「釣り人なら常識?」湾奥に居着いているシーバス・チヌ・ボラを食べない理由
釣った魚を食べることができるのはアングラーの特権というところだが、残念ながら食用に適さない魚がいることも確かだ。フグとかオコゼとかゴンズイとか毒のある魚だけでなく、とある理由から食用が敬遠される魚もいる。特に湾奥に棲む居着きの魚は嫌われるものだ。一般に言われるチヌ・キビレ・シーバス・ボラあたりが「なぜ食べてはいけないのか?」を、今回は詳しく解説したい。
居着きの中大型魚は食べてはいけない?
筆者は大阪湾奥のライトゲームアングラーで、釣りをしていると日常的にチヌやシーバスが襲来する。キビレもチヌの近似種としてよく顔を見せる。ボラも例によってうようよいるが、まああまり果敢にルアーにアタックしてくる魚ではない。それでも一年に一度は釣ってしまうから、どうも困りものだが。
これらの魚は釣り人の間では一般的には「食うな」と言われるものだ。もちろん別に食べてもいい。食用が禁じられているわけでもないし、漁業法に違反するわけでもない。
しかし、賭けてもいいが、このへんの魚は食べてもおいしくない。そしておいしくない魚というのは、こちらの食欲を削ぐものだ。簡単に言えば、メシがまずくなる。では、その理由とは何なのだろうか?
1. 臭い
まず沿岸の居着きのこれらの魚は、大前提として臭い。独特の臭いがする。いずれも汽水域でも活動する川魚の一種としても数えられるので、まあ臭いがあるのは当然だが、そういうものを飛び越えて臭い。
なぜ臭いがこれほどひどいのか?まずは水質の問題がある。大阪湾奥など特にそうだが、海辺に立ってプンと臭ってくるのがわかるほど、水が臭い。水色もよくない。そんな中で回遊もせず沿岸でうろうろしているだけなんて、まあ、臭くなるに決まっている。
棲んでいる水が汚いのだが仕方ない。また、もともとシーバスというのは独特の臭いがするもので、ヒラスズキのような回遊性が高い魚でも臭う。
これが沖で回遊している個体となると話が違ってきて、ボラなどは逆に美味と言われるほどで、シーバスもチヌも高級魚という称号をもらうほどだが、残念ながら沿岸で釣れるものは食用には適さない。
2. 何を食べているかわからない
沿岸でのろくさと活動しているこれらの魚は、「何を食べているのかわからない」ともよく言われる。
それはもちろんゴミを誤食している可能性もあるだろうし、何より、この言葉には、「海底のヘドロを食っている」という含みがある。もっと正確に言えば、海底のヘドロの中にいる多毛類やエビなどを食べているのだろうが、何にせよ、ヘドロを口にして胃袋に収めている可能性がある。
その成分が身に染みていたら、それがおいしいわけがない。釣りをしているとプカンと浮いたシーバスやボラの死体を見ることがままあるが、あれも案外、そのような「毒」を口にしたせいで儚くなってしまったのかも。
ゲームフィッシングのすすめ
筆者が実食してみた感じでは、シーバスとチヌはもう御免である。アジとメバルとカサゴに関しては問題ない。アジなどはむしろ、富栄養な大阪南港で育った個体のほうがおいしく感じられることもある。
チヌ・キビレ・シーバス・ボラ。まあボラは釣った瞬間からヤバい臭いがしているのであえて口にしようという人もいないだろうが、このへんはまとめてブラックバスなんかと同様の扱いである。リリースメイン。
食用は個人的に推奨しない。そうかと思ったら琵琶湖ではブラックバスで作った料理を出している店もあるし、個人的に湾奥のこのへんの魚をおいしく刺身で食べてみたという人もいるが、そのへんは趣味の世界だ。何せ釣らせてくれる分には強烈で楽しい魚ではあるので、目は離せないのだが。
<井上海生/TSURINEWSライター>