リアル「20世紀少年」のような少年時代!~漫画家・浦沢直樹さん
東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を知って欲しい!興味を持って欲しい!という番組。
MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。
今週のゲストも、漫画家でミュージシャンの浦沢直樹さん(府中市出身)。まるで浦沢作品の「20世紀少年」そのままような少年時代のエピソードの数々から、話は浦沢さんがラジオ共演中の高田純次さんの話になりラジオショッキングに!?
リアル「20世紀少年」のような少年時代!~漫画家・浦沢直樹さん(府中市出身)②
土屋:ゲストのご紹介です、先週に引き続き、漫画家でミュージシャンの浦沢直樹さんです! よろしくお願いします!
浦沢さん:よろしくお願いします。浦沢です。
土屋:「府中市」で育った浦沢さんですが、「府中」はどこらへんで遊んでいたんですか?
浦沢さん:僕は自転車を買ってもらえなくて。僕は何も買ってもらったことがないんですよ。全部、兄貴からのお下がりなんで。兄貴から下がってくるうちは自転車が無くて。そうすると、みんな最初、自転車で<あそぼー!>って来ていたのが、浦沢はいつも自転車に乗ってこないからと言って、みんな自転車を乗ってこなくなったんですよ。
土屋:マンガの「20世紀少年」じゃないですか!
浦沢さん:まったく一緒で。ドンキーという。「下河原線」という貨物線が走っていて。「多摩川」から「西国分寺」あたりまでじゃないですかね。単線で1日1回だけ走っていて。のちに、線路が無くなって遊歩道になったんですよ。
土屋:そうなんですか!
浦沢さん:それで、「多摩川」の砂利を採掘して、それを貨物線が1日1回持って行って、それを「中央線」の貨物に載せてたみたいですね。
土屋:「西武多摩川線」みたいな感じですね!
浦沢さん:「下河原線」は1日1回走ってしまったら・・・良い子はマネしちゃダメですよ。線路の上を、アイスを食べながら。もうアメリカ映画の「スタンドバイミー」みたいですよ。
つる子:そうですね。
浦沢さん:歩いて南の方へ行きますと、「矢崎町」とか出てきて「多摩川」が近くなってきて。僕が好きだった女の子の家が線路ぎわにあるんですよ。
つる子:おお。
浦沢さん:一緒にアイスを食べてる友達が、<あの子のウチだぜ>って言うんですよ。<浦沢、あの子が好きだろ>って。<そんなこと、いいんだよ!>なんて言いながらね。
つる子:いいな!
浦沢さん:「下河原線」が走っている両脇が土手になっているんですよ。降りた下がその子の家になっていて。で、土手の所にみんなで隠れてその子が出てくるのを待っていたけど、出てこないの(笑)。
つる子:かわいい!
土屋:リアル「20世紀少年」を聴いているみたい!
“ジャリ穴の巨大生物”の噂は実は・・・
浦沢さん:そのまま「多摩川」を真っ直ぐ行くと、“ジャリ穴”があるんですよ。
土屋:ジャリ穴?
浦沢さん:採掘した跡ですね。
土屋:ああ、なるほど!
浦沢さん:いわゆる蟻地獄状態。だから、夏休み前になると、“砂利穴に近づいてはいけません”というお手紙が学校で配られるんですよ。
土屋:そんなシーンも「20世紀少年」でありますね!
浦沢さん:蟻地獄の下は雨水が溜まっているんですよ。その溜まっている水の中に“巨大生物がいる!”という噂が立ちまして。
つる子:ええ!?
