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劇場アニメ『ベルサイユのばら』公開中!これまでとは何が違う?2025年版の見どころとは?

アットエス

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は映画『ベルサイユのばら』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

漫画から宝塚、実写映画を経て大ヒットアニメへ

『ベルサイユのばら(※以下、ベルばら)』は1972年に『週刊マーガレット』(現・マーガレット)で連載開始された漫画です。基本的なストーリーはマーガレットコミックス9巻までで完結しており、番外編の第10巻を合わせて、長らく売られていました。その後、さらに他の番外編なども描かれています。

女性なのに、男性と同じように軍人として育てられたオスカルという男装の麗人を主人公に、フランス革命が起きるまでの歴史をフィクションを交えながら進行していきます。『ベルばら』というとTVアニメを思い浮かべる世代の人も多いと思うのですが、漫画が大人気になったあと、まずは1974年に宝塚歌劇団で舞台化されます。

宝塚で漫画を舞台化するのは初めての試みで、少女漫画のように目に光が入って見える照明の角度などを研究したそうです。このときはオスカル編とフェルゼンとマリー・アントワネット編と、主人公を分ける形で上演されました。

その後、1979年にフランスのジャック・ドゥミ監督を日本のプロデューサーが起用して、オールフランス人キャストかつ現地ロケで実写映画を作りました。そして同年にテレビアニメが始まり、これが大ヒットとなります。満を持してアニメが登場したという感じですね。当時全40話で作られ、一つの定番として愛される作品でしたが、今回もう一度『ベルばら』をアニメ化しましょうという話になったわけです。

2025年版の『ベルばら』とは

今回の監督は吉村愛さん。吉村さんは『君に届け』や女性向けゲームのアニメ原作の『Dance with Devils』などを手がけた監督で、これら2作の脚本はどちらも金春智子さんという大ベテランが担当しました。

『Dance with Devils』は、作中で演技しながら歌うミュージカルアニメとして制作されていて、この2人が組んだ今回の『ベルばら』も音楽劇になっています。ここが今回の作品の一番のポイントです。もう一度原作に立ち返って、物語を2時間に圧縮して語る上で、どこを生かしてどこに歌を入れるのか、全体を組み立て、音楽で情感を表現するアプローチ方法をとっているのが最大の特徴です。

作曲家は澤野弘之さん。キャストも歌える人を選んでいます。オスカルは沢城みゆきさん、マリー・アントワネットが平野綾さん。それから、オスカルの幼なじみで従者のアンドレは豊永利行さんで、フェルゼンがミュージカル俳優の加藤和樹さん。挿入歌で感情を表現して、物語の大事なところをギュッと圧縮して魅せるという感じです。

音楽シーンは演技をしながら歌うのではなく、プロモーションビデオのようなイメージ映像が入る作りになっています。そこにエピソードとしてはカットされたけれども、原作などに出てきたキャラクターが映っていて、ファンには「あのエピソードは具体的に描かれないけど、ちゃんとあったんだな」とわかるようになっています。音楽によるストーリーの圧縮と、ちょっとしたファンサービスがうまく組み合わさっているんですね。

吉村監督自身が大阪出身なのでBSで宝塚を見ていたこと、子どもの頃親戚の家で『ベルばら』の原作を読んで好きだったこと、そういういろんなものが合わさってこの方法を選んだのだと思います。そしてやはり宝塚版がなかったら今回音楽劇でいこうという発想にはなかなか至らなかったと思うので、今までの『ベルばら』の歴史みたいなものが、まとまって今回の映画の中に入ってきているというのが一つのミソではないでしょうか。

あとは、絵が原作に寄っているのも見どころのひとつ。ショックを受けるシーンでは、原作で白目になってるところが全部白目で描かれています。そういうところも原作リスペクトで全部入っています。目の描き込みもすごくキラキラしています。昔の少女漫画の空気をちゃんと入れようとしているんですね。キャストの歌を楽しむぐらいのつもりで、ぜひ足を運んで劇場で見ていただければと思います。

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