野生の<メダカ>は深夜に産卵することが判明 夜中に行動が活発化?
日本人にとって非常に身近な魚であるメダカ。童謡「メダカの学校」で歌われるこの魚は、おそらく日本人であれば知らない人はいないでしょう。
その一方で、メダカについてはまだ解明されていないことも多く、野外での生活は驚くほど分かっていないといいます。
例えば、メダカの野生環境における繁殖行動の研究は1例のみであり、繁殖に伴う夜間の活動については詳しくわかっていません。
そんな中、大阪公立大学などの研究チームは野生のメダカをビデオカメラで撮影することで行動を分析し、産卵する時間帯が従来知られていたものとは異なることを解明しました。
研究に欠かせないモデル生物
メダカは日本人にとって身近な生物であり、特に観賞魚として多くの世代から愛されています。
一方で、メダカは<モデル生物>としても重要で、行動学や遺伝学、医学など様々な分野で活躍している魚でもあります。
モデル生物とは飼育が容易であること、繁殖力が高く短期間で成長することなどの特徴を持ち、生物学をはじめとする周辺の分野で欠かせません。メダカ以外にはマウス、ショウジョウバエ、同じ魚類ではゼブラフィッシュなどが知られています。
モデル生物の行動
モデル生物を用いた実験は主に室内で行われ、日照時間や温度を自由に調整できる状態で実施します。
このような室内環境は自然環境とは異なるため、実験室で見られた行動と自然環境下で見られる行動と異なることが最近の研究で明らかになっています。
そのため、モデル生物が自然の中でどのような行動をするのかを解明することは非常に重要ことなのです。
メダカの行動をビデオカメラで撮影
今回の研究では岐阜県内の河川に生息するミナミメダカを対象に、野生環境における行動の分析が行われました。
調査地の川では、ミナミメダカの行動を水面上からビデオカメラで赤色光ライトを用いて撮影。その後、撮影された映像を解析し、ミナミメダカの産卵開始時刻の特定が行われました。
3日間に及ぶ映像を分析した結果、お腹に卵をぶら下げたメスが午前0時頃から見られ(メスは産卵後の数時間お腹に卵をぶら下げて泳ぐ)、産卵が深夜に行われることが判明。
従来、実験室での研究からメダカの産卵は日の出の一時間前後に産卵が行われると考えられていましたが、それよりもはるかに早い時間帯に産卵が始まることがわかったのです。
夜間の活動パターン
この研究では野外における夜間の活動パターンの解析も行われました。
解析の結果では午後9時~午後11時までは活動量が少なく、多くの個体が休息していると考えられ、活発な行動の指標である「1個体で遊泳」の頻度は午前0時以降に増加し、午前1時~午前3時に高くなったといいます。
一方、ほとんど動かない状態である「定位行動」の頻度は午後9時~午後10時が最も高いことも判明。オスの求愛行動は午前0時以降に顕著に増加し、特に午前2時~午前3時に多いことも明らかになってます。
自然環境におけるモデル生物の生態
今回の研究ではミナミメダカの自然環境における求愛行動、産卵開始の時間帯が明らかになりました。一方、短期的かつ局所的なデータであるほか、赤色光ライトが及ぼす影響の評価など今後も研究が必要だといいます。
メダカを含む他のモデル生物の自然環境における生態も、今後の研究で解明されていくかもしれませんね。
(サカナト編集部)