアたちは小粒なものしか作らなくなっちゃったんすかね?

安野さん:私なりの見解ですが、まず一つが「大きくなりそうなサービスは個人ではなくて企業にやられてしまい、機会が少なくなった」というネガティブ面がありそうだなと。

二つ目が「エンジニアが増えたり、スタートアップエコシステムが充実してきて個人が一緒にやれるチームを探しやすくなった」というポジティブな面。その両方があるように感じています。

最近では、中高生も“クラスでバンド組む”感覚でアプリを作ったりしているらしいですしね。私が中学生ぐらいの頃は同い年ぐらいでプログラム書く人はネット経由で探さないと見つからなかったですから。その時代と比べると隔世の感があるなと思います。

ひろゆきさん:そうっすねー。それもあると思いますが、「サービスを作る人がエンジニアばかりになってしまった」ってのもある気がするんですよね。

おいらがコード書いてた時代は、ネットサービスのエンジニアという職業が生まれたばっかりで、素人が付け焼刃でサービスを作っていたんですよね。ホリエモンも自分でコードを書いてましたし。
堀江貴文のゲームチェンジャー論「世界を変える人に共通点はない。ただダメなケースは決まってる」https://type.jp/et/feature/239/

ひろゆきさん:「こういうのあったら面白そうだよね」と思いついた人が「どれどれやってみよう」と、試しに作ってみてみたらできちゃった、みたいな職業エンジニアじゃない人の成功例が多かったんです。

最近は、自分でパソコンを持っていなくて、スマホしか使わないユーザーが多いので、「こういうサービスがあるといいのにな」と思っても自分で作るという発想に至らないので多様なサービスが生まれないのかなと。

というわけで、おいらはエンジニアが考えてエンジニアが作るサービスには、多様性がないんじゃないか説が濃厚じゃないかと疑っています。

ひろゆきさん:中高生のプログラム好きな子同士が集まって何か作っているというのも、できることで、趣向の範囲が狭まっちゃってるんじゃないかな、、と。

スクエニの取締役の吉田直樹さんも、ゲーム会社に採用する人材は、ゲーム以外に興味持ってる人って言ってた気がするのでプログラム以外に興味がある人が、エンジニアの思いつかないサービスを作る傾向はあるのかなぁ、、と。
FF14が“愛され長寿”なのは「たまたまじゃない」【ひろゆきが吉田直樹に聞く】https://type.jp/et/feature/26308/

安野さん:スマホしか使わないユーザーが増えたことで、一時的に若い人のパソコンリテラシーが落ちたっていうのもある気がします。

ただ、最近の小学生がChatGPTでスルスルと自分のアプリを作っているのを見て、これもまた一時的な話なのかなと思うようになりました。

たぶん、近い将来ではAIに会話で命令しながら非エンジニアがアプリを作れるようになる未来が来るのではないかと思います。

そうなってきた時には、プログラムだけに興味を持っていることが競争優位ではなくなるので、吉田さんが言うようにどれだけプログラム以外のことにも興味を持っているのか、が重要になってくるんでしょうね。
【前編はこちら】優秀なエンジニアは「コードが汚いから読めない」なんて言わないhttps://type.jp/et/feature/26796/

AIエンジニア&起業家&SF作家
安野たかひろさん(@takahiroanno)

1990年、東京生まれ。開成高校を卒業後、東京大学工学部システム創成学科へ進学。「AI戦略会議」で座長を務める松尾豊教授の研究室を卒業。外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップ企業を二社創業。デジタルを通じた社会システム変革に携わる。日本SF作家クラブ会員。
●デジタル庁デジタル法制ワーキンググループ構成員 ●英国王立美術院にて準修士 ●未踏スーパークリエイター ●ハヤカワSFコンテスト受賞 ●星新一賞受賞 ●アジアデジタルアートアワード・インタラクティブ部門大賞 ●M-1グランプリ出場

ひろゆきさん(

@hirox246

本名・西村博之。1976年生まれ。「2ちゃんねる」開設者。東京プラス株式会社代表取締役、有限会社未来検索ブラジル取締役など、多くの企業に携わり、プログラマーとしても活躍する。2005年に株式会社ニワンゴ取締役管理人に就任。06年、「ニコニコ動画」を開始。09年「2ちゃんねる」の譲渡を発表。15年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。著書に『働き方 完全無双』(大和書房)『プログラマーは世界をどう見ているのか』(SBクリエイティブ)『1%の努力』(ダイヤモンド社)など多数。ABEMAで配信中の『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』も好評

安野たかひろさん写真/安野たかひろ事務所提供
ひろゆきさん写真/赤松洋太
編集/玉城智子(編集部)

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