浦沢さん:“大きな波が立った!”というのを何人もの人が見ているんですよ! だけど、水たまりですからどこにも繋がっていないわけですよ。だから、生物がどこからか来るわけがないじゃないですか。
土屋:はい。
浦沢さん:だけど、その後、「20世紀少年」が人気になった時に、漫画評論家の竹熊健太郎さんという方が「20世紀少年探偵団」というコーナーを作って、「20世紀少年」の中にあるいろんな謎の部分を・・・<ローラーゲームって何?>とか、調べに行く役をやってくれたんです。
土屋:はいはい。
浦沢さん:そしたら、<砂利穴に巨大な雷魚がいる!>という噂になったんですよ。で、雷魚の博士のところに話を聞きに行ったんですよ。砂利穴の状態を説明したら、<そこは雷魚が一番大好きな環境です!>
つる子:ええ!?
浦沢さん:水の流れが無くて澱んでいて、水が溜まっているところは。
土屋:誰かが雷魚を放したということですか?
浦沢さん:放したんじゃないですか。
つる子:じゃあ、本当にいたんじゃ・・・
浦沢さん:その雷魚が巨大化して、ネス湖のような巨大な波を立てていたんじゃないかな。
土屋:そういう言い伝えって変換されていってよくわかんなくなるけども。それに関してはほんとにいたのかもしれない、と。
浦沢さん:竹熊健太郎さんが裏どりしてくれたんですよ。
土屋:その感じも、浦沢作品の「あさドラ!」に出てきているんじゃないかなって。
浦沢さん:ロマンがありますよね。
「ジジババの駄菓子屋」と「ロマンポルノのポスター」
土屋:その街の環境そのものが遊具という遊び場ですね。
浦沢さん:「20世紀少年」の中には“ジジババ”という駄菓子屋も出てきまして。実際に“ジジババ”はありましたから。
つる子:ああ!
浦沢さん:“ジジババ”の話を大人になってからすると、地方地方で<うちにもジジババがあった!>って。だけど決まって、“ジジ”がいないんですよ、ババだけなんですよ。どうやら戦後15年、戦争でジジの方は亡くなられたみたいな。残りのおばあさんが1人で経営しているケース。
土屋:だから元々2人いてジジババって言ってたけど、その名残りで。
浦沢さん:駄菓子屋は子供達の社交場じゃないですか。その駄菓子屋の横にかならずロマンポルノのポスターが貼ってあったんですよ。
土屋:それも「20世紀少年」にあったな。カラー化されてましたね。
つる子:あったあった!
浦沢さん:あれもなんでだろう?と思って。そしたら、映画のポスターを貼るスペースはそういう社交場のすぐ側に貼った方がいいじゃないですか。だけど、その前の時代は日活だとか高倉健さんなどの華やかな、ちゃんとした映画のポスターを貼っていたんだけど、それが斜陽になって、ロマンポルノしかやらない時代がくるじゃないですか。子供達が集まるとか関係なく、“ここは映画館のポスターを貼る場所”ということでポルノ映画のポスターが貼られてたんじゃないかなって(笑)。
土屋:それはリアルに生きてたからこそですね。
浦沢さん:子供の頃を思い返して、どうしてなんだろうと思ったんですね。
「西八王子」にあった100円ラーメン「満福亭」
土屋:高校になるとどんな感じだったんですか?
浦沢さん:高校に行くと、軽音部でバンドばっかりやっていました。
土屋:それも「府中」ですか?
浦沢さん:「西八王子」ですね。
土屋:受験でそっちの方に行かれたんですか?
浦沢さん:昔は“71群”っていって。「忌野清志郎さん」が通っていた「日野高校」に行きたかったのに、当時、「南多摩」「富士森」「日野」を選べないんですよ。僕は一番遠い「富士森高校」に飛ばされたんですよ。
土屋:そうなんですか。僕の時代は学区内で選べました。
浦沢さん:当時は選べないの。発表の日までわからないの(笑)。
土屋&つる子:ええ!?
浦沢さん:中学時代にT.REXの「20th Century Boy」のレコードを買ったタカノくんと僕だけ、一番遠い「富士森高校」(笑)。
土屋:高校時代はどうでしたか?
浦沢さん:「西八王子」の駅前の「満福亭」が、安いのにラーメンが美味しくて!
