ジュビロ磐田はJ1に生き残れるか…終盤戦の残留争いと各チーム状況を整理する
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
J1リーグは残すところ7節。現在18位のジュビロ磐田は台風の影響で8月末の横浜F・マリノス戦が延期になったため、8試合を残す状況だ。横内昭展監督も「我々には勝ち点を拾ってJ1に生き残るという大目標がある」と語り、チームが残留に向けて一つになっていることを強調する。
そうした姿勢は3週間ぶりのリーグ戦となったアウェーの柏レイソル戦、そしてヤマハスタジアムにアビスパ福岡を迎えた前節の戦いにも表れていた。まずは課題だった前半の失点を極力なくすために、4−4−2の組織的な守備を徹底するだけでなく、ビルドアップもセーフティーに外側を活用したり、2トップにロングボールを当てたりする割合が、中断前より明らかに増えているのだ。
横内監督は「簡単じゃないんですけど、しっかりと理想と現実を受け止めて、試合をしなきゃいけないなと思います」と主張する。そうしたチームの統一感が、柏戦と福岡戦の連続無失点につながっていることは間違いないが、一方で福岡戦で見られたように、相手陣内にボールを運べた時の攻撃までダイナミックさを失ってしまうと、勝ち点3を奪う展開に持っていくことはできない。
後半に流れを変えられる古川陽介というゲームチェンジャーも欧州移籍でいなくなった現在、磐田としてはここ2試合左サイドハーフのスタメンに起用されている高畑奎汰や右サイドの切り札的な存在になっているジョルディ・クルークスといったタレントの武器を生かしながら、ジャーメイン良や渡邉りょう、マテウス・ペイショットらのFW陣がチャンスに決定的な仕事ができる形に持っていきたい。
ボランチの主力に復帰してきた中村駿や左利きの高畑によるセットプレーも得点源になりうる。特に中村のCKにセンターバックのハッサン・ヒルが合わせる形は何度か惜しいシーンを生んでいる。
ハッサン・ヒルの状態は…
ヒルは福岡戦で終盤に頭部を負傷して、鈴木海音と交代しており、名古屋グランパスとのアウェーゲームに出られるかは微妙となっている。1対1と空中戦に強いヒルの存在は大きいが、もしヒルがスタメンで出られないなら、5枚の外国人枠に、ブラジル人サイドアタッカーのブルーノ・ジョゼを勝負のカードとしてベンチに入れることが可能だ。
その場合、おそらくパリ五輪を経験した鈴木がリカルド・グラッサとセンターバックを組むことになる。鈴木は柏戦では終盤に投入されて、4バックから5バックに変更した最終ラインを支えた。
名古屋に対しては、空中戦に強いFWパトリック、スピードのある永井謙佑やキャスパー・ユンカーを封じることが鍵になってくる。ヒルの状態を見極めながら、横内監督がどういう選択をしてくるのかが注目ポイントの一つだ。
「一戦必勝」で臨める日程
磐田はアウェー名古屋戦の後に、ホームで首位のサンフレッチェ広島と戦い、代表ウィークによる2週間のインターバルへ。中断明けにセレッソ大阪、ヴィッセル神戸と連続で関西のアウエーを戦う日程になっている。
その後、ガンバ大阪、延期となった横浜F・マリノス、FC東京と3試合続けてヤマハでのホームゲームがあり、最後に敵地で現在20位のサガン鳥栖との戦いが待つ。ルヴァン杯と天皇杯の敗退をポジティブに捉えるなら、過密日程が無い流れで1試合1試合に集中して準備していけることはメリットだ。
新潟、福岡、京都の状況は…
数字上は、勝ち点39で現在12位のアルビレックス新潟と13位のアビスパ福岡にも降格の可能性はあるが、現実的な残留ラインが40-42になることを想定すれば、よほど下位チームの逆襲がない限りは最後まで残留争いには巻き込まれないはず。
14位の京都サンガも8試合を残して勝ち点38で、危機的な状況にあるとは言い難い。前半戦こそ降格圏に沈んでいたが、新外国人FWのラファエル・エリアスが爆発的な得点力を発揮する形で、後半戦は首位の広島にも負けないペースで勝ち点を積み重ねているからだ。
ただ、前節はホームでガンバに勝ちきれず、2−2の引き分け。連勝が3試合でストップした。次はアウエーで現在19位の北海道コンサドーレ札幌との対戦となるが、ここで敗れることがあると、ホームの鳥栖戦をのぞけば広島や現在2位のFC町田ゼルビアなど上位陣との試合ばかりで、勝負師の曺貴裁監督が率いるチームも予断を許さなくなってくる。
