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5人で最後の学芸会…小さな集落から見つめる「地方の今とミライ」

Sitakke

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179分の167。
最新の国勢調査で示された、北海道内で人口が減っている市町村の数です。

地域経済や少子化をどう立て直していくのか、閉校が決まった小学校を通し、地域のいまをみつめます。

北海道後志地方の喜茂別町の中心部から、車で10分ほどの場所にある鈴川地区。
人口117人の集落です。

小さなこの集落の中で、大きな平屋建ての校舎が目を引く鈴川小学校は、地域のランドマーク。
この中で、学芸会のリハーサルが行われていました。
在校生は2年生1人、4年生1人、5年生2人、6年生1人の5人。
みんな家族のように仲良しです。

学芸会では、子どもたちの力だけで伝承してきた和太鼓のほか、総合の時間に学んできた116年にわたる小学校の歴史を振り返る劇にも挑戦します。

5、6年生の担任の松本里和先生は、札幌の出身。「鈴川小が寺子屋でスタートするところから平成の100周年くらいまでを、学校が妖精になって子どもたちの発表を聞く舞台」と笑顔で教えてくれました。

練習のときから子どもたちも先生も、みんなおそろいのTシャツ姿。
胸元には「SUZUKAWA」の文字があって、鈴川小の校章もプリントされています。
「校長の権限でいたずらしちゃった」と、田中豊校長ははにかみます。

おそろいのTシャツ姿の子どもたち

そんな思い入れいっぱいの学芸会。
でも実は、学芸会自体が今回で最後…。学校が2025年3月に閉校するからです。

6年生の加藤愛己さんは、「残念ではあるけど一緒に卒業できるのはうれしい気持ち」と鈴川小最後の卒業生としての気持ちを答えます。

校内には、5年生以下の児童が来年から通う喜茂別小学校の仲間の写真が貼られています。

「みんなの名前を覚えられたりできるように」そう言いながら写真を見つめる5年生の工藤瞳子さん。

喜茂別小学校には、いまも1か月に1回ほど訪れていて、みんなで一緒に授業を受けています。
習い事が一緒の子もいて、昔からの友だちもいるんだとか。それでも…

「楽しみなのもあるけど、ちょっと寂しい」## 人が減る…影響を肌で感じる子どもたち

1950年代には、140人以上が在籍した鈴川小学校。

20年以上勤める用務員の金井光昭さん(81)は、閉校を機に退職し、子どもが住んでいるという札幌市に引っ越す予定です。

「もうこれ、使わないからさ」

金井さんは学校の庭で、これまで雪囲いにつかっていた木を処分するために、短く切る作業をしていました。

「子どもたちはもう大好き、かわいくて。やっぱりなくてはならない学校だったんじゃないかな」

閉校という時の流れに、「昔は店もあったし汽車も通っていてにぎやかなマチだったんだけど」と話します。

生活への影響は子どもたちにも否応なく…

人口減少が続くにつれて現れる生活への影響。それは子どもたちも感じていました。

6年生の加藤愛己さんは習い事である悩みが。

「剣道をやっていて、月水金と土日にたまに大会がある。もう少し『ウサパラ号』の便が増えるといいな」

鈴川の子どもたちは、習い事のために喜茂別町の中心部まで出ることも多く、そのときに町営バスである「ウサパラ号」はとても大事な交通手段。

加藤さんは、学校の下校にもウサパラ号を使っています。

地域内を走る路線バスは、2022年に廃止に。
町営バスの「ウサパラ号」は2つルートがありますが、多い路線で1日6~8便。
土曜は一部が予約便になり、日曜は運休するなど便利とは言えない状況が続いているんです。

演奏や舞台装置はマチの人が一丸となって

本番を迎えた学芸会。
演奏には先生たちも参加、照明や舞台転換はマチの人たちが協力します。
じっと座ってみている観客は、半分くらいです。

合唱にはじまり体操やダンス、楽器の演奏など午前中いっぱいの時間を使って、大充実のプログラム。

劇では、かつてマチや学校が栄えていたころの様子を発表しました。

子どもたちの力で伝承してきた和太鼓の音色もことしが最後。
フィナーレは、卒業生もまざって太鼓の大演奏で締めくくりました。

田中豊校長(右)も演奏で参加

小学校に着任して2年目の田中豊校長。
着任したころにはもう閉校の議論は熟していて「2つの学年が欠員になったら閉校に踏み切る」と集落の話し合いで決まっていました。

そして、今年度ついにその基準に合致したため、閉校が決まったといいます。

田中校長は、かみしめるように話します。

「やっぱり私たちみたいな転勤族が考えても考えきれないような強い思いが、この鈴川小学校にあったと思う」

子どもたちには、この地域で暮らしているからこその気づきを大切に生きていってほしいと感じています。

「6年生が今の時点でコミュニティバスの便数を増やしてほしいという発想になっていることを私は評価したいと思っている。もっと便利にするために『あなたは何ができますか』ということは、この後ゆっくりとこの子たちの中で答えが育っていけばいい」

「ここまでは自分たちでがんばる」

そんな田中校長が地域の住民に感じたのは、ともに助け合う「共助」の思いの強さだったといいます。

「何でも役場に頼もうという発想の人が、鈴川地区には少ない。われわれはここまではがんばる。こういう理解をするという考え方が、すごくいろんな場面で聞かれた」

そんな鈴川地区の好きなところを子どもたちに聞いてみると…

「近所の人たちと話せるし仲良くなるところ!」
「自然も豊か!」

教えてくれるみんなの目が輝きます。

「いまは保育所の先生とか学校の先生になりたいなと思う」

5年生の小出琴さんは、将来の夢を語ります。
そして夢を叶える「場所」について、笑顔でこうも話してくれました。

「できれば鈴川の近くがいい」

琴さんと2年生の小出一途さんのお母さんも、鈴川小学校の卒業生。

「鈴川小は子どもの声が届くという面で、やっぱりまちの人たちの元気が出る場所だと思う」と話します。

「空き家も多くなっているから、活用しながら移住者が住みやすいマチになるといい。子育て支援をしてくれるような制度や施設が増えるといい」

子どもたちがここに住み続けられるように…そんな未来を望んでいます。

3代で鈴川小を卒業したという男性は、「学校は、地域の人の心のよりどころ」と閉校を惜しんでいました。

「何か企業が来てくれて、校舎を使ってくれたらいい」

それぞれが、未来が明るくなるように、希望をもっています。

住民たちが「共に助け合う」ことで成り立っている集落の状況。
地方の灯に、「地域活性化」の具体策や「少子化」の対策の本気度も試されています。

文:HBC報道部 
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年10月21日)の情報に基づきます。

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