【静岡の高校サッカー戦後史Vol.69】川口能活が率いた1993年度の清水商業(現清水桜が丘)。全日本ユース、全国選手権を制覇!
【清水商⑭】強力布陣で選手権制す
※2011年3月〜11月に「静岡の高校サッカー 戦後の球跡」のタイトルで静岡新聞に掲載した連載を再掲しています。年齢等も掲載当時のままです。静岡サッカー応援アプリ「シズサカ」でまとめてご覧いただけます。
1993年(平成5年)度の清水商にとって、栃木県で開催された全国総体準決勝が浮上への転機となった。
4強対決の相手は鹿児島実(鹿児島)だった。米子工(鳥取)、韮崎(山梨)、真岡(栃木)にいずれも圧勝、鹿児島実戦も攻勢に出て、シュート数は18−8と大きく上回った。ところが、攻め上がった裏を取られて失点を重ね、1−4と思わぬ点差で敗退した。
監督の大滝雅良は「完全に頭をたたかれた」と受け止めつつも「刺激材料になる」と前向きにとらえた。主将の川口能活(J磐田)も敗戦には唇をかんだが、「僕もチームもイチから出直す」とその場で再起を誓った。
全日本ユースで3年ぶり頂点
再起を懸けた1カ月後の全日本ユース(U-18)。安永聡太郎(サッカー解説者)が決勝ゴールを奪い、帝京(東京)を1−0で下して再スタートを飾ると、室蘭大谷(北海道)を3−0、富山一(富山)を6−2で破って、決勝に駒を進めた。
V決戦は再び鹿児島実と相まみえることになった。今度はがっぷり四つの展開となったが、延長の末、佐藤由紀彦(JFL長崎)の決勝弾で1−0で競り勝ち、3年ぶりに頂点に立った。
続く舞台は全国選手権。県予選を突破して臨んだ正月の本大会は、危なげなく準決勝に勝ち上がり、またも鹿児島実と激突した。
「能活を全国の人に見せたかった」
3度目の対決は互いに譲らず、2−2でPK戦にもつれ込んだ。ここで、川口が守護神ぶりをいかんなく発揮する。指揮官の大滝が「全国の人に見せたかった」と全幅の信頼を寄せていたGKが、4人目を見事に食い止め、勝利を呼び込んだ。
決勝は国見(長崎)と対戦、立ち上がりから攻勢に出て前半11分、1年生藤元大輔(佐川急便)が先制点をマーク。後半24分に追い付かれたが、32分、2列目から飛び出した鈴木伸幸(桐陽高教)が決勝点をたたき出した。「緊張感はなかった」(鈴木伸)といい、2−1という点差以上の内容で5年ぶり、3度目の優勝を飾った。
GK川口、センターバックに田中誠(J福岡)小川雅己(INACコーチ)、中盤に佐藤、トップに安永ら後のJリーガーを要所に配した布陣は、攻守に隙がなかった。さらに、攻撃陣の一角だった清水竜蔵(ジョガドール富士見FCコーチ)を負傷で欠いても、総合力でカバーして勝ち抜く姿に、川口は「心の中の最強チーム」と確信している。(敬称略)
1993年度全国選手権決勝先発メンバー
GK
川口能活
DF
加藤泰明
小川雅己
田中誠
新村真一
MF
鈴木伸幸
伊藤亘
佐藤由紀彦
FW
藤元大輔
安永聡太郎
鈴木悟