土屋:「西八王子」ってラーメンが安いですよね! 「100円ラーメン」とか・・・
浦沢さん:それは「満福亭」ですよ! 有名ですよ。
土屋:ラーメンは100円なんだけど、チャーシューメンは300円で<高っ!>と思ったんですよ。チャーシューの単価が高いというのを「西八王子:で学べた(笑)。
つる子:(笑)。
浦沢さん「新宿は大都会だった。『火の鳥 未来編』かと思った」
土屋:高校は「八王子」で過ごして、大学は?
浦沢さん:「明星大学」だから「高幡不動駅」ですよ。ずっとあの辺なんですよ。
土屋:それは、多摩を離れたくなかったということなのか・・・
浦沢さん:磁場が強いんじゃないですか、あそこは!
つる子:(笑)。
浦沢さん:離れられない、離れたくても(笑)。よく言ってましたもん、「八王子」の子たちは、「京王線」をゆっくり上京して新宿に行かないと、潜水病になっちゃうって(笑)。
つる子:(笑)。
浦沢さん:急に上京しちゃうと苦しくなっちゃう(笑)。特急に乗ると苦しくなっちゃう(笑)。
土屋:若い頃、新宿など23区の方は行ってましたか?
浦沢さん:新宿はもう大都会だから。「京王新線」は初台あたりから地下に潜るじゃないですか。ずっと行くと、未来のような地下駅があって。「火の鳥 未来編」かと思いました。
つる子:(笑)。
土屋:斜めのエスカーレーターですね。
浦沢さん:「火の鳥 未来編」に斜めに切った煙突みたいなの、出てきますよね。
土屋:ありますね。
浦沢さん:あそこがやっとですよ。あれ以上は行けないですよ。
土屋:それは・・・23区を憧れとするタイプにする人もいれば・・・
浦沢さん:“山手線の中は恐ろしい所”って(笑)。
土屋:多摩の人間ですね(笑)。
浦沢さん:でも、ギターを買いに行く時、お茶の水に行かなきゃ行けないから。もう決死ですよ(笑)。
つる子:(笑)。
浦沢さん:お金をぎゅーって握りしめて(笑)。
土屋:多摩の魅力はどうですか? 住みたい街ランキングに多摩も入るようになってきましたが。
浦沢さん:やっぱり、“なんか足りない感”が、僕らを育てたなって感じがしますよ。
つる子:ああ。
浦沢さん:やっぱり、“ここじゃない、どこかに行かなきゃいけない”みたいな。そんなようなことは思ってたんじゃないかな。
土屋:自分の妄想を広げて行かなきゃ行けないってことで・・・
浦沢さん:妄想を広げるには良い場所ですよね。
土屋:若い頃、なんでも与えてしまうと、脳がサボっちゃいそうだから。
浦沢さん:そうそう。
浦沢さん「“銀色に光るモノ”が多摩川の向こうに消えていった・・・」
土屋:学生時代、バンドにハマってたという時期はマンガはどうしていたんですか?
浦沢さん:それが不思議なことにね、バンドの練習や、あと陸上部もやって端でヘトヘトになって帰って来るじゃないですか。そうすると、描いたマンガが増えていっているんですよ! マンガは知らないうちに描いているんですね。
つる子:ええ!?
浦沢さん:もう呼吸のように。
土屋:それが日常だったんですね。
浦沢さん:あっ! ヘトヘトになって帰ってきたといえば、陸上部でヘトヘトに帰ってきてクタクタで飯も食えないみたいな状態で寝てたんですよ。そしたら庭から<直樹!直樹!>って両親が呼ぶんですよ。うるさいなって思って起きなかったんですよ。ギャーギャー言っていたんですよ。だから起きて、<さっきは何をギャーギャー言ってたの?>って言ったら、<うちの上空でビュンビュンUFOが飛んでた!>って。
つる子:(笑)。
浦沢さん:もう両親は見慣れてたんだと思う(笑)。僕自身も見たことがあるんですよ。
土屋:ええ!?
