全国に2か所だけ! 飛行機が発着する激レアな道の駅「大館能代空港」の緊張感
道路利用者のための休憩施設「道の駅」。ドライブ中に安心してトイレを使えることはもちろん、今では道の駅そのものが休日レジャーの目的地として愛されるほど、個性豊かな施設ばかりだ。
中でも「全国に2か所しかない」激レアなスポットが秋田県にあるという。道の駅は1200か所以上もあるのに、同様の施設は石川県「道の駅 のと里山空港」だけ。筆者もこれまで数えきれないほどの道の駅に行ったが、こんなところは初めてだった。
・空港であり道の駅でもある「大館能代空港」
カーナビに従い、秋田自動車道を降りると施設は目の前。案内看板にもしっかり「道の駅」とある。広大な無料駐車場に車を停める。
うん、空港だな。
県庁所在地の秋田空港に続く県内第二の空港で、「大館能代(おおだて・のしろ)空港」という。
お、秋田犬のモニュメントがある! 空港名にもなっている大館市は「秋田犬の発祥の地」とされ、あの忠犬ハチ公の生家もあるのだ。
しかし「大館」と「能代」は50kmくらい離れた別々の市で、おまけに実際の空港の所在地は「北秋田市」というまた別の市。「実は港区にある品川駅」みたいな、ややこしいことになっとる!
多言語で「クマ注意」の掲示がしてあるところも、また秋田を感じさせる。大げさではなく、公共施設のトイレなんかでも普通に「クマが入るので扉を開けっぱなしにしないでください」などと書いてある。マタギ文化も残る秋田では、ツキノワグマは身近な生き物だ。
建物の中は普通に空港! チェックインカウンターがあり、荷物検査があり、警察の派出所があり、搭乗口がある。制服を着たANAの職員がきびきびと働いているので、道の駅ののんびりローカルムードとはほど遠い。
売店は都会的なANA FESTAで、生産者の名前付きの野菜やきのこや漬物は扱っていない。
カフェスペースも超絶おしゃれだ。パソコンを広げられそうなビジネスコーナーも点在していた。
例えるなら、サンダル履きでふらりと立ち寄れる居酒屋がいつもの道の駅で、きちんとドレスコードを守って襟付きシャツで来なきゃいけない割烹が大館能代空港みたいな……。
施設が立派すぎるゆえ自分が場違いに思えてウキウキ……じゃなかったドキドキする。警察や警備員が常駐している緊張感もある。挙動不審の罪で声かけられそう。
しかし、ここが間違いなく道の駅であるという動かぬ証拠がある。
「道の駅記念きっぷ」だ!!
ただ、購入するには「関係者以外立ち入り禁止」の雰囲気がぷんぷん漂う通用口のようなところを通り抜け、空港ビル事務室まで行く必要がある。(実際には記念品を買うためなら誰でも立ち寄ってよい。お気軽にどうぞとのこと)
このほかANA FESTAでも道の駅グッズあり。「道の駅BOX」(税込440円)は同駅のオリジナル商品で「記念きっぷ」もしくは「道の駅カード」がぴったり入る2サイズ展開。見慣れたピクトグラムが、いかにもオフィシャルグッズという感じでよい!
あとはそうそう、道の駅を名乗るからにはアレが欠かせないはず。全国で産直や温泉や遊具に押され、その存在を忘れられがちだが絶対に必要な……
あった! 道路情報コーナーだ!!
ターミナルの片隅に、すごくさりげなく設置されていた。道の駅の矜持よね。
3階の展望デッキまで上がると、飛行機の離着陸を見学できる。秋田・東京間を結ぶ飛行機が1日3往復。タイミングを合わせるのは少し難しいけれど、広い滑走路をぜいたくに独占して飛行機が飛び立つ光景はなかなか壮観だ。
600kmも離れた東京へ旅立つ人を見送るのは旅情が感じられる。日本は広いなぁ。
・秋田名物で腹ごしらえ
さて、見学しているうちにお腹が空いてきた。レストラン「ポートワン」も空港と共用。9時30分の朝食タイムから始まって、夕方18時まで長時間オープンしている。お酒の提供もあり。
地方の道の駅だと、日が傾く17時頃にはレストランも売店も閉まってしまうところが多いから、これは使い勝手がよいのでは!
東京からの玄関口になっているためか、比内地鶏、いぶりがっこ、稲庭うどんなどのローカルメニューが印象的。秋田犬のペーパーナプキンが可愛くて使うのがもったいない!
こちらは秋田名物きりたんぽ鍋(税込1600円)だ。受賞歴もある「ベニヤマきりたんぽ工房」のスープ使用で、比内地鶏の出汁がしっっっかり出ている。前・秋田県知事が「硬い」と失言して大いに話題となった比内地鶏だが、肉を食べるよりも出汁を取るのに適している品種だ。
つぶしたご飯を焼いた「きりたんぽ」からは、じわりと米の旨みが感じられる。やや粘り気のある団子状の「だまこ」よりも、ホロホロ感がある「きりたんぽ」のほうが筆者は好き。煮すぎるとすぐに崩れるので注意!
ちなみに「きりたんぽ」そのものが米なので、店でも家庭でもライスは付けないケースが多いようだ。でも筆者はご飯も欲しくなる! このスープでご飯食べたい! うどんにライス付けるみたいになるけど。
ランチ後のコーヒーはフリーサービスで、ローカルカフェチェーン「ナガハマコーヒー」のもの。クセがなく飲みやすい味で美味しい。
・24時間利用のトイレは別にあり
ところで、空港ターミナルはもちろん24時間営業ではない。開館時間は7時45分~19時00分で、保安上の理由から閉館時は誰も出入りできないはずだ。たぶん勝手に敷地内に入ったら警備員がすっ飛んでくると思う。
それじゃあ道の駅の機能が果たせなくない? と思ったが対処はされていた。
空港ターミナルから少し離れた第3駐車場は24時間開放。自動販売機と公衆トイレもあった。夜中にトイレがしたい、悪天候で運転できない、など道路休憩施設としての利用はこちらで。
日帰り温泉とか足湯とか新鮮野菜とかキッチンカーとか、お馴染みのファシリティはないけれども、新鮮な感覚を楽しめる稀有(けう)な道の駅。飛行機乗らないのに空港内をうろうろするという、不審者ギリギリの貴重な体験もできるぞ。
参考リンク:道の駅「大館能代空港」
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.