15位川崎は過密日程をどう乗り切るか
勝ち点37で15位の川崎フロンターレも8試合を残すが、そのうちの1試合が中断となった埼玉スタジアムの浦和レッズ戦。11月22日に行う再試合は1−0のスコアで後半からのリスタートとなっている。
川崎にとってのネックはACLエリート出場による超過密日程。ルヴァン杯で準決勝まで進出したことはタイトルの可能性を残す意味では良いことだが、リーグ戦の選手起用にも少なからず影響はするだろう。
ただ、仮に残留ラインが勝ち点42としても、残り8試合で勝ち点5を積み上げれば届くことを考えれば、やはり残留の危険が迫ってくるのは下位が一斉に勝ち点を伸ばしてきた場合だけだろう。
16位柏は正念場
16位の柏、17位の湘南、18位の磐田はまさに残留争いの渦中にある3チームだ。
井原正巳監督が率いる柏は8試合を残して勝ち点34と若干アドバンテージがあるものの、8月17日に湘南との“6ポインター”を制したのを最後に4試合で1分3敗と足踏みしている。やはり痛かったのはホームの磐田戦で敗れたことだろう。磐田がマテウス・サヴィオとジエゴの左サイド、パリ五輪で名を上げた右サイドバックの関根大輝(静岡学園高出身)を封じ込め、柏の攻撃は停滞した。
前節は上位の鹿島アントラーズを相手にスコアレスドローだったが、日本代表FWの細谷真大が出場停止となり、アウェーのセレッソ戦に出ることができない。柏にとって、まさに正念場と言えそうだ。
湘南はルキアン不在がどう響くか
磐田と勝ち点で並び、得失点差で上回る湘南は、柏や磐田より1試合少ない状況で、勝ち点を積み上げていく必要がある。しかも、エースのFWルキアンが新潟戦のラフプレーにより3試合の出場停止となり、チャンスメーカーとして攻撃の中心を担ってきたMF池田昌生が負傷離脱。残りシーズンでの復帰の見通しは不明だ。
前節のセレッソ戦はルキアンを欠く中で、21歳のFW鈴木章斗が今シーズン6点目を挙げたが、得点ランキングトップのレオ・セアラに2発を許して敗れた。エースがいない今週末のホーム鹿島戦、そして好調の東京ヴェルディとのアウエーを乗り切れば、代表ウィークを挟んで立て直せる。最終節がアウェーのヴィッセル神戸という、シーズンで最も厳しいゲームが待つだけに、そこまでに勝ち点を積み上げたいところだろう。
札幌は“他力”も必要か…
19位の札幌と20位の鳥栖にとっては、柏、湘南、磐田の3チームの足踏みが、逆転残留の可能性をつなぐことになる。
勝ち点26の札幌は残り7試合で湘南、磐田と勝ち点6差。得失点差がー23で大きく離れているため、実質7差と言っていい。仮に勝ち点42を残留ラインとするなら、残り7試合を5勝1分1敗でいかないと届かない。得失点差の不利を加味するなら、5勝2分けで勝ち点43に乗せることが必要になるかもしれない。
やはり他力にはなるが、柏、湘南、磐田が勝ち点を伸ばせず、残留ラインが39ぐらいに下がることが、逆転残留の希望をつなぐことになりそうだ。ただ、札幌は6月に加入したMF大﨑玲央の活躍やFW鈴木武蔵の復活、韓国人DFパク・ミンギュが3バックの主力に定着するなど、明るい材料が多い。前節は“天空の城”の異名を取るアウェー町田で、ベテランGK菅野孝憲の負傷交代という危機を175cmの児玉潤が救って、貴重な勝ち点1を獲得した。奇跡的な残留に向けて、気運は高まっている。
20位鳥栖が抱える問題
20位の鳥栖はさらに状況が厳しい。夏場の主力の大量移籍に加えて、監督交代も好転するどころか、成績がさらに下降線を辿っている。しかも、今シーズン12得点と孤軍奮闘していたFWマルセロ・ヒアンが8月の札幌戦で左足を負傷し、彼を欠く試合は4連敗中となっている。
ただ、得点力の不足より気になるのが、木谷公亮監督が率いてからの6試合で15失点という守備の問題だ。幸いなのは今週末の試合が因縁のライバルであるアビスパ福岡とのホームゲームであること。ここで勝利できれば、チームの流れが一変する可能性もある。
磐田のミッション
磐田にとっては苦しい戦いが続いていくのは間違いないが、残留に向けたチームの雰囲気は悪くないだけに、前半の失点をゼロに抑えるというテーマを継続しながら、いかに勝ち点3を掴み取るためのゴールというものをあげていけるか。
特にアウエーの名古屋戦は危険なアタッカーが揃う相手に、最後までスリリングな試合が予想される。チャンスをものにして勝ち点3を磐田に持ち帰るというミッション達成に期待したい。