浦沢さん:「分倍河原駅」に向かって歩いていたら、“銀色に光るモノ”がキュンキュンキュンって「多摩川」の方に向かって行って。夕方ですよ。あれ、なになに!?って。「多摩川」の所って河岸段丘で崖になっているじゃないですか。あの崖の所まで行って、“銀色に光るモノ”が「多摩川」の向こうに消えて行くまでずっと見てましたもん。
土屋:それはマンガになってますか?
浦沢さん:これから(笑)。
土屋:今、「府中市郷土の森博物館のプラネタリウム」は、“Fuchuには Uchuがある”ってキャンペーンをやってますから。
浦沢さん:「府中」を中心に回っているでしょう(笑)。
つる子:(笑)。
浦沢さん:文化放送で一緒にラジオをやっている「高田純次さん」は「府中高校」で天文学部だったんですよね。
土屋:「高田純次さん」も「府中」ですか!?
浦沢さん:家は「国領」です。
土屋:ああ、完全に多摩人だ!
浦沢さん:今度、呼んでね(笑)。
つる子:(笑)。
土屋:繋がったぁ~! すごい! 多摩のテレフォンショッキングみたいになってるもん!
浦沢さん:で、「高田純次さん」は天文学部で「府中高校」にはドームがあったんだって。だけど、覗く望遠鏡が無かったんだって(笑)。
つる子:(笑)。
浦沢さん:詳しい話は「高田純次さん」から(笑)。
浦沢さん「小室哲哉さんは言うことを聞かない!」
土屋:そんな浦沢直樹さんはマンガ家でミュージシャンでもあり、3枚目のアルバム「Love Songs」がリリースされています。どんなアルバムですか?
浦沢さん:曲もたまってきたので、9年ぶりと久しぶりに出したんです。「府中4中」の先輩でもある小室哲哉さんとごはんを食べていると、<なんかあったら呼んで>って言ってたから、<ほんとになんかあったから呼ぶよ?>って言ったら<いいよ、いいよ>って言って来てくれましたね。
つる子:すごい!
浦沢さん:弾いてくれましたよ! “フィーチャリングTK”ですよ!
土屋:すごい!
浦沢さん:そういう時は僕が一応、プロデューサーじゃないですか。小室さんがミュージシャンとして来るじゃないですか。・・・言うこと聞かないね!
土屋:やっぱり(笑)。
浦沢さん:普通のセッションマンじゃないね! オレがオレが!で。
つる子:(笑)。
土屋:僕は聴かせてもらいましたけど、最高でした!
浦沢さん:曲のど頭から小室さんが肩入ってましたね!
土屋:今後の浦沢さんの人生はどうなるんですか?
浦沢さん:こんな感じじゃないですか。僕は中学の頃からマンガを描いて音楽をやって来ましたでしょ。いまだにそれをずっとやっているだけですから。
土屋:体力があるのは、陸上をやっていたというのはあるんですか?
浦沢さん:陸上部でずいぶん鍛えられましたよ。全然、水を飲ませてくれなくてね。
つる子:時代だ。今考えると信じられないですね。
浦沢さん:何度かこれで終わりだなという瞬間がありましたね(笑)。そこを乗り越えてね。マンガでいくら締め切りがキツくても、夏の陸上部よりはラクだなと思いますね。辛さの基準があそこにあるから。
土屋:この番組は、多摩に縁がある人たちが集まって「タマソニ」をやりたいと思っているので、ぜひ!
浦沢さん:いいですね。その時は“フィーチャリングTK”でね(笑)。
土屋:けっこう小室さんも乗り気になっていただいて。
浦沢さん:デカいことになるぞ~! 「府中」でやるんでしょ?
土屋:いや、「立川ステージガーデン」でやれたらいいなと思って。
浦沢さん:え、「府中」にある「東京競馬場」じゃなくて(笑)。
土屋:最後、小室哲哉さんとの曲のご紹介を!
浦沢さん:いきなり「小室哲哉」のオルガンが入ってきます!
(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)